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宿題

 夏休みに入ってからまだ間もない昼過ぎ、京子先輩が僕の家にやって来た。


「やあ、凛。元気でいたか?もう宿題は終わったかな?」


 いくらなんでも終わっているはずがない。僕は計画的に宿題を負わすタイプではなく、後になって焦りながらやるタイプである。


{まだ全然やっていないです……}


「ならよかった。凛は一人にすると怠けてしまいそうだから私と一緒に宿題を終わらせよう!」


 それはとても嬉しい話である。京子先輩に教えてもらえればすぐに宿題が終わってしまいそうである。僕は頷いた。


 さっそく宿題が始まった。少ししてから気が付いたことなのだが僕は宿題を初めたが京子先輩は宿題を始めようとはしなかった。


{京子先輩は、僕の宿題ばかりを見てくれていますが自分の宿題はやらなくていいんですか?}


「私か?私なら宿題ならもう終わっているよ」


 僕は驚いた。まだ夏休みに入って間もないのにあと少しで宿題が終わってしまいそうである。さすが学年トップと一緒にやると違う。

ふと外を見ると暗くなっていた。いつもなら苦痛で仕方がなかった宿題が、京子先輩とやっていると不思議と苦痛ではなく時間が経つのがとても速く感じた。


「今日はここまでにしよう」


 僕は頷きすぐにベッドの上にうつ伏せに倒れこんだ。移管が経つのは早く感じたが疲れはいつも通りであった。目を閉じて温泉につかっているかのようにリラックスしていると、京子先輩もベッドの上に座ってきた。


「疲れた?」


 僕は目を閉じたまま頷いた。すると京子先輩はうつ伏せになっている僕のお尻の上に、僕の腰に手を当てた。


「気持ちいい?」


 どうやらマッサージをしてくれるようである。細い指で僕の背中を精一杯押しているのが伝わってくる。力加減が絶妙で痛気持ちがよかった。あまりにも気持ちがよかったので徐々に眠くなってきてしまった。



 ここはどこだろう?周りを見渡した。見慣れた家の近所の道であった。


「凛。早くこっちにおいで」


 誰かが僕を呼んでいる。あれは……最初はぼやけた視界で顔を確認する事が出来なかった。しかし、徐々に見えるようになってきた。どうやら僕を呼んでいるのはお父さんのようであった。お父さんは歩き出してしまった。


「待って!」


 僕は息を切らしながら走り続け、呼び止めようとした。しかし、お父さんは進み続けた。走っても、走っても、それでも距離は縮まらず泣き出しそうになってしまった。それでも追いかけた。

 

 すると遠くから車のエンジン音がしていた。僕は車を探すために一度足を止めた。しかし見つけることはできなかった。僕はまたお父さんの方に走り出した。僕はさっき以上にお父さんを呼び止めようと必死になった。


「お父さん待っ……」


 言いかけた瞬間、お父さんは立ち止まりこちらを振り返り何か喋っている様であったが聞き取れなかった。近づくにつれて徐々に聞こえるようになった。


「……元気でな」


そう聞こえた瞬間、目の前で車が横切りお父さんは車に引かれて煙のように消えてしまった。


「……」


僕は目を見開き、涙を流しながら息を荒立てているが声は出てこなかった。しかし僕は地面に膝をつき泣き崩れた。何か体の奥底から込み上げてくるものがあった。


「お父さん!」


そう叫んだ。

僕は目を覚ました。目の前に京子先輩の上半身が見えた。どうやら京子先輩の膝の上で眠っていたようである。


「凛、大丈夫か?涙を流しながらとてもうなされていたよ?」


{お父さんの夢を見ていました……}


「そうだったのか」


 京子先輩は心配そうに僕の顔を覗き込んでいた。僕は裾で涙を拭いていると京子先輩は僕の後ろからギュッと抱きしめてくれた。


「心配するな。今は私がいる。泣きたいときは泣いたらいい」


 そう囁くように言うとさらにギュッと抱きしめてくれた。僕はその優しさにまた涙を流してしまった。

 もう時計を見ると二十一時過ぎであった。寝すぎてしまった。


{寝てしまってすみませんでした}


京子先輩は笑みを浮かべた。


「気にしなくていい。凛の寝顔を近くで見る事が出来たし一度膝枕をやってみたかった」


 僕はさっきのことが嘘だったかのように笑みを浮かべた。


{今日は泊まって行ってください}


もうこんな時間だし何より今日は一人でいたくない気分である。


「ではお言葉に甘えて泊めさせていただくよ」


 泊まってくれるようで一安心した。すると、ピーンポーン。ベルが鳴った。こんな時間に誰が来たのであろうか。不思議がりながら玄関に向かった。


「ピザの配達です!」


 どうやら僕が寝ている間にピザを注文してくれていたらしい。


「きっと凛が起きた時、お腹を空かせているだろうと思って注文しておいた」


 なんて手際のいい人であろうか。確かにお腹がすいている。このピザはとてもありがたい。


「ありがとうございました!」


 ピザの配達の人は走って帰って行った。手に持っている箱からはとても美味しそうな香ばしい匂いがしていてよりお腹が空いてきた。


「では早速食べることにしよう!」


 ピザなんて食べるのは久しぶりであった。色々なピザがあり、どれから食べようか迷ってしまった。


「凛は何が好きかわからなかったから色々な種類を注文してみた。食べたいのはなかったかい?」


 迷っているせいで余計な心配をさせてしまったらしい。慌てて照り焼きチキンが乗ったピザを手に取った。さっそく食べてみた。甘酸っぱいソースにチキンのジューシーさが加わり何枚でも食べられそうであった。


「凛、こっちも美味しいよ!」


 すると京子先輩はテーブル越しに一口食べた後のピザを僕の口元に手を伸ばしてくれた。


「あーん」


 一口食べた。食べたピザはトマトソースにチーズがたっぷり乗ったシンプルなピザであった。食べなれた味で美味しかった。


「ご馳走様でした」


 満足すぎる夕食であった。お腹がいっぱいで少し苦しいくらいである。


「そういえば、凛のお母さんに一度もお会いできないのだが忙しいのか?」


 僕は頷き携帯電話を取り出した。


{お母さんは、お父さんがなくなってから僕を不便なく育てるためにいっぱい働いてくれています。家では寝るだけで、泊まり込みで仕事をしていることが多々あります。とても優しく誇れるお母さんです}

「そうか。ぜひ今度お会いしたな」

{お母さんに京子先輩のことを紹介したいです!それではお先にお風呂どうぞ}

「では先に頂くとするよ」


 僕は依然に美樹と京子先輩が泊まった時に使ったパジャマを僕の家に置きっぱなしだったので部屋に取りに行った。すぐに京子先輩に届けた。


 京子先輩はお風呂場に向かおうとしたが足を止めてこちらに振りかえった。そして少し恥ずかしがりながらボソッと言った。


「一緒に入るかい?」


 僕は慌てて顔を横に振った。京子先輩はクスッと笑った。


「冗談だ。では行ってくる」


 何もなかったかのように平然と風呂場に向かっていった。僕は待っている間、テレビを見ることにした。映画、ニュース、アニメ、ドラマ、色々な番組がやっている中に目が止まる番組があった。


「夏にぴったり!デートとスポット紹介!」


 そういえば、まだ京子先輩と夏休みの予定は立てていなかった。京子先輩がお風呂に入っている間にこのテレビで番組で参考にしてみよう。


 やはり定番は水族館、遊園地、公園、プールと言ったところが紹介されていた。その中に興味がわいたところがあった。それは山である。夏でも涼しく木々が生い茂り、虫や小鳥のさえずり、川の水に浸りながら過ごすのもいいなーと思った。ガチャン。京子先輩がお風呂から出てきたようである。


「先にお風呂頂いたよ。凛はテレビを見ていたのか。……デートスポットの紹介番組のようだね」


 僕はすかさず聞いてみた。


{一緒にどこか行きませんか?}


 京子先輩は微笑んだ。


「夏休みにデートか。それはいい。どこか泊りがけで行きたいね」

{そうですね。山なんてどうですか?}

「山か。いいね」


 京子先輩も賛成してくれてよかった。山に行くのは何年振りだろうか。お父さんと小さい頃に虫を捕りに遊びに行ったきりな気がする。いずれお母さんとも旅行に行きたい。まだ僕には親孝行というのをしたことがないから、僕のお金で旅行に連れて行ってあげたいと思っている。


「今度は凛がお風呂に入ってきな!」


 僕は小さく頷いた。さっそく部屋に行き着替えを持ってお風呂場に向かった。相変わらず、そこには京子先輩のいい匂いがした。僕はつい深呼吸してしまった。しかし、自分がしたことがとても恥ずかしく思えて慌てて服を脱ぎ浴槽に勢いよく入った。


しばらく湯に浸かると落ち着きを取り戻した。今日は長風呂に使用と思った。

今日の夢を思い出した。いつもの夢は目覚めてすぐに忘れてしまうが、父親の夢だけは違った。いくらお母さんと美樹、直哉のおかげで落ち着きを取り戻したが夢を見た直後は涙を流してしまう。別に涙を流すことは気にしていないが、周りの人に涙を流しているのを見られるのは少し恥ずかしい気がした。


 僕は頭まで浴槽に浸かった。僕は長湯するときはいつも一度全身を浴槽に浸ける。水の中は静かで幻想的な空間があるような気がする。入っているだけで落ち着く。すると、ガチャンとドアが開いた。僕は慌てて浴槽から顔を出した。


「凛大丈夫か?のぼせて動けなくなっているのではないだろうな?」


 ドア越しにそう聞こえた。僕は慌てた。大丈夫と言いたいところだが声が出ないし、携帯電話もないし風呂場から出ると全裸を見せることになってしまう。考えている暇はなかった。


「開けるぞ!」


 ガチャン。やはり開けてきた。京子先輩なら開いてくると思った。

そして少しの沈黙が訪れた。僕は浴槽に鼻より上が出るくらいまで深く浸かった。京子先輩は顔を少し逸らして目だけこっちらに向いていた。


「だ、大丈夫ならいいのだが……」


 そう言い残すと平然とした姿勢で戻って行った。僕はこれ以上心配をかけないようにすぐに体と頭を洗って風呂場を出て行った。さすがにのぼせてしまった。リビングに戻ると京子先輩はソファーで寝ていた。僕は京子先輩が冷えて風邪をひかないように薄い布団を持ってきた。すると


「ここで寝かせる気か?私はちゃんと布団で寝たいな」


 僕は体をびくっとした。京子先輩は目を閉じたまま囁いた。


 僕には京子先輩の言っている意味が分からなかった。布団で寝たいなら、なぜここで寝ようとしているのかと思った。するとまた目を閉じたまま囁かれた。


「私はもう疲れた。もう動けない」


 ようやく僕は京子先輩が何を望んでいるのかが分かった。


 腰をかがめて腕を首と足に通した。京子先輩は目を閉じたまま微笑んだ。やはりお姫様抱っこをお望みらしい。


 京子先輩は想像より軽く柔らかかった。部屋まで運ぶと布団にそっと下ろした。


「ありがとう。一度してもらいたかった。いいね」


こちらこそいい体験ができてよかった。


「山に行くためにも早く宿題を終わらせてしまおう。ではおやすみなさい」


 僕は口をおやすみなさいと動かした。そうすると京子先輩はそっと目を閉じた。電気を消して僕も寝ることにした。


 しばらくは静寂な夜であったが京子先輩が動き出すのを感じた。トイレか何かかと思ったが違うようである。京子先輩は僕のベッドに入ってきた。


「凛。起きているのだろう?今日はいい夢が見られるように一緒に寝てあげよう」


 そう囁かれると後ろからギュッと抱きしめてくれた。いつもなら緊張して落ち着きがなくなるところだが不思議と落ち着き寝付く事が出来た。



 翌朝、目を覚ますと隣には京子先輩はいなかった。キッチンの方から何か物音がする。


「おはよう。勝手にキッチン使わせてもらっているよ。朝ご飯がもう少しでできるから持っていてね」


 僕はまだぼやけた視線で頷いた。とりあえず顔を洗いに行くことにした。するとカチッと鍵が開く音がした。すぐにこの音を出した人が誰だかわかった。お母さんである。


 僕は急いで玄関に向かった。


「凛、ただいまー。なにかいい匂いがしているわね」


 まだお母さんには京子先輩と付き合っていることを伝えていなかった。どう伝えたらいいか考えてなかったから焦りだしてしまった。今までお母さんと恋愛話をしたことがなかったので京子先輩を見てどんな反応をするのだろうかと考えてしまう。


「凛、お出迎え?」


 お母さんは足元を見た。そこには京子先輩の靴があった。お母さんはその靴を見ると少し首をかしげた。携帯電話で京子先輩のことを紹介しようとしたら、そこに本人が登場した。


「凛、誰かきたの?」


 僕は落ち着きがなくオドオドと首を縦に振った。すかさず京子先輩も喋りだした。


「は、初めまして。凛さんとお付き合いさせていただいている鈴木京子と申します。お邪魔させていただいています」


 お母さんは呆然としながら小さくお辞儀した。


「凛の母親の新堂幸子です」


 僕は両社の顔をキョロキョロと伺うことしかできなかった。


「ちょうど朝ご飯が出来たところなのでお母様もご一緒にいかがですか?」


「では頂こうかしら」


 二人はリビングに向かった。僕はいつも通りのお母さんで一安心した。


「凛、いつまでそこにいるつもり。早くいらっしゃい」


 お母さんに呼ばれるがままリビングに入るとそこには美味しそうな朝食が並んでいた。炊き立てのご飯、焼き魚、漬物、卵焼き、お味噌汁が並んでいた。京子先輩はおかわり用に余分に作っていたらしい。三人はテーブルに座った。


「いただきます」


 僕は京子先輩の料理の腕は知っているから美味しいことはわかるが、お母さんの口に合うだろうか。京子先輩も心配らしく二人でじっと見つめた。


「とても美味しいわ!」


 僕と京子先輩は一安心した。僕たちも食べ始めることにした。どの料理もおいしかったが特に卵焼きがおいしかった。ふわふわとした触感でちょうどいい味で出汁に効いた絶品の卵焼きであった。美樹とは天と地の差である。


「京子ちゃんは料理がお上手なのね」

「ありがとうございます。お母様のお口に合って幸いです」

「凛なんかにはもったいない彼女ね」


 お母さんはクスッと笑った。なんか、と言うところに反応して少し眉間にしわを寄せてしまったがお母さんを睨んだ。


「私こそ、もったいない良い彼氏が出来て幸せです」


「凛のどこがいいのかしら。無愛想だし可愛げないし男らしさの欠片もないし、それに声が出ないから不便でしょ?」


 母親なのに自分の息子をそこまで否定するなんて酷すぎて少し落ち込んでしまう。


「凛さんはとてもいい彼氏です。優しく、可愛らしく見た目と異なりかっこいい一面も見せてくれたり、声が出ないところを一生懸命補おうと努力しています」


「へー。学校ではちゃんとやっているのね。安心したわ」


 お母さんと京子先輩の会話が盛り上がってよかった。いずれお母さんに京子先輩を紹介しようと思っていたけど、こんな形で顔を合わせることになるとは思わなかった。そんな会話をしている間に朝食は終わった。


「ご馳走様でした。京子ちゃんの料理、とても美味しかったわ。私は寝るけどゆっくりしていってね。それとこれからも凛をよろしくお願いします」


 お母さんは深々とお辞儀をした。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 京子先輩も深々とお辞儀をした。しかしお母さんがこれだけで終わるわけがなかった。


「凛。こんないい彼女逃しちゃダメよ!それと今から孫のことが楽しみだわ。ではおやすみなさい」


 お母さんは笑いながらこの場を去って行った。京子先輩も笑っている。


「面白いお母さんね。さてと、山に行くためにも早く宿題を終わらせよう」


 頷き早速始まった。


「二日で宿題が終わったわね。宿題なんて簡単なものでしょ?」


 京子先輩はそう言ったが僕はヘトヘトであった。しかし、こんなにも早く宿題を終わらせたのは初めてである。これも京子先輩のおかげである。時刻は十八時ごろであった。お昼はお母さんがお昼過ぎに目を覚ましてお寿司の出前を注文してくれた。お母さんはお昼も食べずに仕事に向かった。


「もうこんな時間か。夕飯はどうしようか」


 僕は少し考えた。朝は京子先輩の料理、昼は出前。また京子先輩に作ってもらうのは悪い気がした。考えた結果、出た答えは


{今回は僕が料理を作ります!}


 京子先輩は驚いた顔をしていた。


「凛が私に?本当にいいの?」


 僕は自信満々な顔で頷いた。料理は少し自信があった。お母さんは仕事ばかりでご飯を作ってくれることは少なかったから、よく自分で作っていた。しかし最近では料理を作ることは少なくコンビニで買ったご飯が多かった。


「そうか。では私はリビングで待っていることにするよ」


 京子先輩は僕の部屋から出るとリビングに向かった。僕もキッチンに向かった。

料理はパスタを作ることにした。手軽に作れて大好きな料理である。さっそく料理に取り掛かることにした。

材料は朝の京子先輩が使った食材が少し残っている。味噌汁に使ったアサリ、卵、レタス、牛乳があった。あとは元々家にある缶詰類があれば十分である。


 まずパスタを茹でるために鍋にお湯を入れて海水ぐらいになる塩を入れて沸騰させた。次はソース作り。フライパンに牛乳を入れて、そこにアサリを入れてツナ缶やホールトマト缶を入れた。そこにチーズを溶いた卵を入れて、とろみをつける。そこにケチャップや塩で味を調えたらゆであがったパスタをソースの中に入れてからめて完成である。


 早速盛り付けてリビングに向かった。京子先輩はテレビを見ている様であった。


「できたか。……美味しそうなパスタではないか!」

{アサリとツナのトマトクリームパスタです!}

「では早速いただくことにしよう」


 僕は息をのんだ。いつも食べてもらっているのは美樹と直哉とお母さんぐらいで料理が上手な京子先輩の口に合うか心配であった。京子先輩はパスタをフォークでからめとり口に運んだ。


「美味しい。とっても美味しいよ!今まで食べたパスタの中で一番美味しい!」


 京子先輩の口に合ってよかった。僕も一安心したので食べ始めた。

 食べながら山の話をすることにした。


「宿題も終わったことですし、山に行く計画立てますか?」

「それもそうだね。まずは二人で行くか誰か誘うか。どうしよう」


 僕の中では二択であった。一、京子先輩と二人で行く。二、美樹と直哉を誘う。一はデートを満喫できる。二はみんなでワイワイできて楽しそう。どちらも捨てがたい。


「私は誰かを誘うのもいいかもしれないと考えている」

{僕もそっちの方がいいのではないかと考えていました}


 僕は山に行ってやりたいことはバーベキューである。二人でバーベキューをやるのは準備が大変そうだし、なによりみんなで食べたほうが楽しそうである。


「凛もそう考えていたか。私は山で綺麗な星空の下で花火をみんなでしたら楽しいだろうなと思う」


{では決まりですね。誘う相手は美樹と直哉でいいですか?}

「うん。あの二人がいたらとても楽しい旅行になると思う。旅行先は私に任せてくれ。知り合いに民宿をやっている人がいるからそこに行こう」

{わかりました。二人には僕から連絡しておきます}


 旅行は行く前の予定を立てるところから楽しいようだ。今からワクワクしてくる。そんな話をしているうちに夕食は終了した。


{今日も泊まっていきますか?}


 京子先輩は少し悩んでいるようであった。

 

「今日は大人しく帰るとするよ。また明日来ていいかな?一緒に買い物に行かないか?」

{わかりました。いいですよ!}

「では今日はこの辺で失礼するよ」


 すると京子先輩は荷物をまとめて帰ろうとした。


{送って行きますよ!}

「私は大丈夫。それより二人に連絡してみて」


 京子先輩はそう言い残すとスタスタと帰って行った。早速二人に連絡してみることにした。まずは美樹から。


{夏休み中に僕と京子先輩と美樹と直哉の四人で山に旅行に行きたいんだけど一緒に行かない?}


 すぐにメールは返ってきた。


{行く!旅行が行く日が決まったら教えて!部活を休みが取れるようにしておくから!}


{わかった}


 どうやら美樹は大丈夫そうである。次は直哉。


{夏休み中に僕と京子先輩と美樹と直哉の四人で山に旅行に行きたいんだけど一緒に行かない?}


 直哉もすぐにメールが返ってきた。


{もちろん行く!あの京子先輩とお泊りができるチャンスを逃すはずがない!行く日が決まったら教えてくれ!}

{わかった}


 直哉も大丈夫そうである。とても楽しい旅行になりそうだ。京子先輩に二人も大丈夫と言うことを連絡した。


{無事に家に到着しましたか?二人に連絡してどちらも行くそうです。こちらで日時は決めていいそうです}

{無事に着いたよ。わかった。日時はしばらく待ってくれ。民宿に連絡してみて空いている日に行こうと思う}

{わかりました。旅行とても楽しみです}

{そうだね。私も楽しみだ。では今日はこの辺で。おやすみなさい}

{おやすみなさい}


 今日は勉強で疲れたので早めにお風呂に入って寝る事にしよう。このときはまだ京子先輩が家に帰った理由も次の日に何を買い物するかなど知るよしもなかった。


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