#51 命の証
それから長い時間が経った、いやアキトの中でだけだったのかもしれないが、アルビレオを襲っていた魔獣は全部撤収した。
本当ならばアルビレオを守りきったので歓声やお祝いをするところである。
だが今アキト達の顔に喜びの色は無い。
『くそっ!俺は誰も護れないのか!』
『アキト…』
今彼らの前には変わり果てた姿のアンセムがいる。
ジントやレンカも目を覚ました。
『アキト!しっかりしろ!お前は隊長だ!』
『だからなんだって言うんですか!護るべき仲間一人護れないで何が隊長だ!』
『今!お前のすべき事はなんだ!お前の今すべきことはお前はもう果たしているだろ!アルビレオを守りきったんだ!』
『町一つを守りきるのに仲間1人を犠牲にし続けろって言うんですか!』
『なら強くなれ!自分の中の魔獣に打ち勝ってその力自分の物にしてみろ!それにアンセムと誓ったんだろう!』
アキトが虚を突かれた様な顔をする。
『だけど、俺はもう人間じゃあ……』
『それは違う!お前は人間だ!今この場にいる誰もが思っている!!』
アキトがぐるりと周りを見渡すと、みんながいた。誰もがアキトを見つめ優しい眼差しを送っている。
そんな中リラがアキトにそっと手を添える。
『アキト、今どんなに苦しい事があっても、私はアキトから離れないし、みんなで支える、あなたは人間だよ。私の、ううん、私達の大切な仲間だ』
『リラ…だけど、俺はアンセムを護れなかった』
『それは違うよ、アンセムは自分の命を懸けてグラツを倒そうとした、それはアンセムの意思であって誰かが強制した物じゃあ無い。私はアンセムの意思を尊重するべきだと思う、だから私達はアンセムの意思を引き継がなきゃいけない、それにアンセムの意思を忘れない限りアンセムは私達の心の中でその魔力を、命の証を残しているんだ』
『命の証…』
『そう、それは何よりも気高く、誰にも傷つけられないアンセムそのものなんだよ』
『アンセムは俺たちの心の中で生きている……』
『そうだぜ、だからお前が先頭に立って戦わなきゃならないんだ、何せアキトが誓った約束なんだからな』
『約束……』
『だからくよくよすんなよな、そんなんじゃアンセムも報われないぜ、言ってただろ幸せだったって、アンセムがいなくなるのは悲しいけどさ、アキト言ってただろ乗り越えられない悲しみや苦しみは無いんだってさ』
『ああ、そうだな。俺がこんなんじゃダメだよな、見ててくれよアンセム、お前との誓い、必ず護るからな』
アンセムとハルオミの葬式は盛大に行われた、ハルはアキトに話したところ知っていたようである、最後にアキトはハルに。
『他のみんなはまだ苦しんでる、みんなを頼む』
と、言われた様であった。
苦しみからの解放、それが例え死であっても自分ではどうすることも出来なく、罪悪感に苛まれているのならば、それはいい事なのであろう。
葬式の間アキトはオルガに事の顛末を話し謝罪をした。
『そうか、私の弟は幸せと言って去ったのか……』
『すみません、俺の力不足で』
『いや、いいんだ。だが最後の別れに笑って行ったとは、我が弟ながら幸せ者だな』
そう言ってそれっきり姿を見せなかった。
恐らくは一人、人目に付かない場所で泣いていたのだろう。
ハルオミの遺体も火葬され人としてアルビレオの土に還る事となる。
だがガイアと言うことは伏せられている、ガイアは世界に大きな傷をつけた。
万が一ハルオミの名誉が傷つけられない様にする為である。
二人の骨はアルビレオの一番大きな丘の頂上に埋められた。
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墓の前で誰かが泣いている
墓の前で誰かが叫んでいる
ある者は誓いを立て
ある者は復讐を誓った
またある者は涙を見せまいとし
ある者は人目を憚らずに泣いた
そんな中を一筋の風が悲しみを攫う様に撫でた
その風はアンセムの意思の様であった
その風はハルオミの気持ちの様であった
ハルオミのマカツカゼはガイアの尻尾の部分から見つかり、アルビレオの整備班によって整備され、保管される事となった。
そしてアキト達はアンセムやハルオミとの誓いを胸にグラツのノアの箱船計画を止めるために新たな日々を迎えるのだった。
丁度一部の区切りがつきました、感想など書いて頂けると飛び上がって喜びます




