#42 この世の理に背く者
アキトとスパルソライアは向き合ったまま、攻撃の機会を待っている。
アキトは奇襲が出来ないので一人で古代種相手に戦わなければいけない。
だがスパルソライアも何かを見定める様に動かない。
その間にリラはエメラルドを使いアマリリスのメンバーの傷の治療を施していた。
と、スパルソライアがリラに向かって突撃した。
『危ない!リラ避けろ!』
リラは間一髪の所で避けられたが、他のメンバーと離れてしまった。
『ちっ、こっち向け!』
アキトはスパルソライアに向かってブリューナクを持っていない方の手でアトミックゲイザーを撃った。
が、スパルソライアはまたもあり得ない程の関節の動きでそれを弾いてしまった。
『嘘だろ、外皮が固すぎる』
スパルソライアはアキトの方を向くと足から毒のあるトゲを撃った。
アキトはそれをアトミックゲイザーで撃ち落としていく。
リラはその間にケイト達をスパルソライアから遠ざけ、エメラルドを開始したが、スパルソライアはエメラルドを発動した瞬間アキトに向かってトゲを撃つのをやめて、リラに向かって行った。
その動きは明らかに魔獣の本能に従ったいつもの動きでは無く、エメラルドの効果を分かっていてそれを防ごうというものだった。
『リラ!他の皆を連れて一回アルビレオに戻ってくれないか?エメラルドは使わせないみたいだ』
『でも、アキト一人で置いてく訳にはいかないよ』
『大丈夫だ、ギルオークの時も何とかなっただろ?』
『だめだよ!やっぱり置いていけない』
『ならしょうがない、なるべく早く片付けるから皆をこいつから遠ざけておいてくれ』
『わかった、応援を呼ぶからその人に皆の護衛を頼むね』
『ああ、そうしてくれ』
リラはケイト達を連れて岩陰に行った。
なのでリラからは見えていなかった、アキトの左腕から黒い魔力が出ていることを、アキトは自分の魔力をみることは出来ない、誰も自分の魔力は見れないのだ。
『さあ、一気にカタヅケルゾ!』
最後の部分はいつものアキトの声では無かった。
アキトはブリューナクを構えた。
『聖焔七式 五之太刀 五月雨』
ブリューナクから放たれた焔の衝撃波がスパルソライアを襲う。
スパルソライアは前足の二本から衝撃波を打ち出し、半分は相殺したものの、半分はスパルソライアの体に直撃した。
だがスパルソライアは痛みどころか悲鳴もあげない。
『くそっ、どうなってる?』
まるで誰かに痛覚を遮断されているようである。
スパルソライアはアキトに向かい糸を飛ばしてきた。
『そんなもの、ブリューナクの焔に効くか』
ブリューナクの焔はスパルソライアの糸を簡単に溶かしていく。
アキトの周りには糸を溶かした事による煙が立ち始めた。
その時、
『グフッッッッ!!』
スパルソライアはアキトの体に体当たりをした。
スパルソライアは糸をアキトに溶かさせることで、煙を発生させアキトの視界を奪う事が目的だったのだ。
スパルソライアはアキトに近づいていく。
アキトは衝撃でブリューナクを手放してしまい、神器解放が解けてしまった。
そしてアキトはまだ動けない。
(俺は死ぬのか?俺が死んだらリラが、まだ伝えたい事が…
俺はまだ、死ねない、皆を守るための力が欲しい)
アキトの左腕からの黒い魔力は大きさを増していく。
(まだ死にたくない)
コワイ
(力が欲しい)
ツカレタ
(体に力が入らない)
オナカスイタ
(全身が痛い)
チカラガホシイ
(誰も失いたくない)
チカラガホシイ
(力がホシイ)
チカラガホシイ
(力ガホシイ)
チカラガホシイ!
(チカラガホシイ)
チカラガホシイ!
(チカラガホシイ!!!!)
その時生まれてはいけないものが生まれてしまった。
この世の全ての理に背くものが。
全てを破壊する悪魔が。
『チカラガホシイ!!!!』
スパルソライアの動きが止まった。
アキトはフラフラとおぼつかないながらも立ち上がった。
アキトの左腕の黒い魔力は既に左腕全体を包みこんでいる。
『シネッッッッッッッッ!!!』
アキトは人では無い声を上げながら立った。
アキトの左腕が禍々しい形に変わっていく。
『グォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!』
その叫び声はアキトのいつもの声では無かった、その声は魔獣そのものだった。
〜rira〜
『よし、これで取り敢えず一命はとりとめた』
リラは応援に来たシリウスにケイト達を任せた。
その時、
『グォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!』
そんな叫び声が聞こえた。
『なんですか?今の声は?魔獣?』
『いや……………………今の声は………アキト?』
リラはアキトのいる方へ走りだした。
(まさか、そんな筈は)
そう思いつつもリラはさっき声がアキトだと確信していた。
(待ってて、今いくからね、アキト!)




