#114 半身と半身
間が空いてしまいすみません!!
もう一つの作品にかかりきりになってしまっていたもので、宜しければそちらもどうぞ(打算込み込み)
リラが気がつくと見た事もない風景の中であった。
そこには色とりどりの自然が豊か生い茂り、小さいながらも平和そうな村があった。
そしてその前に一人たたずむ最愛の人の姿。
「アキト……」
「リラ……か。ごめんなこんな事になって」
「ううん。アキトは悪くないよ、悪いのはあいつらだ」
「そっか、ありがとうリラ。後でゆっくり話すから、今はこれを見ていてはくれないか?」
「うん。分かった」
リラは特に何を聞くこともなく、アキトの隣に一緒に腰掛ける。
そうすると目の前の景色が恐ろしい速度で動き回り、瞬く間に時間が過ぎていく。
「あっ、アキト……」
「うん、あれが俺のちっちゃい頃だよ」
「今だってちっこいじゃん」
「……拗ねるよ?」
そんな話をしていると突如平和だった村に大きな振動が響き渡る。
「何!?」
「これが俺の最も忌まわしい罪の記憶だよ、リラ。俺は間接的にだけど、俺の手で大好きだったお母さんとお父さんを殺したんだ」
「殺した?」
「まあ、見ててよ」
アキトは何処か遠いところを見つめるような瞳でずっとその光景を見つめていた。
村は火事に襲われ、周りからは村人を追い立てる様に魔獣が現れる。そして、村の奥の山から、もう一つ、そしてもう一つの山が新しく生まれる。
否、生まれるのではない、目覚めるのだ。
そこに現れたのは全長300mはあろうかという巨大な魔獣であった。
「あれが俺が目覚めさせてしまった、俺の罪の刻印。古代より魔獣の頂点に立つ超大型種の更に頂点に立つ、交戦禁忌種、アジ・ラスパーダの親玉、ゼウスとソルド・ギルワーカの親玉、ヘラだ」
「ゼウス……ヘラ……」
リラでもその言葉は聞いたことはあった、古代に古の王が最後のありったけの魔力を注ぎ込んで封印したという二種の魔獣で、その力は凄まじく、世界の半分以上を壊滅させたという最強最悪の魔獣である。
「なんでそんなものが此処に……」
「分からない。だけど、こいつらは俺のせいで復活して、そのせいでおれのお母さんとお父さんは死んだ。それは確かだ」
数分して2人の男女がゼウスとヘラに突っ込んでいく。
早送りでもわかるほどその顔は決意に満ちており、数分後眩い光と共にゼウスとヘラの体は消滅した。
「俺のお母さんの……神凪家に伝わる固有魔法、『セレスティアル・レイン』今、それを使えるのはコトハだけど、一つ前の世代はお母さんだったんだ。そしてそれを最大まで強化して、お父さんとお母さんの命と共にもう一回封印したんだ」
そこで風景は歪んで行き、ついには消えてしまった。
「これが俺の犯した罪、これを見てもリラは俺を見限らないでまだずっと一緒に居てくれる?」
「うん、勿論だよアキト。私はずっと昔に誓ったんだ。たとえどんな事がアキトの身に降りかかろうとも私はアキトを信じてずっと一緒に居るって。あの日別れてからずっと」
「……そっか、ありがとうリラ。…………ああ、ちくしょう幸せだなぁ、俺」
「うん!私がもっと幸せにしてあげるからね」
「それって普通男が言う台詞じゃね?全くもってかっこ悪いったらありゃしないな、俺は」
「ううん、アキトはかっこいいよ」
「話は済んだか?我が主よ」
リラと笑いあっていると突然後ろから声がする。二人同時にそこを見ると見知らぬ赤い焔に包まれた人型がいた。
「そう警戒するな。私だ、ブリューナクだ」
「「ブリューナク!?なんで人型なの!?」」
「まあ、聞け。取り敢えず私の半身を呼ぶぞ。来いよ」
ブリューナクと名乗る人型がそう言うとその更に後ろから黒い焔に包まれた小型のドラゴン……アジ・ラスパーダが現れる。
「貴様が我が主か、神凪アキト……」
「お前は?」
「ふむ、今の呼び方だと私は……貴様に封印されていた魔獣の魔力……という事になるのだろうか?」
「って事は……あのドラゴン!?」
「ふむ、そういう事になるな、ヴァルキュリアの主よ」
そう言って黒い焔に包まれた小型のドラゴンは頭を下げる。
「すまなかったな我が主達よ、先刻までは我が意識がもうろうとしており、力の制御ができなかったのだ。非礼を詫びよう」
「いや、良いんだが。聞きたい事がある、まず主って何だ?それにブリューナクの半身って……」
「それについてはまずは前者の方から答えよう。我が主は我が主なのだ」
「は?」
我が主は我が主と言われてもわけが分からない。
「ふむ、私の力は神凪アキト……貴方に授けられたといえば良いか?」
「……ということはお前の力を俺が自由に使えるって事か?アルドみたいに?」
「そのアルドという者は知らんが、私の力、触れた事のある物質に私の魔力を変質させる事ならば普通に出来るぞ?」
「それ、俺が悪魔になるって事か?」
それは不味い、俺はまだ出来るならば人間でいたい。
「いや?人間のままだ。私の魔力を取り込んだだけだからな。我が主の魔力と混ざり合わない限りそんな事は無い」
「そっか、それなら良いんだ。じゃあこれからよろしく……になるのか?……えーっと」
「ヴィルフリートだ」
「そっか、よろしくなヴィルフリート」
「ああ、よろしく頼む我が主よ」
「……それでさヴィルフリート、二個目の質問なんだけど……」
「おう、そうであったな我が主よ、それについてはまず我が主に一つ聞きたい事があるのだ」
「なんだ?」
「何故我が主は私とブリューナクを同時に使用できるのだ?」
「いや、知らん」
即答であるが、知らないものは知らない。
それを聞いたヴィルフリートとブリューナクが目を見合わす。
「そうか……ならばいい。それならばブリューナクと私達……人間たちの言葉で言えばアジ・ラスパーダの関係は知っているか?」
「いや?知らないな」
「そうか……ならば少し長くなるがいいか?」
俺はリラと目配せをして、了承の旨を伝える。
それを聞いてヴィルフリートとブリューナクは語り始めた。
「まず一つ、私……ブリューナクは神の器、No.1では無い」
その始まりから俺たちは度肝を抜かれることとなったのだが……