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聖焔の軌跡 〜Miracle Lucas〜  作者: ムササ
第六章 The black flame which is distorted
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#112 ヴィルフリート

「行くよヴァルキュリア!神器解放!」


詠唱を終え、私がそう唱えるとヴァルキュリアから眩い光が溢れ出し私を包む。


「練器解放!紅閃扇舞姫!!」


舞姫も解放し、それに続いてみんなもそれぞれの王の器を抜く。王の器使い以外がいたらやばかったかもね。

それほど今のアキトから感じられる魔力の波動は凄まじい。もしかしたら、怪我じゃすまないかもしれない。

……だけど私は……それでも私は……前へと進む。

大切な人を救う為に、悪夢から目を覚まさせる為に。


「スプレッドノヴァ!!」


先ずアキトの背中にコトハが触る為にアキトの体力を削らないといけない。アキトに攻撃するのは心苦しいけど、多分殺す気でやらないとこっちが殺される。ちょっと痛いかもしれないけど、私の愛した人はそんなんじゃ死なないよね!!

コトハが、ケイが、みんながアキトを救う為にアキトに攻撃を放つ。矛盾してるけど、それしか道は無い!!


アキトが翼をはためかせる度、周りの空気が爆発する。

多分あの翼には舞姫の力があるんだろう。アキトが大きく口を開ければ、大質量の炎のブレスが飛んでくる。

私はそれを水の精霊の力を借りて、大量の水を作り出し相殺。

不意に私達の頭上が光り出す。上を見ると光で出来た紋章が。ラ・クラマーレ!!予想してたけど古代魔法も使えるんだ。…………アキト、強すぎるのは良いことばっかりじゃ無さそうだよ?


「早くここから離れて!!」


間一髪避けた瞬間、周りにあった建物が光に包まれ、跡形もなく消し飛んだ。あんなの食らったら存在が消されちゃうよ………一番厄介なのは翼の舞姫だね。だからまずはそれを潰す!!


「ホーミングノヴァ!!スプレッドノヴァ!!レインノヴァ!!」


一発目の矢は、追尾しながら分裂して数を増やし、翼を平行に狙う。二発目の矢は、拡散しながら分裂して数を増やし、下から翼を狙う。三発目の矢は、空高く舞い上がり、そこから急降下しながら分裂して数を増やし、上から翼を狙う………それをアキトはホーミングノヴァを前足で薙ぎ払い、スプレッドノヴァをブレスで薙ぎ払い、レインノヴァを翼をはためかせ、爆発を起こし薙ぎ払う。

なんて力………でも!


「妖精たちよ、我が意思に汝らの加護を、光弓にその力を、フェアリー・ファンタジウム!!」


色取り取りの矢が空高く舞い上がり、弾ける。

空から属性を付加されたヴァルキュリアの矢の雨が降り注ぐ。


「リラお姉ちゃん頑張りすぎ!!私達も居るんだよ!」

「うん!分かった!!」

「………絶対分かってない…………」


今やリラの目には耳にはアキトしか写っていないのだろう。コトハにもその気持ちは分かる。なにせ最愛の人が目の前で苦しんでいるのだ。一刻も早く救いたいという気持ちが何物よりも勝っているという事は想像し易い。

勿論自分やケイ達にもその気持ちは大いにある。しかしリラにとってその気持ちは想像も出来ないほど大きいという事もまた想像し易い。

それ程にまでリラはアキトを愛しているのだ。


矢がアキトの体に当たる度、赤いものは爆音を、青いものは冷気を、黄色いものは閃光を、それぞれ引き連れながらアキトのドラゴンと化した体にダメージを与える。

アキトもブレスで対抗するものの、魔力と力だけの戦いならばアキトのブレスに軍配が上がっただろう。しかしリラのフェアリー・ファンタジウムはリラが独自に開発したリラとヴァルキュリアだけの魔法は恐らくこの世に存在するどんな魔法よりも持続時間と効果範囲にのみ勝っている。

唯一このコルノスティ王国を守る最強の魔道砲であるオリハルニアならば肩を並べる事が出来るだろうが、あれは魔法では無い。

けたたましい音を立ててアキトの体が矢に包まれる。


「おいリラ………流石にやりすぎじゃあ……」

「ううん、アキトはこんなのじゃ倒れないよ」

「同感だな、魔力が全く揺らいでねえ………ほとほと化け物だと実感させられるよ」


ケイが心配するのも当然。しかしジントの言葉もまた当然である。

先ずアキト自身の耐久力は一般的な魔法使いよりは数倍マシだが、それでも髪の器の攻撃、更に属性付加までされたものを食らえば比喩ではなく身体が四散するだろう。

しかし、今のアキトは空の帝王と称された最強の魔獣、アジ・ラスパーダなのである。その耐久力はもう片方の超大型、陸の皇帝ソルド・ギルワーカには及ばずとも劣らない。アキトの魔力をアジ・ラスパーダが持ち、元々馬鹿げた火力を更に底上げした存在であるそいつは、多少傷ついてはいるものの、致命傷どころか有効打になっているかも疑わしい。


しかしリラの狙いはアキトをその場に止めておく事。

つまり、三連打で放ったノヴァを伏線にしたフェアリー・ファンタジウムを伏線にした王のスピーチの一撃を確実に当てる為の布石であった。


「行きますよ皆さん、下に構えといて下さい」


ケイが固有魔法テレポートを使用し、リラを除くすべての王の器使いをアキトの真上に転移させる。

リラ達の狙いは最初からただ一つ。アジ・ラスパーダの唯一と言っていいほどの弱点。唯一そこだけが攻殻で覆われておらず、また巨大な推進力を得るためにそれもまた巨大にせざるを得ず、さらにその仕様上絶対に剥き出しにしておかねばならないもの。アジ・ラスパーダの背中から生えている大きな翼である。


まずはオルガがアキトの背中に裏拳を叩き込む。普通ならば痛いどころか認識すらされないであろう一撃、しかしそれはアキトの、アジ・ラスパーダの巨体を地に沈めた。

オルガの王の器、妖精の籠手は触れた物全てを弾き飛ばす。

すかさずカルマが背中に降り立ち、翼の根元を王の器風鞭マカツカゼで叩く。そうすれば一時的にではあるが翼に魔力が行き渡らず翼は動かせない。

アキトがオルガ達を振り落とそうとするが、ケイがまたも転移、アキトの目の前、言葉の通り本当に大きく見開かれたアキトの目の前に転移し躊躇無くコルセアの引き金を引く、爆音を響かせながらアキトの目に爆発が叩き込まれる。

無防備になった翼を最後の二人、コトハとジントがツキウサギにナルカミを持たせリーチを最大まで伸ばして、バルクーサスに最大の重力を掛けて、切り落とす。


悲鳴をあげながらアジ・ラスパーダが倒れこむ。

ここまで来ればコトハが背中に手を触れ、アキトの魔力を解放し、意識を取り戻した瞬間にリラがラル・イーガで意識を引っ張り出せばいい。

そう思っていた時だった。


アキトの周りを構成していたアジ・ラスパーダの肉体が黒い魔力と化しアキトの中に吸い込まれていってアキトが元の姿を取り戻す。

戻った?

そう思った矢先リラは気づく、アキトの目には生気が無い。まだアキトは操られている。


それを確認したリラ達はアキトから距離を置く。全員が揃ったのを待っていたかの様にアキトがブラックボックスから一振りの剣を取り出し更に左手には黒い魔力で全く同じ形をした剣をもう一振り取り出して、おもむろに口を開く。


「古の王に仕えし気高き剣の魂よ、我が意思に応え、大いなる力を我が身に宿せ、いでよ聖焔剣ブリューナク」


右の剣が焔を纏い、大剣と化す。今まで何度も見た世界で一番心強い剣。その切っ先はリラ達に向けられていた。

しかし、尚もアキトの詠唱は終わらない。


「古の王に仕えし勇猛なる龍の魂よ、我が意思に応え、汝が力を解放せよ、いでよ獄焔剣ヴィルフリート」


アキトの左手には、ブリューナクと全く同じ姿形をした一振りの剣が握られていた。ブリューナクと違うところはただ一つ。


ーーーその焔は漆黒であった。

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