#102 神の剣オリハルニア
『お待ちください、ミディア王女、シアンさん。この方たちは?』
セルヴィムへ入る門番に呼び止められた。まあ、知らない人物が来たら疑うのが当然だよな。
『お祖父様の招待客です。神凪アキト様とそのお連れ様です、丁重におもてなしするように』
『か、神凪アキト…あの《焔剣王》と呼ばれる……』
何かミディアと話していたからと思うと急に畏まった様子で門番がこちらへ向かってきた。
『し、失礼しました!神凪アキト様ですね。用件は承知しております。それではご案内させて頂きます』
何処にいたのかぞろぞろと門番とメイドが集まってきてあれよあれよと言う間に荷物を持って行かれた。
『あ、私達の荷物…』
『ん、大丈夫だよ。魔法陣でアルビレオに送ってくれるから』
『魔法陣?そっか、荷物転送用の魔法陣だね』
『うん、だから…まあ平気でしょう』
今頃転送されてアキト達の自室へと転送完了したところであろう。
『あの、神凪様…すみませんが……』
『ああ!そう言えばセルヴィムは王の器の持ち込み禁止だったね』
『知っておられるので?』
『ふふっ、アキトはあなた方の先輩よ』
ミディアが笑いかけるが、兵士達は不思議そうな顔をしている。
その間に俺はブリューナクをブラックボックスから取り出し、リラとコトハにも王の器を出してもらう。
そして、兵士の差し出す綺麗な布の掛かった箱の中へとおく。
4つの王の器。その内2つが神器であり、これだけで小国ならば滅せるだろう。メイドの一人が興味深そうにブリューナクに触れようとする。慌てて触れる寸前、止めたが怪訝な顔をされた。
『神器には触れちゃあダメですよ。適格者以外が触れると、ブリューナクの場合……燃えますよ?』
その言葉にそのメイドは真っ青な顔でこくこくうなづいた。その言葉の通り、神器に適格者以外が触れると拒絶反応が起こる。そして最悪の場合は死に至る。
『その辺にしておいてくれ、そろそろ行こうか、アキト。晩餐会の準備が始まるんだ』
『ん、了解』
『なんか、アキトとミディア王女とシアンって仲良いよね』
『お兄ちゃんは昔カキツバタに居たんだよ。だから二人とも仲良いし、さっきミディアちゃんが先輩って言ったのもそういう事』
『ああ、そういう事』
一行は連れ立って、煌びやかな王城の中へと入って行く。
所々に素人目にも分かる高価な装飾品が散りばめられる王城内の廊下は五人が横になって歩いても尚、スペースがあった。
『ここでお待ちください、暫くして晩餐会の準備が整いましたらお呼びいたします』
王城の一角にある客間のまえでメイドが立ち止まり、俺たちに向けてそう告げた。
『それじゃあ、また後でねアキト。晩餐会楽しみにしててね』
そう言って去っていくミディアを見送りながら俺たちは客間へと入った。その中は一目で豪華と分かる作りになっており、広々としていて三人でも十分くつろげる空間だった。
『うわあ、これがセルヴィムの客間……凄い初めて入った…』
『そう言えば俺も客間に入るのは初めてだな。こんな作りになってたのか』
『見てみてお兄ちゃん!お姉ちゃん!ベッドふっかふか!うわ!天蓋付きのベッドなんて初めて!!』
そんなこんなで暫く雑談や、直ぐにメイドさんが用意してくれた紅茶とお茶菓子に舌鼓をうっていると準備が出来たとの声が掛かった。
持ってきた荷物は転送魔法陣でアルビレオまで送ってくれた様なので荷物は殆ど無いが、その荷物も置いていっていいと言われた。
メイドさんに連れられ、俺たちは王の間へと向かう。
一段と豪華で大きな扉を潜るとそこが王の間である。中央には玉座があり、そこにコルノスティ王国の国王であるソールバニス・オリハルニア・コルノスティその人と、その孫であるミディア・オリハルニア・コルノスティとその妹であるチェリア・オリハルニア・コルノスティが待っていた。
『楽にしていてくれ、今は王では無く、神凪アキトの友人として此処に招いたのだ』
その言葉を受け、俺たちは臣下の礼を解く。
『お久しぶりですソールバニス王』
『うむ、久しぶりじゃなアキト、それにそちはコトハか』
『はい、お久しぶりでございます』
『あっ、コトハ!久しぶりー!』
『チェリアちゃん!』
早速チェリアとコトハが互いに抱きつく。この二人は旧知の仲であり、親友である。
少女2人が抱きつき合うのは見ていてとても可愛らしい雰囲気ではあるが、今はソールバニスに用事があるのだ。
その気配を察知したのかソールバニスがこちらへと視線を向けた。
『アキトが来たということはグラジオラスのメンバーが決まったのだな』
『はい、それについて誓約をしたく』
『そうか、では参ろうか。コトハはチェリアと遊んでやってくれ』
そして俺たちはコトハとチェリアを置いてある場所へと向かう。
『ねえアキト?今どこへ向かってるの?なんか上に向かってるけど……』
『この国の最終防衛手段の所だよ』
リラはそれを聞いてもピンと来ていないようだ。それもそのはずそこはこの国の最高機密であり、国直属の部隊の隊長、副隊長、それに王族しか見ることの許されないモノなのだ。コトハはその事を知ってはいるが、体裁上ソールバニスはそれを許す訳にはいかないのだ。
そして俺たちはセルヴィムの最上階へとたどり着いた。
今ここに居るのは俺とリラ、ソールバニスとミディア、シアンである。
『コルノスティ王国国王の名において命ずる、我が盟約に従い、汝が扉を開け』
ソールバニスがそう言うと、王の間よりも大きな扉が少しづつ音を立てながら開く。そして目の前にあったのは、一門の大砲である。
『これは…?』
俺はソールバニス王に伝えていいか?という疑問の眼差しを送ると、了承の意をもらったので、リラに話し始めた。
『これは広範囲殲滅型古代兵器オリハルニア。神の剣と呼ばれる内の一つだ。ここに誓う事で、グラジオラスとしての始動を正式に認められるんだ』
『神の剣……オリハルニア…』
まずはソールバニスがオリハルニアの前へと向かい、それに続いて俺とリラがその前へと歩みを進める。
『神凪アキト、汝は我が国の剣となり、全ての民を守る盾となる事を誓うか?』
『はい、誓います』
俺は臣下の礼を取って誓いを立てる。
『リラ・カーネリア・プレシア、汝は我が国の剣となり、全ての民を守る盾となる事を誓うか?』
『はい、誓います』
リラもまた臣下の礼を取り、誓いを立てた。
『では、コルノスティ王国国王の名と、オリハルニアの誓約に従い、此処にコルノスティ王国国王直属特別支援部隊グラジオラスの発足を命ずる。各自精進するように』
『『はっ!』』
これでグラジオラスの正式な発足が終わった。
『これで終わりじゃ、これでそなたらもこの国の直属部隊の隊長、副隊長じゃ。わしからも祝辞を述べさせてもらう。それと、このオリハルニアの事は秘密にな。こいつは悪用されると都市一つ一瞬で消滅させる事が出来るからな』
そうして俺とリラ、そしてコトハは正式にグラジオラスの隊員となった。
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『お父様……貴方の仇は私がうちます……』
『私達を見守っていて下さい……』
『絶対に殺すわよ、アルド』
『ああ、先ずは手始めに愚図な国民どもを手下にするぞ。我々はヨルムンガンド。精々仮初めの平和を満喫していろ、神凪アキト』




