#101 王の血を継ぐ者
等間隔で揺れる馬車の中、吹き付ける風が心地よく髪を揺らす。
今、アキト、リラ、コトハの三人はコルノスティ王国の王都サウサンクロノスにある王城セルヴィムへと向かっていた。その理由まで話は三日ほど遡る。
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『晩餐会。ですか』
『ええ、是非我が王がアキト殿を招きたいと』
『殿はやめて下さい。貴方はいつまでも変わらぬ私の師匠です』
『ではお言葉に甘えて…他に誰を招いても構わないとのことです。来てくれますか?』
『はい、他ならぬソールバニス王の頼みならば断る訳にはいきません』
『ではそのように。私は任務を果たしました』
そう言う国王直属部隊カキツバタ隊長キケロ・デクアロスが一向に帰る気配を見せないのを見てアキトは悟った。
『ふぅ、して本題は?』
『良くわかったなアキト』
キケロが微笑を口に浮かべる。口調が変わったという事はここからは国王の使者では無く、アキトの師匠としてという事らしい。
『報告は受けたぞアキト、そこの…リラさんはお前の背中の紋章を目視したらしいな』
『はい、恐らくリラは…』
『王の末裔…か……喜ばしくはあるが、同時に厄介でもあるな』
『神凪、コルノスティ、プレシア、リーゼクス。四つの王の末裔は途絶えてはいなかった…』
『その事でソールバニス王のから話があるそうだ。次代の王の末裔…神の巫女について神凪コトハとリラ・カーネリア・プレシアを連れてきてほしいとの事だ』
『了解です。丁度そのメンバーでソールバニス王と話したい事もありましたし』
『ほう、それは興味深いな』
キケロが眉を吊り上げながら聞いてくる。タチの悪い師匠だよ、なんのことか想像つくのに。
『全く…わかっているのでしょう?師匠。グラジオラスの話です』
『決まったか』
『まあ、隊長と副隊長、第一指揮長だけですけどね』
『なるほどカキツバタを参考にする訳か』
『そういう事です』
『わかった、ソールバニス王に伝えて置こう。出発は三日後だ、そうだな…二日ほど泊まることになると思ってくれ』
『ん、了解です』
そう言ってキケロは紅茶を飲み干し、帰っていった。
『とまあ、そう言うわけで2人にも付いてきてほしいんだけど』
『うん、わかったよお兄ちゃん。久しぶりにミディアちゃ…王女にも会えるかなぁ?』
『ん、会えると思うぞ。兵士たちの訓練と模擬戦も頼まれたからな。ミディアは良く見てただろ』
『今アキト、王女様のこと呼び捨てにした?』
リラが恐ろしい事を聞いたとばかりにこちらを向く。
『ああ、俺は良くセルヴィムには行ってたからな。というかミディアの方からそう呼んでくれって言われたんだよ。だからチェリアの事も呼び捨てだ』
『私は今アキトの驚きの過去を聞いて、思考がまとまらないよ…』
当たり前である、今目の前にいる銀髪の寝癖付きの青年、しかも自分の恋人がむかし王城に良く行っていたと言われれば誰しも驚くに違いない。
『それで、リラは付いてきてくれる?』
『うん、勿論だよアキト、アキトが行くならどこまでだってついて行く』
『ん、ありがとうリラ』
『どういたしまして、それでアキト?さっきから…というよりちょっと前から良く聞く王の末裔って何なの?』
『ミュウ?』
リラの膝の上にちょこんと座っているエレムがリラの疑問にシンクロする様に首を傾げる。
『うーん、これは最重要機密事項だけど……まあこの部屋には他に誰もいないし…まあいっか』
『いいと思うよ、アキトお兄ちゃん。リラお姉ちゃんも当事者なんだし』
『ん、王の末裔ってのはまあ端的にいうなら古の王の後継者の事だな。古の王の血を引くものはこの国には結構いるけど王の末裔ってのはその中でも古の王同士の間に生まれた4人の子供の後継者だ』
『え、ちょっと待ってアキト…古の王同士の子供の後継者って……古の王同士が結婚してたって事⁉︎』
『ああ、そうだよリラ。一般には知られてないけどね。俺たちの家系にだけ伝えられているんだ』
『でもなんで私がその王の末裔ってことが……あ!紋章…』
『うん、正解。俺の背中の紋章、正確には封印紋章が見えるって事はその血を継ぐ者って事だからね』
『でも…おかしくない?なんで6人の王から生まれた子供が四つの家系に分かれるの?』
『ブリューナクの持ち主とヴァルキュリアの持ち主の間に生まれた子供が双子だったからね。それぞれが違う道を歩み、違う家系に至ったというわけだよ』
『なるほど……』
『詳しい話はソールバニス王のほうが詳しいからそっちから聞くと良いよ』
『うん、わかった。ありがとうアキト』
『いいえ、それほどでも』
そうして話は変わり冒頭へと戻る。
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『ん、そろそろ見えて来たな。サウサンクロノスだ』
アルビレオから馬車に揺られる事6時間。やっとサウサンクロノスへと到着した。
『やっぱり大きいね。あれが王城セルヴィム』
サウサンクロノスの中心に一際大きく建てられている王城セルヴィム。まさに白銀城と呼ばれるに相応しい一つも陰りのない白で塗り固められたセルヴィムは圧倒的な威圧感と共にこの国を守り抜いてきた。
『さあ、中に入るぞ2人共。まだ時間あるし少し城下町でも見てみるか』
『『賛成ー!』』
三人は送ってくれた馬車の主人にお礼を言ってから城下町町散策へと繰り出したのだった。
『うわ、すっごい……これがサウサンクロノス……』
『そっか、リラは初めてか……』
『うん、こんな凄いなんて知らなかった。アキト、見て回って良いの?』
『うん、いいよ』
『やった!行こう!二人とも!!』
『全く……はしゃいじゃって…子供だなぁリラお姉ちゃんは』
『いや、お前も十分はしゃいでるからな?そんなに俺の手を強く引っ張りながら言われても説得力ないから』
そうして三人の城下町町散策は過ぎていく。
『ねえアキト!これとかどうかな⁉︎』
『お兄ちゃん!お兄ちゃん!これこれ!』
『うわー!これ美味しい!』
『お兄ちゃん!これ買って!!』
『すいません!これください!』
『きゃー!これ欲しかったの!!』
お金は幸いまあまあある方だからいいだろう。伊達に魔獣討伐していない。それに後で褒賞が貰えるという話なのでそれはいい。二人の買った荷物がアキトのブラックボックスに収まり切らず、両手に有るのもまあいい。だけど、だけど、
『そろそろセルヴィムに行かないかなぁ!まだ城下町の大通りの三分の一も進んで無いんだけど⁉︎』
既にサウサンクロノスに入ってから3時間。このままではセルヴィムに着くのは真夜中である。
『流石に国王主催の晩餐会に遅刻とか洒落にならないよ⁉︎』
二人は今思い出したかのような顔をして互いの顔を見合わせる。
『そうだった、ごめんねアキト』
『忘れてたよお兄ちゃん、ごめんなさい………あと一軒だけ!』
そう言ってコトハがえらい勢いで走っていく。
『『コトハ!!』』
二人の呼びかけで止まるコトハ聞き分けは良いのだが、リラよりは悪かったらしい。
気を取り直して三人でセルヴィムへの道を歩いている時、前方に人だかりが出来ているのを三人は見た。
気になった三人がそこへ向かうと、そこに居たのは、
『ミディア⁉︎』
『あっ!アキト!!』
金の長い髪を下ろし、高級そうなドレスを身にまといその頭には王家の証であるティアラを付けたアキト達と同い年くらいの少女。コルノスティ王国第四王女のミディア・オリハルニア・コルノスティその人とその従者が居た。
『ご無沙汰しております、お久しぶりですミディア王女』
『いいのですよアキト、お久しぶりです』
東の国の金色の花と称される程の美貌を持つミディア王女である。それが笑うとなんと美しきことか。
『お久しぶりです、アキト』
よく見るとその従者にも見覚えがあった。
『久しぶりだな、シアン』
キケロ・デクアロスの実の娘であり、カキツバタの副隊長でもあるシアン・デクアロスであった。
『皆様もお変わりなく。晩餐会ですね、付いてきて下さい皆様……その荷物も届けなければならないでしょうし』
三人は顔を見合わせた後、アキトの両手にある荷物を見て照れ隠しの苦笑をするしかなかった。
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『では、改めて。ようこそ我が城へ』
そうして五人は王城セルヴィムへと足を踏み入れるのだった。




