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聖焔の軌跡 〜Miracle Lucas〜  作者: ムササ
第五章 A crest and heart
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#99 貴女の名前はなんですか(上)

『という訳で、私は今日これを使います』


銀の髪を下ろし、グラジオラス副隊長の証である二輪のグラジオラスのバッジをつけた少女がそう言った。

そして懐から取り出したのは一枚の紙。


『了解だよ、そしてその効力を使うのは誰かな?』

『神凪アキト、神凪コトハ、それと私リラ・カーネリア・プレシアです』

『して、叶えて欲しいお願いは?』

『以上3名の今日の非番、そして温泉の独占です』


〜〜〜〜〜〜〜


『支部長…本当に叶えたんですね……』


俺こと神凪アキトは今、実の妹と彼女の共にアルビレオ郊外にある温泉へと赴いていた。

事の発端は昨日の朝食時、コトハとリラのなんでもないケンカである。

その結果俺は今から実の妹であるコトハと、彼女であるリラと共に温泉へ入る事となっているのだった。


『これが、アキトお兄ちゃんが不慮の事故で作ったという温泉……』


コトハが不慮の事故と言ったその事故は星誕祭が始まる少し前、リックス支部長によって俺が実験台となったエアログルスの稼働実験の事故である。

失敗した結果俺は地面に激突する寸前ブリューナクを地面に突き立てる事で何とか難を逃れたものの、地面に盛大なクレーターを作り、そこから温泉が湧き出てきたのだ。

そしてそれは瞬く間にアルビレオの観光名所となり、今もこうして俺たちを向かい入れてくれているという事だ。



『さあ!さあさあ!さあさあさあ!早く入りましょう!日頃の疲れを癒す為ですね……仕方なく…ほんとーーーーーーーに仕方なく私がアキトの背中やらなんやらを流してあげます!!』

『はぁー…………分かった……お願いするよリラ』

『あっ!ダメだよリラお姉ちゃん!半分は私にくれるってやくそくでしょう⁉︎』

『あっ、そうでした。じゃあ半分私が流してあげます!』


俺の意見は無視か…そして半分あげるって俺はアイスが何かか⁉︎

俺がこうなっているのも、星誕祭のメインイベント魔法演舞でリラとミサトさんが優勝し、支部長が言うところのなんでも一つ叶えちゃうぞ券がリラの手元にあるからである。


『じゃあ早速入ろう!お兄ちゃん!』


そういうコトハに促され、俺たちは脱衣所へと足を踏み入れる。

そして俺が男の方の脱衣所へと入ろうとした時。


『ダメだよお兄ちゃん、お兄ちゃんもこっち!』


そう言ってコトハは女の脱衣所を指差す。


『いや、だってそっちは女の脱衣所…』

『今日は貸し切りなんだからいいじゃん!』

『いや、でも…』

『お願い……お兄ちゃん……』


コトハが若干目を潤わせながら手を組んでそう言ってくる。


『そうです、今日は私とコトハの言うことには従ってもらいますよ?アキト』


そう言われるとどうしようも無い。


『分かった。そっちで脱げばいいんだろ?』

『『うん!!』』


二人が嬉しそうだからまあいっか。

だが、結論としてはとても良くなかった、本当に良くなかった。


『じゃあ先にリラお姉ちゃんの服を脱がせてね?』


コトハがそんなとんでもない事を言い始めたのだ。


『は?お前…自分で脱げるだろ?子供じゃあるまいし』

『いいの!私がお兄ちゃんにリラお姉ちゃんの服を脱がせたいの!』

『いや、それはあまりにも倫理的に無理だ』

『無理じゃない!』

『無理だ』

『無理じゃない!』


その後約15分にわたって俺とコトハは議論を続けた。

その議論はあまりにも低レベルすぎて思い出したくもない事だが、俺の男としての大切な何かは護られたとだけ言っておく。

そして今、俺は一人で服を脱いでいるのだが、問題が一つ。男女間の脱衣所を仕切る壁があまりにも薄いのだ。

それはもう一つの脱衣所で話していることが静かにしていれば筒抜けなくらいには。


『リラお姉ちゃんはさ、アキトお兄ちゃんのどんなところが好きなの?』


とか


『リラお姉ちゃんってば本当可愛いよね』


とか


『リラお姉ちゃんはさアキトお兄ちゃんとどこまでいったの?』


といった会話が俺にさっきから筒抜けなのだ。

勿論相手側は俺に聞かせるつもりは無いのだろう。しかし、結果として俺の耳には届いておりその結果俺はそれに対するリラの返答一つ一つに耳を澄ましてしまい、とてもでは無いが脱衣どころの騒ぎでは無かった。

だがそれもひと段落した所で、まだあっちに入る気が無いことを聞いてから俺は一人で温泉へと入った。

そこはとても大きく、俺が作ったなどとは信じられないほど手入れが行き届いていて尚且つ、貸し切りなのだという事が俺の気持ちを高揚させた。

そして俺は一人温泉のに浸かり考える。

一つはこれからのグラジオラスの事。

そして、俺の左腕に宿っている魔獣の魔力の事。


(この事は誰にも、リラにさえも言えないな…)


自分がいつ暴走するかも分からないという事をリラに話せば彼女はたとえどんな事をしてでも俺を守ってくれるのだろう。しかし俺はそんな事は望んでいない。

だって俺はリラを守る為にその力を振るっているのだから。

その時唐突にドアの開く音が温泉内に鳴り響いた。

よく見るとこの温泉には二つのドアがあり、俺が入ってきたのとは違うドアらしかった。どうやらこの温泉は混浴らしい。

そしてそのドアから入ってきたのはコトハ一人であった。


『アキトお兄ちゃん、じゃあ約束通り背中流してあげるね』


体にバスタオルを巻きつけ、コトハがそう言ってくる。


『ああ、お願いするよコトハ』


そう言って俺は温泉から上がり、背中を流してもらう為にシャワーの方へと向かう。

そしてコトハはゆっくりと俺の背中を流し始めた。


『……お兄ちゃん……これまだあったんだ』


コトハがそういうのはおそらく俺の背中の傷だろう。

これは|戦闘でできた傷では無い《・・・・・・・・・・・》。


『ああ、医者には絶対に治らないとよ』

『ごめんねお兄ちゃん……辛かったよね』

『いいや……俺の方こそごめんな。コトハ両親の顔とか覚えてないだろ?』

『ううん、いいんだよお兄ちゃん……私にはお兄ちゃんがいるから……』


その時またもあのドアを開ける音が鳴り響く。


『……お待たせ……しました……』


そこには言葉になんて表せない。

強いて言うならば神を表現するような的確な表現なんて無い様に俺は只々彼女を見つめる事しか出来なかった。

バスタオル一枚のみでしか体を隠していないリラにとってはなんとも形容しがたい感情に俺をするのはなんとも簡単な事らしい。


『じゃあ、後は頼んだよ?お姉ちゃん』


そう言って俺の背中を流す手が変わる。


『じゃあ……よろしくお願いします……』

『お、おうよろしく』


そしてリラの体が直に俺に触れる。

というより、俺が後ろのリラに抱きしめられた。


『ち、ちょっ!リラっ⁉︎』


だがリラはただ抱きしめるだけだった。

そしてその顔は泣いていた。


『アキト……さっき聞いたんだコトハちゃんに……アキトの背中を見ても何も言わないであげてって………ごめんねアキト…その背中の事…聞いちゃった……拷問……なんでしょう?』


そう、神凪アキトの背中に刻まれた一生消えない傷は拷問の跡。

神凪アキトが幼い頃に体験した忌まわしき記憶の1ページ。


『私じゃあこの傷は癒せないけれど一緒に背負う事は出来るよ?……アキトが自分に課した罪も…私が一緒に背負う』


そう言ってリラは只々、俺の事を抱きしめてくれた。

そしてリラは何かに気がついた様に俺の背中をもう一度見る。


『あのさ、アキト…この背中の紋章?みたいなものは何?』


その言葉を受け、俺とコトハの顔が驚愕に包まれる。


『お姉ちゃん…これ見えるの?』

『え?……うん』

『ごめんお姉ちゃん変な質問…するよ?』

『うん』

『お姉ちゃんの名前は?貴女の名前はなんですか?』

『リラ・カーネリア・プレシアだよ?』

『プレシア…プレシア……まさかプレシアって』

『ああ、多分そのまさかだコトハ……多分プレシアって言うのは』


王の末裔。

2人は同時にそう言った。


『王の末裔?何それ?』

『まあ、詳しい事は今度話すよ。まあ簡単に言うならば神凪の血と同じって所かな』


そこまで離した時だった。

それは唐突に聞こえてくる。


『ミウ?』


そして突然空から少女が降ってきた。


伏線を回収する為の回だった筈なのに伏線が逆に増えてる…なんでだ。

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