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第三十一話

三十一、


 信ちゃんへ


 この手紙を読んでいる頃には、俺は、もうこの世の人じゃないと思う。信ちゃんにはいろいろと迷惑をかけて、申し訳なかったと思ってる。できるものなら、今までのお礼をしたいところだけど、それもできない。お礼は、この手紙って事にしておいてくれ。

 そもそも、俺がこんな風になってしまったのは、自分の弱さからだった。それだけならいいけど、親や友人にまで迷惑をかけてしまって、今では本当に後悔している。病院のベットに寝ている間は、ずっとそんなことを考えていた。それで、ずっとぐじぐじしていたんだ。

 でも、お前らがお見舞いに来てくれたりして、だんだんと前向きに頑張る気持ちになってきた。特に、お前は俺の話を何でも聞いてくれて、本当に心の支えになったよ。お前は、しっかりしているし、才能も豊かだ。だから、俺のことを気にせずに頑張っていって欲しい。これは俺の本心さ。お前ならきっと強い人間になれると思う。そして、俺みたいな人間をつくらないようにして欲しい。

 それから、これは、直子と二人で話した時に思った事なんだけど、お前と直子はお似合いのカップルだよ。お前は男女の仲について悩んでいたようだけど、それは直子も同じだよ。こんなことは、俺が偉そうに言う事じゃないけど、二人の仲は、二人で育てていくものだと思う。お前は、ついつい深く考えすぎる癖がある。それが裏目に出て、関係をぎこちなくするんだ。だから、深い事は考えずに、楽しむ事を考えてくれ。直子は、お前の事が大好きだよ。あの様子なら、ちょっとやそっとじゃお前を見捨てないはずだ。なにせ、お前らは俺が仲裁したんだからな。

 以上のことは、俺からのお願いだ。別に守らなくてもいいけど、お前なら言わなくてもそうするだろうと信じてる。

 最後に、俺が自分の命を絶とうと思ったのは、これ以上、周りの人々に迷惑を掛けたくなかったのと、お前にもっともっと成長して欲しかったからだ。お前は、ほぼ完璧な人間だが、一つだけ大きな欠点がある。お前もうすうす気付いていると思うが、それは、人間関係についてだ。

 お前は、どんな人であろうと、人を警戒し過ぎる。傍から見れば仲が良さそうに見えても、お前は自分をオープンにしようとしないし、人に深入りしようともしない。それが個性と言われればそれまでだが、人を信頼できるようになれば、お前はもっとすごい人間になれる。直子ともうまくいくと思う。そうなれるのなら、俺のこのぼろぼろの体なんてどうなってもいい。俺には明るい未来なんてないからな。

 けれど、最後の最後に、お前は一人だけ受け入れてくれた。勿論それは、この伊藤隆さ。最後まで、支えてくれてありがとう。これからは、新しい人生を歩んでいってくれ。縁があったらあの世でまた会おう!

                                 伊藤隆より                                                                                                                                        


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