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経堂が、視点の定まらない瞳で、武琉を見つめて、…キョトン顔する。
確かにその手に捕らえた筈の獲物が、…武琉が、必死の形相で、…見つめ返す。
武琉:「今、何が起こったんだ?」/武琉:「いや、何をしたんだ?」
相変わらず、身体中の筋肉は頼りなく、…とても瞬発力が期待できる状態ではない。
それなのに、どうやって避けたんだ? 自分でも分からない内に、…身体が動いていた!
数歩後退して、なけなしの距離を稼ぐ。 …が、何時までも逃げ続けられる程の体力は無い。
再び、経堂の長身が、抱え込む様な構えで、緩緩と距離を、詰めてくる!
やがて武琉の目の前に出現する、陽炎の様に朧げな、掌サイズの、…妖精?
観事:「どうする? 武琉? 僕が、勝たせてあげようか?」