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明里:「武琉? 本当に武琉なん? ウチの事、覚えてる?」
明里は、無様な格好で縛られた侭、一目武琉の姿を確認しようと必死に身を捩る。
武琉:「ああ、…もう一寸待っててくれ、今、決着を付けて来る。」
と、強がっては見たものの、本当の所、立ってるのが精一杯だった。
身体中が頼りなくて指先にも力が入らない。大気に晒された新しい皮膚がビリビリと痛む。
白衣:「完全に身体が溶ける前に、覚醒してしまったと言う事でしょうか?」
老人:「イヤそう言う事でもなさそうだ。「経堂」(=フード男)に潰された頭が修復されておる。」
催眠術を掛けられた人牛の化物が、ふらふらと明里の方に近づいて来て。
武琉は、意を決して、一歩、…前へ出る!