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幼い頃、「自分は可哀想だ」と泣いていた武琉を助けてくれる者など誰も居なかった。
全てのモノを見返してやる為に、武琉は徒に強さを求め続けた。
我武者羅に、ただ其れだけに没頭して、全ての厄介事を有耶無耶にする為に、
それが武琉の「生きる理由」だったとも言える。
何故、人は苦しい想いをして迄、生き延びようとするのか?
諦めてしまえばきっと楽になれる筈なのに、何故、人は諦める事を恐れるのか?
高尚さとか、正義とか、大義名分とか、そう言ったウツクシイモノとは何の関わりも無く
人は、自分が誰にも気に止められる事なく、無くなってしまう事を畏れるのだ。
だから一人きりで全てを終わらせてしまう時ですら、共感を呼ぶ物語を求めるのだ。