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その生き物には、頭と、背中に、硬そうな長い毛が生えていた。
顔は裸出歯鼠に似ていない事も無いが、前歯の代わりに鋭い犬歯が唇からはみ出している、
見開いた侭の目玉は赤く充血して、タールの様に黒い瞳は溶ける様に淀んでいる。
盛り上がった瘤の様な背中と先細った長い手足、異様に発達した掌と足からは、鋭い爪が剥き出しになっていた。
大きさの比較の為に横に置かれた猟銃から目算して、身長は180cm位だろうか。
痩せ細ってアバラの浮き出た胸とメタボの様に膨らんだ腹には、幾つもの銃弾の跡が覗いている。
そして、特徴的なフサフサの尻尾が、両脚の間で力無く、包まっている。
武琉:『これは、何なんだ?』 何時の間にか武琉は、同じ事を繰り返していた。
老人:『ただの動物で無い事は明らかだ。死の間際、こいつは私に「子供を頼む」と喋ったのだから、』