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ダイニングルームでは、虚ろな表情の女性がロッキングチェアを揺らしていた。
老人:『私の娘だ、9年前に夫と娘を事故で亡くしてな、それ以来心を病んでしまった。』
武琉:『さっき、孫は誘拐されたって、言ってなかったか?』
未だ不安の治まらない明里を椅子に座らせて、落ち着かせる。
老人:『ああ、あの子が「サクラ」がウチに来たのは、今から7年位前だったか。』
武琉:『来たって、どういう意味だ?』
老人:『ある者が、何処からか赤ん坊を連れてきたのだ。…この町には「取替えっ子」の伝承があってな、妖精が人の子を連れ去り、代わりに妖精の子を置いていくのだ。
孫が死んだ事を受け入れられなかった娘は、孫は妖精に連れ去られたと信じたのだよ。』