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武琉の頭は、…その顎が、「経堂」の外骨格から剥き出しの生白い脇腹の肉に、…噛り付いていた!
武琉の頭は、依然として胴体とくっ付いていた! 「経堂」の放った水平斬りの手刀が届くよりも一瞬早く、…、
武琉は、筋肉の力を使わない歩方で、瞬間的に距離を詰めた!
足の関節を緩めて、重心を前にずらして、…倒れ込んだのだ。
二足歩行する人間は、倒れる事に対して極度に警戒する。 たとえ全身の力が尽きかかっていようとも、転ばない為に、するすると繰り出される足は、訓練次第では、通常の走法以上の速度を、発生させる。
しかも、筋肉の蹴りを使わないこの移動法は、動き出しの気配を察知されにくい!
この、動き出しを察知しにくい操体術は「経堂」の十八番とする処なのだが、…それでも「こんな状態の武琉」が、仕掛けてくるとは、予想だにしなかった。
結果、武琉の首は、「経堂」の一撃をすり抜けて、一瞬早く、「経堂」のわき腹へと辿り着く!
そして、第四形態へと「変態」させた、武琉の鋭い牙が、…、長く、吸血鬼の様に伸びた上下の鋭い犬歯が、「経堂」の、硬い第四形態の皮膚を、…食い破った!