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祖師谷:「小僧、お前に絶対的に不足しているモノが何か、教えてやろう。」
黒眼鏡の小柄な老人に内蔵されたスピーカーを通して、世界の何処かに隠れ潜んでいる祖師谷の、嬉しそうな声が聞こえてくる。
祖師谷:「それは、想像力だよ。」
祖師谷:「想いが、生命を変え、社会を変え、環境を変え、惑星を変えていくのだ。」
武琉:「意外にロマンチストだな、…おっさん、」
武琉は、辛うじて膝の震えを抑え込み、口の中に滲み出した鉄の味を、飲み下す。
満身創痍の武琉に近付いて来る「経堂」の身体が、目まぐるしく色を変えて行く。
より細く尖り、より硬く集積して、ゲル状に膨潤した肌は、白から灰に、そして、その先端部分に集中したエナメル質の結晶体が、濡れた半透明の青緑の外骨格へと、「変態」する。
武琉:「へえ、格好良いじゃねえか、」
既に「経堂」の間合いに入られているが、…武琉には、俊敏に攻撃をかわす余裕などある訳も無く、
ただ、為されるが侭に、…何気無く振り出された「経堂」の抜き手が、武琉の左腕前腕部を、尺骨ごと、すっぱりと、…切断した!