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引き摺り込まれる様な、重苦しい「妖気」が、浅い呼吸の直ぐ目の前で、弾け合う。
それはまるで、神々しい「獣」が、じゃれあう姿にも見えて、…
ミルミル内「二匹」の身体は血の色に染まって、命の歌が、幻聴の様に頭の中を統治する。
美しい赤に塗れた「彼ら」の傷痕が、不思議に<私>を納得させる。
最初から、勝ち目なんて無かったのだ。
だって所詮<過去>は、現在と、未来に塗り替えられて行くモノなのだから。
<私>は、通り過ぎた<過去>に過ぎない。
今、そしてこれから先、「武琉」の隣に寄り添って行くのは、
あのヒトの方が、きっと相応しいに、…違いないのだ。