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その、「武琉」の前に、すっと、仁美が立ちはだかった。
何時の間に? 何故止められなかった?…一瞬の内に、後悔が全身の血管を駆け巡る!
武琉:「どくんだ、仁美さん!…そいつは、仁美さんの技が通用する様な相手じゃない!」
その時には、トックに手遅れで、「経堂」の掴み掛かった手が、仁美の…
仁美の柔らかで、華奢な指が、右手のひとさし指が「経堂」の掴みかかる左手の小指に触れて、其の侭、「経堂」自身の突進力が、「経堂」自らの肘と肩の自由を奪って、…
人外の巨体が、か細い全裸の少女の片手の内に、身動きを、…封じられた!
しかし、こんなのは一瞬の芸当に過ぎない、絶対的な質量差を、何時までも止めた侭の状態で制する事は、…不可能。
仁美:「…だったら、私を護りなさい!」
仁美の言葉には、微塵の恐怖も戸惑いも、感じられない。
仁美:「武琉さん、何を躊躇ってるのかは聞きません、でも、…そんな事では「この子」に、勝てないのでしょう?」
武琉:「仁美、…さん。」
仁美:「貴方がどんな事になったとしても、必ず私が、貴方を承認してあげます。だから、…」
仁美:「しっかりしなさい!」