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喉元から脳幹をナイフで貫通されて、縦に掻っ裁かれた胴体の中身を晒しながらも、「化け物」は未だ戦闘能力を失っては居ない。
傷口は、ゲル状の体液で直ぐ様に保護されて、体の損耗を最小限に留めている。…凍結した内臓も、筋肉も、緩やかに柔軟性を取り戻しつつある。…
そして、化け物の右手は、何時の間にか、しっかりと、黒騎士の首根っこを掴んで、…その巨体を、宙吊りに持ち上げていた。
とうとう、首を護るアーマーが、…破砕音:「…バキッ!」
強化プラスチックが砕け散り、丹羽の首根っこを、殺人的な握力が直に包み込む。
丹羽:「ぐがぁあ、…くっ、…」
呼吸が妨げられて、筋肉ごと頚動脈が押し潰されて、首の骨が、…折れ、…
その刹那、「化け物」は、黒騎士の砕けた喉元のアーマーの裂け目から、その内側に零れ出す、絶命寸前の失禁の臭いを嗅ぎ取って、…
ゆっくりと、黒騎士の身体を、地面に横たえた。
丹羽:「ガハァ…ッ、…!」