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明里:「武琉?」
思い切って、私は、この「奇妙な生き物」に呼びかけてみる。
遥かに人間とは掛け離れたバランスで、長い手足、首、細長く変形した頭、ガリガリの胸とお腹、ぴんと長い耳に、大きな猫の様な瞳。
武琉が身に着けていた七五三のスーツは、サイズが合わなくてびりびりに破れてしまったらしい、今や、所々、際どい所を覆っているだけだ。
明里:「武琉?」/観事:「クルルルルゥ?」
「彼」は、切れ長の瞳を細目に開けて、…まるで猫が甘える様な鳴き声を立てる。
そう言えば、「変態」すると、人間の言葉を忘れる事もあるって、あの悪者達が言っていたっけ。
私は、恐る恐る、「彼」の顔に触れてみる。
彼は、擽ったそうに、首を竦めながら、ペロリト、…私の掌を舐めた。