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頭がグワングワンする。 口の中は、…鉄の味。
高層ビルの窓から飛び降りた所までは、覚えている。後は、どうなったのだろう?
気が付くと、私は揺れる暗い部屋の中で、武琉の腕に抱かれている様だった。
「彼」が、…武琉と呼べるのなら、だけれど。
土の匂いがする。 どうやら、此処は大型トラックの荷台の中、らしい。
野菜を積んでいた空のコンテナの山が、闇に慣れて来た視界に入ってきた。
「彼」は、どうやら眠っているらしかった。
優しく私を包み込む腕を通じて、言葉は無くても彼に敵意の無い事は伝わって来る。
もう少し、此の侭、腕の中に抱かれていても構わない、…そんな風に感じた。