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老人:「人間は、どうしたら死ぬと思う? 心臓が止まったらか?脳がモノを考え無くなったらか?」
老人:「違うな、人間の細胞は呼吸が停止した後も24時間以上生き続ける。酸素と栄養の供給がストップする事で細胞自体の活動が低下し、免疫機能が失われる事で細菌に食い尽くされるのを待つ迄の間、「人間」は行き続けているのだ。だからこそ臓器移植は有効な延命の一手段足りえる。」
武琉:「悪いが、「生物」は苦手教科だからな。 何言ってんだか、さっぱりだ。」
老人:「お前の手首は、皮膚から酸素と二酸化炭素を取り入れ、光合成機能を追加する事で自ら炭水化物を生成し、何とかこの状態で生存しようと試行錯誤しておる。此の侭放置すれば、その内原生生物にでも変身するかも知れん。」
老人:「通常人間の細胞がこれ程大きく「変態」できるのは人生で一度だけだ。受精卵から人間の形を構成する迄の間だけだ。ところがお前の細胞は本体から切り離されて尚、創意工夫を凝らして「変態」を続け、生き続けようとしている。」