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下位世界の『超』召喚獣  作者: 五月蓬
幻惑の魔王ドッペルゲンガー篇
9/55

真理眼




 霧の泉、年中霧に包まれた幻の地。


 其処に隠れる幻の館には、幻の魔王が潜むという。




 その名はドッペルゲンガー。『幻惑の魔王』と呼ばれる姿無き魔王。




 タカシ達が次に目指すのはその魔王である。


 しかし一行は今、泉には向かっていない。


 彼等が目指すのは泉とは少し離れた森にある『真実の滝』と呼ばれる滝だった。


「面倒だなぁ」

「仕方ないですよ。避けては通れない道ですし」


 どんよりした表情のタカシの顔色を気にしながら、レイが言う。


「ドッペルゲンガーの城、『影の館』を見つけるには……此処で習得できる『真理眼』という魔法が必要なんです」




 ドッペルゲンガーは幻影の魔王。その隠れ家は幻に包まれ、行き当たりばったりでは100%辿り着けないという。


 其処で必要になるのが、幻を見透かす『真理眼』という魔法なのである。




「見えてきましたよ~!」


 先いくアリアが声をあげる。

 黒い木々の道を抜けたタカシ達の目の前には、荘厳な光景が広がっていた。


「おお……!」


 景色や自然に興味がないタカシでさえ感嘆の声を漏らす。


 それはまるで壁。視界からはみ出るほどに広い横幅、見上げたら首を痛めるかも知れないほどの高さ、そんな水流が、一切の乱れも継ぎ目もない光をはじく壁となっているのだ。


「すげえ!」

「これほどの大きさとは……」

「真実の滝の周りには結界が張られているそうで……魔物湧く黒の森を抜けた者しかこの光景は見れないそうです~」

「アリアちゃんは物知りだなぁ」

『綺麗だな~!』




 感動の一同。しかし目的は観光にあらず。


「……で、真理眼はどうやって手に入れるんだ?」

「試練を乗り越える……と、町では語られてましたが」

「試練?」







 ―――そう、試練だ。




「え?」


 突如響いたのは女の声。それは滝の音にかき消されることなく、まるで心に語りかけるような声。

「ど、どちらさまですか~?」

『なになにお化け!?やだー怖いー!』

「お前もお化けみたいなもんだろ……」



 ―――コントに付き合うつもりはない


 謎の女に怒られて、一同は素直に頭を下げる。


 ―――私は真実の精霊、トゥルフ


「ちゅ……と…と…てゅるふ……?……言い辛いですね……」


 アリアがもがもが言いながら困った表情。


 ―――……じゃあとうふでいい


「何で!?本当にいいのか!?」


 レイが突っ込む。


 ―――……高校時代のあだ名だ


「精霊……それイジメられて」


 ―――お前達が真理眼を得る為に来た事は……全部お見通しだ




 精霊はレイを華麗にスルーした。どうやら高校時代の話はNGらしい。


「試練ってなんだ?」


 ―――今からお前達にはある試練を受けて貰う


「だからその内容は?」


 ―――それを成した時、真理眼は自ずと手に入る


「だから内容は?」


 ―――ちょっと黙れ!マニュアルがあるの!話は黙って聞きなさい!


「ご、ごめんなさい……」


 怒られたタカシはしゅんとしてしまう。子供か。


 ―――ふう、これから行って貰うのは「真実を見抜く」試練




 ―――この滝の中に居る私を……見つけだしてみよ




「……え?滝の中って……まさか、このデカい滝の?」


 ―――他に滝がありますか?


 タカシは溜め息混じりに肩を回す。


「面倒だから、ぶっ壊す」


 ―――ああ、言い忘れてましたが……この真実の滝は世界遺産




 ―――壊したら……どうなりますかね?




 タカシは素直に腕を引っ込めた。





「どうやって探す?」

「……素直に滝を見て回るなら、試練とは言わないですよね?」

「謎かけなら得意ですよ~!」

「やめて!」


 とりあえずの会議。流石にこの馬鹿でかい滝を全部見て回るとは考えられない。


 ―――真理眼で見るのです。見たいと願いなさい。それがコツです。


「ヒント早いな!」


 ―――とっとと秘技の伝授を終えたいのです。あと三人で今月のノルマを達成できるので。


「ノルマって何!?」


 ―――いいから目に魔力を集めるイメージで、私を見たいと願いなさい。ぶっちゃけそれが真理眼ですよ


「具体的な答え言っちゃったよ!ぶっちゃけちゃったよ!どんだけ適当だこの精霊!」




 突っ込みどころが多いが、とりあえず言われた通りにやってみる。




「見えろ~見えろ~……」


 アリアは目をギュッと細めて滝を睨む。しかし効果はないようだ。


「魔力を集める……魔力を集める……」


 レイも滝をじっと見つめる。しかし効果はないようだ。






 タカシは指で眼鏡を作って両目に当てる。そして腰をおとしてがに股で唸る。


「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん……!!」


 ―――お、大した気合い。やるわねあんた。


「流石師匠……飲み込みが早い!」




 精霊の賞賛を聞いて、レイがヒートアップする。

 当のタカシは凄い顔で叫んだ。







「……食らえ真理眼!アリアちゃんの服よ透けろッ」




 カッ!


 プシュッ!




 とうふのアクアニードル!




 水の針がタカシの目に刺さる!


「ギャアアアアアア!」


 ―――真面目にやれッ!


「真面目だよッ!」


 ―――なら私を探せ!何故、服を透かす!?そもそも服が透ける機能なんてないし!


「え~~?」


 タカシは目を押さえながら言った。








「別にお前なんか見たくないし」




 とうふ、沈黙。

レイ達も沈黙。ぶっちゃけちゃったよこの人、みたいな空気到来。


 まあみんな思っていた。別にとうふなんて見たくないし、真理眼の使い方を知った今、とうふには用なしである。


 でも一応建て前でやっていたのだ。


「なあ、もう帰っていいか?」


 遂にはタカシの帰宅宣言。とうふは無言のままである。




「みじめむきゅ」

『むくちゃんやめなさい!』


 とうふは未だに喋らない。相当なダメージを負ったようだ。


 反応がない。ただの屍のようだ。


「よし帰るか」




 もう飽きたタカシが背を向け帰ろうしたその時、ようやくとうふは口を開いた。








 ―――私は今、下着姿だ……どうだ、これでも見たくないかッ!!




 意地張ってきた!


「何だこの痴女!」

「怖いです~」

「写真に収めて売ってやろうぜむきゅ。その手のマニアもいるだろむきゅ」

『むくちゃんが可愛くない!』




 ドン引きする(?)一同。

 そんな中、歩みを止めたタカシの異変にレイが気付く。


「……師匠?」





 タカシは震えている。




「どうしました!?なにか変な……」




「フォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!」


 タカシ、謎の雄叫び!


 そしてくるりと振り返ると、目を見開き叫ぶ!




「シンリガァァァァァァァァァァァンッ!!」




 タカシの目がギラリと輝き、強烈な光を放つ!


 そして……!









「見えたッ!水色ッ!」




 タカシは真理眼をマスターした(下心)!


 タカシは心のシャッターを切った!




 ―――ふはは見たか!これが体を張った教育じゃあ!


 得意気に叫ぶとうふ。それにタカシは鼻血ダラダラで勇ましく敬礼した。


「ありがとうございました!」




 メンバーは多少引いた。







 そしてなんやかんやでパーティー全員が真理眼を習得した(適当)。


 ―――私の教育の賜物だな!




 姿を顕した真実の精霊とうふ!


 艶めかしい肢体を強調するようにポージングしながら、流水のような青い髪を靡かせる。

 勿論下着姿である。




「これでドッペルゲンガーを倒しに行けるな!」


 タカシの言葉にメンバーが頷く。


 そしてその言葉は意外にもとうふの表情を動かした。




 ―――ドッペルゲンガーだと?まさかあいつに会うために真理眼を?


「知ってるのか?」


 とうふは真面目な険しい表情でタカシ達を見つめた(顔は真面目だが下着姿)。そして口を開く。



 ―――気をつけろ。あいつを『幻』だと思うな。


「……え?どういうことだ?」




 とうふの目に陰り。何かを知るその口からは、酷く曖昧な言葉しかでなかった。




 ―――……仲間をよく知ることだ。あいつには、一人じゃ勝てないし、大勢でも勝てない。力があっても勝てないし、知恵があっても勝てない。




 ―――『真実』を見ろ。真理眼でも見えない真実を。




 タカシは聞き返そうとしたが、止めた。とうふの目は真面目に此方を捉えていた。

 それに余計な茶々をいれる気にはならなかったのだ。




「分かった。気をつける」




 こうして、魔王ドッペルゲンガーに到る手段を得たタカシ達。


 とうふに見送られて、真実の滝から去る。







 ―――ドッペルゲンガー……か




 蠢く黒い陰。


 タカシ達の前に、魔王が立ちふさがる。





だ が 下 着 姿


とうふさんは結構美人。でも残念美人。


遂にまともな(?)魔王、ドッペルゲンガー登場。今度はドア如きでは倒れないはず!


真理眼は幻や目くらましを無効にする魔法。服は透けない。滝には目くらましの結界が張ってありました。


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