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下位世界の『超』召喚獣  作者: 五月蓬
強欲の魔王マモン篇
43/55

ばかのすくつ、やなふいんき

カオスパート突入!激しく場面が切り替わります!




 バレバレの追跡の提案者、馬鹿その7、むくちゃんは、目の前を全力で走る男を追いかける!


「こら待てむきゅ!」

「ごめんなさいごめんなさい!喧嘩売ってすみませんでした!だからもうやめて!」


 格好いい感じにでてきたくせに、一瞬でボコボコにされて涙目で逃げ回るのは、狐の耳を生やした男、馬鹿その8、ルナール。それを追跡するのは、白い球体状の生き物だけでなく、不気味な青白い光。よくよく見れば人型を形成しているその光が、むくちゃんに従うように手を伸ばしている。


「た、助けて!エーデルさぁぁぁん!」

「エーデル?あの秘書の女かむきゅ!」

「バレた!」

「自供したんだろうがむきゅ!」

「だったら見逃してくれてもいいじゃないですか!」

「逃がさんむきゅ!目的を吐くまで…………指を一本ずつ折ってやるむきゅ」

「なにこの小動物、外道!殺される!」


 ルナールは本社ビルの入口をぶち破って中に飛び込む!それを追って、中に飛び込むむくちゃんと光の人型。

 泣き喚きながらビルを駆ける狐を追いかける小さい悪魔。その奇妙な追い駆けっこで、マモン商業本社ビルは混乱に陥ることになる……









   ----




「な、何が起こっているんだ……?」


 マモンは当然の疑問を口にした。

 急に目の前にスターン!と着地した黒い男。槍を背中で受け止めた時は、てっきり助けに来たヒーローかとも思った。

 しかし、魔王を名乗る黒い男は言うのである。お前を殺しに来たのだと。


 ……背中に槍が刺さっているのに気付いたのは、それから少し後の事。


 鈍感なのか、ダメージをものともしていないのか、それともただの馬鹿なのか……そんな疑問を頭の中で渦巻かせるマモンの目の前に、再び三つの影が降ってくる。


 三つの影は、着地際にマモンに槍を向けていた魔王、モーメンを押しつぶした。


 今度こそ助けが?と、思いきや……


 そのマントに王冠の陳腐な王様姿の少年は、ぎらりとその目を輝かせて、マモンを睨みつけた。


「強欲の、魔王マモンよ、覚悟しろ、我はパイモン、天才魔王」


(また変なのが出てきた……!)


 マモンは顔を引き攣らせる。


「マモンって随分と真っ黒なんですわね。想像してたのと違いますわ」

「いやいや。マモンは赤髪の魔王って聞いたっす。こいつ、真っ黒じゃないっすか」


 パイモンを名乗る魔王、その傍らには二人の魔人。まぁ、それが分かったからといって、マモンもどう反応していいのか分からない。もしかして、今、この変なのから命を狙われてる?と大体の察しはついたが、いまいち湧かない緊張感に微妙すぎる表情。


「…………貴様は……まさか……、そう言って、魔王パイモンは眼前に立つ黒い魔王に視線を送った。(マル)その男から漂うただならぬ空気、それを感じ取りパイモンは相手が自分と同じタイプの敵だということを理解した。(マル)」


 パイモンとクロードの視線が合う。


「……なんだ貴様。その気配、只者ではないな?貴様も大魔王の座を狙う魔王か?」


 クロードが不敵に笑む。こころなしか顔色が青くなってきているが気のせいだろう。何やら通じ合うものを見出したらしいクロードとパイモンは、互いにその殺気をぶつけ合うと、戦闘の構えを取る。


「貴様、何者だ。名を名乗れ」

「旦那、さっきパイモンって名乗ってたじゃないですか」

「そうか。パイモンか。覚えたぞ!」

「パイモン様、こいつ馬鹿ですわ!」

「従者に名前を教えられて勝手に納得してるっす!」

「下がれ。(マル)ロゼッタ、ゼット。(マル)こいつは……お前らには少し荷が重い」


 対峙する二人の魔王。既にマモンそっちのけである。


 そんな状態で唖然とするマモンの手をぐいと引く小さな手。ベンチに座るその手の主を、マモンはまたも唖然として凝視した。


「……君は……!眠ったはずじゃ……!?」

「ごめん…………あれ、私に効かない。…………さっきまでのは寝たふり」

「あ、そ、そうなの」

「ほっといて行こ。…………あの馬鹿っぽいの、無駄に頑丈だから」

「あ、ああ」


 マモンの能力によって、眠らされた筈のゼブブが、何事もなかったかのように起き上がり、ベンチから腰を上げ、マモンの手を引く。

 マモンは混乱しながらも、その手に引かれて公園から立ち去る。


 何故か睨み合いを始めた、馬鹿っぽい魔王二人をちらちらと気にしながら……





 そして、目的のマモンが居ないことに気づかないまま、二人の魔王は動き出す!


 はじめに駆け出したのはクロード、その手の刀、『銀月』を圧倒的なスピードでパイモン目掛けて振り抜く!

 対するパイモンは、そのスピードに僅かに驚いた表情を見せるが、その凶刃を避けることなく凝視する。


「馬鹿め!我が相棒、銀月はあらゆるものを切り裂く!」


 クロードの勝利宣言。その時、クロードの刀は既にパイモンの目の前に到達していた。




 キィン!




「な……!?」

「銀月(笑)」


 パイモンは嫌味な笑みを浮かべて、その額で刀を受け止める。クロードは驚愕の表情を浮かべ、1メートル近いバックステップで距離を取る。

 パイモンは、切られるどころか、傷一つない。


「旦那……本当にその刀、なんでも切れるんですか?」

「き、切れるよ!」

「パニクって口調変わってるじゃないですか!」

「なかなかの、スピードだけど、まだ甘い、今度は俺が、攻める番だ…………よ」

「パイモン様が……五七五七七を失敗した……!?焦っていますの!?」

「あ、焦ってないよ」

「めっちゃ焦ってんじゃないっすか!」


 クロードとパイモンは互いにその表情を伺う。そして、互いに何故かその表情を余裕あるものに作り替える。


「「焦っているな?」」


 声を揃えて得意げになる主人を見て、従者達は気づいた。


(……お互いに相手の表情見て余裕を取り戻した!)


 パイモンは言葉通り、反撃に移る!


「行くぞ……『硝子塔タワーオブグラス』!」


 パイモンの攻撃。細いガラスを編み合わせたような美しい塔が、クロードの足元から這い出す!クロードはすぐさまその音に反応し、バックステップすることで回避する。しかし、それを逃がすまいと、パイモンも追撃する。


「『菩薩合唱』」


 次は横。クロードを押しつぶすように左右から迫る黄金の掌。しかし、最初のタワーオブグラスで、パイモンの魔法スピードに『目を慣らした』クロードは、今度は慌てて回避に移るような真似はしない。その場に踏みとどまり、刀を腰の辺りまで落とす。


「『居合結界弍式』」

 

 そのスピードはパイモンの目では捉えられなかった。腰まで落とした刀は、動いた気配をまるで見せない。しかし、見える『結界』。斬撃渦巻く円状の空間。黄金の掌は、その結界に立ち入った途端に、薄い紙切れのようになって、ひらひらと地面に舞い落ちた。


「だ、旦那!やれば出来るじゃないですか!」

「そう。やればできる男、それが魔王クロード!」

「『タライ落とし』」


 カーンッ!


「ブッ!」


 クロードの頭の上から金ダライが落ちてきた。チョコカラスに褒められて有頂天だったクロードの不意を打つ一撃に、クロードは無防備なままダメージを受けた!……しかし、大したダメージではない。


「…………(笑)」 


 パイモン、嘲笑。その従者達も、クロードの間抜けな声に思わず吹き出す。


「…………不意打ちとは……姑息な真似をするものだな。魔王の恥さらしめ」


 クロードも珍しく目がマジである。恥をかかされた事は口にせずとも、相当にキレているようだ。そして、怒りに満ちた目での挑発。しかし、それに乗っかるパイモンではない。


「姑息で結構。(マル)無様な魔王クロード(笑)よりはマシだ、とその場にいる全員が思ったのだった。(マル)」

「…………!」


 クロード、顔真っ赤。刀をぎゅっと握り、滅茶苦茶パイモンを睨んでいる。


「…………か」

「……旦那?」


 そして、クロードはキレた。


「バーカ!バーカ!」

「旦那!?頭打っておかしくなっちゃいました!?子供か!」


 ガンガンと足を踏み鳴らして、クロードが「馬鹿」を連呼する!


「プッ……!パイモン様、ムキになってますわよあの魔王(笑)!馬鹿って……子供だってもっとマシな悪口位思いつきますわ!」

「可哀想になってきたっすね……苛めるの、もう止めてあげたらどうっすか?」


 パイモンの従者、ロゼッタとゼットがクスクス笑いながら、主パイモンの耳元で囁く。


「…………ない」

「…………パイモン様?どうしまして?」


 ロゼッタが異変に気付く。

 パイモンの顔を覗き込んだ彼女は、驚愕した。


「…………私は馬鹿じゃない……!私は馬鹿じゃない………!私は天才魔王、パイモンだ……!だから馬鹿じゃない……!」


 パイモンが物凄い形相でキレていた。今まで、見たこともない勢いで。


「パ、パイモン様……?あんな子供の悪口を間に受けることありませんわ。パイモン様が天才であることは私達が知って……」

「ロゼッタ!……ヤバいっす!……今回、かなりキテるっすよ!」

「…………馬鹿が…………私を…………馬鹿って…………いうなッ!!」




 パイモンがその身に宿す魔力を爆発させる!そのやる気のなさそうな目が、ぎらりと輝き、その姿を、少年のものから次第に変化させていく……!


 マントの下からは黒い翼が顔を出し、その額には不気味な瞳が浮かび上がる……だらりと腕を垂らし、その小さな体がふわりと空中に浮かび上がる。


「パ、パイモン様がキレましたわ……!何年ぶり!?」

「ヤバいっすって!クロードさん!今すぐ謝ってください!この人、キレたら加減知らないんっすから!」


 怒り狂うパイモンを前に、クロードは余裕を取り戻しにやりと笑った。


「精神も未熟なのか……馬鹿が」

「………………クケッ!」


 パイモンの口が不気味に歪む。クロードの笑み、それは決してパイモンに対する侮りだけが秘められたものではなかった。それはまるで相手を認めたかのような、喜びに満ちた目。


「面白い…………!面白いぞ…………!その力、お前は俺のライバルに相応しい……!」

「旦那!あんたどれだけライバル作れば気が済むんですか!?」


 チョコカラスのツッコミはスルーして、銀月を構えるクロード。


「俺も本気を出すとしよう…………」

「え?旦那?まさかまだ力を隠して…………!?」

「ハァッ!」


 クロードの雄叫びが響きわたる!チョコカラスも、パイモンの従者もゴクリと息を飲む。





 …………謎の間。




「「「掛け声だけかよッ!!」」」

「分からないのか?今の俺は…………さっきの十倍強い……!」

「旦那!見栄はらんでください!格好悪いです!」

「…………残念。私は二十倍強い」

「パイモン様も対抗しないでくださいまし!」

「ならば俺は三十倍」

「四十倍」

「五十倍」

「あんたら二人共子供かッ!?」




「「うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」




 いきなり激突するクロードとパイモン!


「いきなり始めんな!」


 滅茶苦茶に飛び回りながら激しく火花を散らす二人の魔王は、形振り構わず暴れ回る!その激しい戦火は徐々に動き始め……









   ----




 バレバレの追跡をしていたが、今は孤児院の前で待機する、馬鹿の巣窟から運良く逃れていた馬鹿その9、アリアがぽかーんと彼方を見つめる。


「…………随分と騒がしいですね~……いや、気のせいでしょうか?」


 空を見上げ、立ち上がる煙と暴れ回る光を見つめる。


「……気のせいですね~」


 アリアは壁にもたれ掛かり、ふぅ~と一息。

 いや、気のせいじゃないだろ!と突っ込む人間はここにはいない。


 しかし実際、このときは騒がしく無かった。いや、まだマシだったと言える。




 爆音と共に、マモン商業本社ビルから黒煙が上がるのは、あと数分後のお話……





マモンを狙う魔王が集結!事態は収集のつかないパニックへと向かう!そして、その結末は、マモン商業本社ビルへと向かう……?




過去に登場した、まだやられていない魔王の一斉登場ですw そして、もうマモンさんあんまり関係ない事態に陥ってますねw 文字通り収集のつかないことになっちゃってますw 

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