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下位世界の『超』召喚獣  作者: 五月蓬
蝕みの魔王マゴット篇
33/55

修行、精霊、必殺技?

修行編!少し長めになる予定です!




「必殺技とか必要だと思うんだ」

「突然何を言い出すんですか師匠」


 魔王パイモンとの接触で、タカシはとある結論に至った!


「俺、パンチとかしかしてないし……何か格好いい必殺技があるべき!相手は一撃で死ぬ!みたいな」


 集団食中毒のような何かによって伸びていたパーティーもなんとか復活し、パイモンの一件をタカシとアリアから詳しく聞いて事情も理解した。


「…………だがまぁパイモンの言葉の意味をそう捉えるのもありむきゅ」


 むくちゃんは至って真面目に考える。


「要はタカシ、お前は有り余る力を余すことなく使えていないということむきゅ。確かにこの世界の存在に比べて圧倒的に強靭な肉体と力もお前の武器むきゅ。しかし、何よりも注目すべきはその……『神力制御』とかいうお前の世界独特の技術による圧倒的魔力量だと思うむきゅ」

「ああ、そういえばこっちの人間は知らんのか。あっちでは自然と身につくものなんだけどなぁ」


 『神力制御』、それはタカシの世界ではごく普通とされてきたという謎めいた技術。普段から微量溢れ出す魔力を、完全に押し込めて普段は覆い隠し、いざというときはケタ違いの魔力を捻り出すという技術らしい。


「お前のその有り余る魔力を有効に使えば……あのパイモンの鉄壁の守りを打ち破る……それどころか使い方さえ良ければ全ての魔王に有効打を与えることができるむきゅ」

「それがなければ?」

「『確実』に、攻略できない魔王が少なくとも一人いるむきゅ」

「………………リヴァイアサン」


 ゼブブの呟き。それにむくちゃんは軽く頷く。


「一人、いや一匹と言うべきかむきゅ。一切の打撃を受け付けない……最強の防御力を誇る魔王がいるむきゅ。そいつの名はリヴァイアサン。最大にして最強の魔王むきゅ」

「最大?でかいのか?」

「山みたいなもんむきゅ。本気になれば、大陸一つは沈める化け物むきゅ」

「へぇ。島一つなら俺もいけるけどなぁ……大陸もあっちでは沈められる奴は結構いたなぁ」

「…………お前、どんな世界に住んでたむきゅ?」


 さらりととんでもないことを吐くタカシに、むくちゃんはかなりドン引きする。島や大陸を沈められる奴が結構いるってどんな世界だよ。


「……まぁ、お前の世界の話は置いておいて……確かにお前の力の有効利用を考えるのは一つの手むきゅ。…………俺も持ってる力を適当に振り回すだけだったからなむきゅ。少し自分のことを考えるのもありかもむきゅ」


 そしてむくちゃんはパーティーメンバーを見回しつつ、ふむと頷く。


「アリア、お前は白魔術師のジョブを選んではいるが……お前のスピードとパワーはもっと生かしどころがあると思うむきゅ」

「え?…………あ、ああ……はい」


 何故か素っ気ない返事を返すアリア。


「他にはミリー、お前意外と戦えるだろむきゅ?何か変な力使えるようになってないかむきゅ?」

『ええ?知らんし。私、ノリで動いてるから!』

「…………じゃあ、それを思い通りに出せるようにしたらいいむきゅ」

『そしたらむくちゃんをもっとボコボコに出来るね!』

「お前もう何もすんな」


 意外と乗り気な悪霊ミリー。


「ゼブブは…………よくわからんが、とにかくこのパーティー全員、何かしらパワーアップする余地はあるということむきゅ!」

「なあ、俺は……?」


 レイの問いかけは軽くスルーし、むくちゃんはタカシの修行案に賛成の意を述べる!


『あ!そしてちょうどいいところにあんな看板が!』




『貴方の才能開花させます。パワーアップイベントがあるよ! この先、精霊リベルの泉』




 なんというご都合主義!しかし、これに乗らない手はないね!

 タカシ達はこれに乗っかる事にした!









   ----




「精霊って、またあんなのがいるのかなぁ(ドッペルゲンガー篇参照)」

「…………あの看板からするとそうっぽいかもなむきゅ」


 真実を見抜く魔法の眼、『心理眼』を伝授した精霊トゥルフ(通称とうふ)を思い出し、何か気分が萎える一同。あんなのがまた出てくるのか、と思うとなんだかあんまり緊張感もあったものでもない。


「まあ、ちゃちゃっとパワーアップできたらいいんだけどな」




 ――――おやおや、随分とヌルい事を言うものだね




 精霊リベルの泉に向かう道中、別段見通しも悪くない比較的荒れていない道で、突如響く声。




 ――――う~ん、心理眼を持っているということは、トゥルフとは会ったんだね




「精霊?まだ泉にもついてないのに出てくるんですか?」

「また脱ぐのか?」

「お前、そればっかりやめろむきゅ」




 ――――あのとうふ女とは一緒にしないで欲しいな


 ――――大方、表の看板に釣られてやってきたんだろうけど


 ――――優しく案内するほどに、私は甘い精霊でもないよ?


 ――――あんな立て札でもしないとさ、ビビってみんな来ないんだよ




「ビビって?」




 ――――ああ、説明はしないよ。グロ注意ってところだしね


 ――――それでも見たいなら見てもいい。そこらでハエの集る場所を探せばいい




 ぞわりと背筋に走る悪寒。それと同時に立ち込める白い霧。




 ――――まぁ、今なら引き返しても構わないよ


 ――――失敗したら……まぁ、自主規制状態になるからね




 ――――それでも受けるのならば、一人一つの扉を選んで




 ぼんやりと霧の中から浮かび上がるのは六つの扉。そして響きわたる精霊の声。




 ――――『解放の試練』、自らに眠る力を解放する……要はパワーアップイベントだね


 ――――失敗は『死』。それでも力が欲しいなら、挑んでいくといい


 ――――その時は歓迎しよう


 ――――この私、精霊リベルがね……




 タカシ達が顔を見合わせる。


「もしかして、真面目な精霊なのか?」

「まあ、あいつとは違うみたいだむきゅ」


 命懸けの試練、その言葉には僅かに戸惑いを覚える。一体この扉の先には何が待ち受けているのか?


『……大丈夫かな。危ないんじゃない?』

「…………無理して危ない目に会う必要はないと思う」


 ミリーの不安の声とゼブブの否定的な言葉。


「…………じゃあ、俺は行ってくるわ」

「俺も行きます!」

「タカシさん!?レイさん!?本気ですか!?」


 驚くアリアに男二人はキョトンとした様子で顔を見合わせる。そして、非常にのほほんとした表情で手を振った。


「大丈夫大丈夫。ちょっと待っててくれ。ちゃちゃっと済ませてくるから」

「むしろ、あんな精霊じゃなくて信憑性があるしな。行かないメンバーは戻っててくれ」


 そう言い残して、タカシとレイは一つずつ扉を選んで先へ進む。すると二人が入った扉はふっと霧に溶け込むように消えてしまった。




 ――――お二人様ご案内……さて、残る四人はどうするかな?




 精霊リベルの声が響く。


「…………わ、私は……」


 言い淀むアリアは何かに戸惑っているようで、珍しく困惑の表情を浮かべる。扉から後ずさるようにするその動きからは、扉をくぐることを拒んでいる意思が感じ取れる。


「…………はぁ。私も行く……」


 それに気付かぬ様子で、溜め息混じりにゼブブが進む。


「ゼブブちゃん!?本当に行くんですか!?」

「…………タカシもレイも行っちゃったし……私も行った方がいいかと思って。…………でも、嫌なら止めておいたほうがいいよ。扉の向こうから、嫌な色の魔力が見えたから」


 ゼブブも扉を潜り、扉が霧に消える。


「もう……みんな軽すぎますよ!私は……」

「…………アリア。どうやら引き返すのも一苦労みたいだむきゅ」

「え?」




 ぞわぞわぞわっ!


 背後から迫るのは黒い絨毯。

 小さな黒い何かが後ろの地面を埋め尽くすように迫っている。


「む、虫!?」

「薄々は思っていたむきゅ。あの看板に釣られた時点でアウトなんじゃないか、とむきゅ。…………ノルマ回収の為かむきゅ?」


 精霊トゥルフの語っていた『ノルマ』。精霊が訪ねてきた者に伝授する秘法は、月に達成すべきノルマがあるという。それは同じ精霊のリベルにも当てはまることなのは違いない。




 ――――……まぁ、悪く思わないで欲しいな。こちらも圧力が掛かってるんでね


 ――――私の試練の場合は下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、位の気概でやってるんでね


 ――――でも、安心していいよ。一人成功すれば、それだけで私の今月のノルマは達成だから


 ――――だけど保険に君達は逃がさない。扉に入らなくても構わないけどね


 ――――そこらでハエに集られる事になっても構わないのなら




「脅迫とは……とんだ精霊もいたもんだなむきゅ。ま、どうせ俺は入るつもりだったから……構わないけどなむきゅ」

「あ、むくちゃんまで!!」

『う~、私、虫苦手……!私も入っちゃお!』

「ミリーちゃん!」


 むくちゃん、ミリーも扉に入る。

 アリアはオロオロと後ろと前を交互に見ると、う~、と唸って、迷った挙句に前に進む。


「私も虫はダメなんです!」


 全部の扉が閉ざされ、霧に消える。




 ――――六名様、ご案内~









   ----




 リベルの泉、その傍らに立つ小屋の中にて、その女、精霊リベルは椅子に腰掛け本を捲る。


「中々の逸材を六人…………今日は幸先いいね」

「リベルの姉御!じゃあ、あっしがあいつら全員の試練を受け持っていいですかい?」


 その傍らには黒い影。言葉通りに黒い何かがそこに立っている。


「…………いや、一人……いや二人だけ私に渡せ。個人的に興味がある」

「じゃあ他は姉御の指示通りにあっしが相手すればよろしいんですね?」

「ああ、頼むよマゴット。ちなみに彼らは巷で噂の『魔王殺し』。せいぜい殺されないように気を付けるんだね、魔王君」

「マジですかい?…………『元』魔王って言い訳は通じますかね?」

「さあ?」

「さあ?って……まあ、姉御のこと、信用してますからね!あっしを止めないってことは、そこまでヤバくはないと信じてますからね!」


 黒い影、元魔王マゴットはぞわぞわと分裂するかのように消えていく。それを見送り、本を閉じるとリベルは「よっこらせ」と声を漏らしながら立ち上がった。


「さぁて、早速始めますかね。……未来ある若者の才能開発を」





 精霊リベルはくいっとメガネを持ち上げて、にやりと笑う。その目は奇妙な星のような文様を浮かび上がらせる。その目に映るものは何か?


 精霊リベルの『解放の試練』が幕を開ける。





精霊リベルの試練に突入!その傍らには魔王の姿が?


レイ「そういえば、師匠師匠って言ってるけど、俺、師匠に何も教わってないですよね?」

タカシ「だって、俺感覚でやってるもの」


パイモン戦を反省し、しかし的はずれ(?)な答えで新たな力を身に付けに、ご都合主義な精霊の試練にホイホイ釣られてしまったタカシ達。果たして試練を乗り切れるのか!?

次回、パーティー一人一人が試練に挑む!

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