魔王パイモン
ルール:パイモンを感動させたら勝ち
「芸でもなんでも構いませんわ!」
「パイモン様を感動させてみるっす!」
「パイモンは、感動でしか、殺せない、心動かす、心を魅せよ。(マル)パイモン解説の一句。(マル)」
魔王パイモンとその配下、ロゼッタとゼットが武器をくるくる操り見事な舞を見せる。構えた武器で戦うつもりはさらさら無いようだ。
「つまりお前を感動させる芸をしろ、と?」
「一言一句間違い無し(褒めて遣わす)。(マル)」
「(褒めて遣わす)って何!?なんか面倒だし自由だな!……師匠、こんなのに付き合っ……」
レイが面倒臭そうな顔でタカシを振り返る……
「なんでやねん……なんでやねん……」
ビシッ!ビシッ!
スナップを利かせた手のスイング。それを何度か試したあと、タカシはぐっと拳を握った。
「……よし!」
「ネタを披露するつもりなんですか!?」
「駄目なのか?」
「いや、別に駄目では……でも、なんでやる気なのか知りませんが……なんで一人で突っ込みの練習してるんですか?突っ込みだけじゃ何もできないのに……」「お前がボケてくれるんじゃないのか?」
「俺は嫌です(キッパリ)」
レイは即答した。
「ちょっ……!お前、師匠を……というか断るにしたって、『えー?俺には無理ですよー!』とかさ、一歩引いた感じで……」
「嫌なもんは嫌です(凄く嫌そうな顔)」
「お、おお……悪かったよ。でも、その顔やめろよ……本気で傷付くわ」
あからさまに拒絶され、タカシは軽くヘコんで後ろに控える他の仲間達に引きつり気味の笑顔で訪ねる。
「じゃ……じゃあ誰か俺と組んでくれる……」
みんな凄く嫌そうな顔をしていました。
タカシは道の隅で体育座りで膝に顔をうずめた。
「タカシさん、拗ねちゃいましたよ」
「知らんむきゅ」
「…………可哀想」
「じゃあゼブブが付き合うかむきゅ?」
「それはない」
『ゼブブちゃん答えるの早っ!』
「まあ、構うのも面倒ですし、何か方法を考えましょう!」
さり気ない……さり気なくもないアリアのエグい追い討ちで、タカシ涙目!
もう死んだように動かないタカシを放置し、他のメンバーはひそひそと話し合う。
「どうします?感動させるって……具体的に何をやればいいんでしょう?」
「付き合う必要もないだろ?相手のペースに惑わされるな」
『でも、タカシ君の攻撃が全く効いてないんだよ?どうやって倒すの?』
「何か打撃に対する耐性でも持ってるのかもな、むきゅ」
戦うのもありかもしれない。タカシの攻撃を耐えたのも、もしかしたら偶然かもしれない。しかし、もし仮に攻撃が通用しない……パイモンの言葉通りに「感動でしか倒せない」(その原理もわからないが)ならば、ここは素直にその方向で策を練るのが吉と一行は考える。
「……芸術的な何かを作ってみます?」
アリアの突然の提案に、全員が「何を言ってるんだこいつは」みたいな表情をする。しかし、そういうところには疎いアリアはスルーして胸をドンと叩く。
「一流パティシエのこの私の!皆さんに感動の涙を流させるこの私の出番でしょう!」
「何を血迷ったことを言っているんだお前は!?」
確かに全員泣いた。しかし、それはあまりの苦しみに耐え切れずに泣いただけである。無駄なところでポジティブなアリアに、ドン引きする一同。ゼブブに至っては、二度の拷問に引き続き、三回目の地獄に既に顔真っ青状態。アリアのアレ(名前を呼ぶことさえおぞましい)は食べなくても近くの臭いだけで精神をかき回される。正直、近くに置いて欲しくないレベルである。
しかし、胃血流パティシエだけはよく言ったものだとレイは感心する。確かに胃から血が流れるかと思ったし。
「レイさん。今、凄く失礼なこと考えてませんでした?」
「いいや。失礼なことは考えてない」
だって、事実だもの。
「とにかく!私の手作りお菓子を上げれば感動間違いなしですよね!」
猛反対仕掛けて、しかし一同は思う。
……アレ食わせれば一発で倒せるんじゃないか、と。もちろん感動抜きで。ただの毒殺だが。
「……どうせ嫌だと言っても作るんだ。やらせて置けばいいかな?」
「……距離を置ける言い訳を考えてからにしろむきゅ。あの臭い、三日は飯が食えなくなるむきゅ」
「こわいこわいこわいこわいこわいこわい……」
『ゼブブちゃんトラウマになってるよ!やめようよ!』
それでも反対意見が多い。正直見たくもない、それが全員の本音である。
勝利と平穏を天秤にかける。戦線離脱のタカシと元凶アリアを除く四人の決断は……
「よっし!早速作っちゃいましょう!」
『「「「やめて!」」」』
……決断を待たずしてアリアが調理器具で地獄の魔法陣を展開した。
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「出来ました!」
既に異臭。
「どうぞ召し上がれ!」
美食家が一目見たら「女将を呼べ!」と怒鳴り出しそうなレベルの何かがパイモンの前に差し出される。
「あ、あなた毒を盛る気ですの!?」
「いやロゼッタ、これ毒なんてレベルじゃないっす!なんかヤバイ魔力がもんもんと湧き出てるっす!」
「ええ、たっぷり毒と魔力を込めました!……甘く癖になる毒と、愛という名の魔力を……ね♪」
悪魔苦臭になる毒と、悪意というなの魔力…………なんというものを盛ってくれたのでしょう。
「パイモン様食べちゃダメですわ!死にますわ!」
「やっぱり私のお菓子作りの腕は感動の域に達しているようですね……パイモンさんも感動で倒せるようですよ」
「そういう意味じゃないですわ!食中毒で死ぬって話をしてますの!」
感動以外でも死ぬのか~、と一同が感心し、ロゼッタが必死でアリアを遠ざけようとする中……
スッ……
「パ、パイモン様!?」
パイモンはゆっくりとアリアのクッキーに手を伸ばした。
「…………女子から、初めてもらう、贈り物、戴かずして、何が男か。(マル)……戴くぞ(感激)。(マル)」
「今(感激)って言ったぞ!?」
「(感動)じゃないからノーカンだ(誤魔化せて安心)。(マル)」
「…………もう突っ込まんぞ」
パイモンがその異物を手に取り、メリィッ!と食らいつく!
「!(エクスクラメーションマークまたは感嘆符)」
パイモンの目がぎょろりと見開かれる!
「……美味(あまりの酷さに対する同情)。(マル)」
「た、耐えた!?」
「美味しいですか?じゃあ、感動してくれました?」
パイモンはよろめくことなく、平然とした表情で呟いた。しかし本音はダダ漏れである。そういう都合の悪いことには耳が働かないのはさすがアリアと言ったところか。
「これで私が感動するなんて、勘違いしたらい『かんどう』(笑)」
「駄洒落!?」
怖るべし、魔王パイモン。……まさか苦鬼を耐えるとは、とレイ達は驚きを隠せずにはいられない。正直、タカシのパンチを耐えたよりも、こっちの方が驚いたと言っても過言ではない。そういえばタカシはいつまで落ち込んでいるのだろう?
「どうした?(クエスチョンマークまたは疑問符)もう降参か?(クエ(以下略」
「くっ……!」
アリアが顔をしかめる。
しかし、その顔にはすぐに笑みが浮かび上がる!
「……燃えるじゃないですか……!いいでしょう!こうなったら私の全レパートリーをもって……絶対にあなたの唸らせて見せます!」
一同絶句。
「い、いや(焦)…………料理では、感動しないと、思います。(マル)」
「字余りですよ!焦っていますね!嘘がバレバレですよ!私に倒されてしまうのではないかと思って、慌てていますね!」
「違うから!それは絶対、違うから!(必死)パイモンは、冗談抜きで、やられない、だからお菓子は、やめてください!(懇願)」
「いいでしょう!あなたがお菓子で感動しないと言うのなら…………その凝り固まった精神を私がぶち壊します!」
「そんなの絶対おかしいよ!」
「お菓子だけにですか?」
「黙れ悪魔!お前いい加減にしろ!(素)」
……効いてないのは嘘だった。めっちゃ効いていた。
アリアはどこからともなく取り出したフライパンとフライ返しを手に、格好いい決めポーズを決める!
「愛込めた、お菓子作りで、イチコロよ!魔王パイモン、覚悟しなさい!」
「五七五七七!?」
パイモンと対峙するアリア!彼女は後ろを振り向き、レイ達に視線を向けると優しく微笑んだ。
「私、絶対に勝ちます!私が勝ったら…………みんなでお菓子パーティーしましょう!」
『「「「パイモン頑張れ!超頑張れ!」」」』
死亡フラグ(みんなの)を立てて、アリアが腕を振るう!
「アリアのマジカルクッキング、はっじまるよ~♪」
「やめろォ!(必死)」
アリアの魔血狩苦禁愚、はっじまるよ~♪
次回、クッキングバトル回!(?)
アリアの責め苦(?)にパイモンは耐えられるのか!?みんなはお菓子地獄から逃れられるのか!?果たして当たり料理は出てくるのか!?まずないけどね!パイモンが感動するのが先か、それとも毒殺されるのが先か!?
クロード「む、巨大な魔力を感じたぞ……!……面白い!」
むくちゃん「お前もう出てくんなむきゅ」
ある意味アリア回なパイモン篇、次回完結!?
ちなみに突っ込みの殆どはレイ。