表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下位世界の『超』召喚獣  作者: 五月蓬
天才魔王パイモン篇
30/55

道中-遭遇-天才魔王?

新章突入!割とどうでもいい章かも?でも意外と重要?その位にどうでもいいようでズレまくりな魔王登場!





 タカシ達が次に目指す魔王は……


「此処からなら……マモンの奴が一番いいむきゅね」


 むくちゃんの提案で、強欲の魔王マモンに決定する。


「マモンは多分気分良く倒せる筈むきゅ。十年近く前に見た時は、人間の『金』という文化に溺れる程に惚れ込んで、金稼ぎの為に悪逆非道な行いを続けていたむきゅ」

「いやぁ、むくが居ると何だかんだで魔王インフォが手に入って何気に便利だな」

「……ってか、十年って……むくちゃん何歳ですか?」

「…………確か、サタンだのバアルだのが絡んだ話になると……千年近く前生まれか?」


 レイが推測する。

 むくちゃんの真名は兎に角、その生まれなどは既にタカシ達にもしっかりと話した。案外すんなり受け入れたタカシ達。袋3つ分の解放、通常の魔王の三倍以上の力を解放させ、「俺にはあと222倍のパワーアップが残っている」と伝えたところ、タカシとゼブブは「アリアのクッキーの方が万倍怖い」の一点張り。むくちゃんは相変わらずの主張を理解しかねたが、アリアの「しょうがないですね~……じゃあ作りますよ!」という発言により、クッキー試食会が始まることに。

 ちなみにタカシとゼブブはむくちゃんが力を見せた時はまるで怯えていなかったのに、試食会が決まるとまるで絶望のどん底に落とされたかのような真っ青な顔をしていた。


 何故かローブの下から出てくる調理器具を操り、アリアは瞬く間に作り上げる。


 恐怖の権化、苦鬼クッキーを……


 パーティーは一度、アリアを除いて全滅した。危ないところだった。


 こうして、大きすぎる力に悩むむくちゃんは完全に立ち直ったのである。


 恐怖を語ってすまんかった。俺も今まで真の恐怖を知らなかったようだ、と。


 確かにそれは、名も無き大魔王の、万倍は下らない恐怖と魔力を秘めていたという……

 むくちゃんは、こいつが俺の時代に居たら、間違いなく最強だった、と語る




……と、そんな貴重な体験をしつつ、一行は整備された道を行く。


「ええ!?じゃあむくちゃん千歳超えてるんですか!?」

「いや……力を封印するのに器を何回も作り替えてるから……この体に転生してからは十年と経ってないむきゅ」

「でも精神的には千歳ですよね長老!」

「長老いうなむきゅ!」

「長老!」

「……長老」

「お前ら……!むきゅ」


 タカシ達にからかわれながらも、その方が気楽でむくちゃんは奇妙な嬉しささえ感じていた。


 このバカどもに誘われたのは奇跡だな……


 そう思いつつ、この偶然に感謝する。




「長老!長老!」

「長老!長老!」


 バシ!バシ!


「長老!長老!」

『長老!長老!』


 バシバシバシバシバシバシバシ!


『長老!長老!』


バシバシバシバシバシバシバシバシバシバシ!


「……ってコラァッ!!さっきから何故殴るむきゅ!?」

『ごめーん。勢いでつい……』

「謝るならその頭に振り下ろしてる手を止めろむきゅ!」


 ……まあ、ちょっと悪ふざけが過ぎるのは問題だが。







   ----




「それにしても……平和ですねぇ」

「此処って本当に魔王の城に到る道なのか?」


 綺麗に舗装された道を進みながら、アリアとレイが辺りを見渡す。しかし魔物の姿はなく、今までも一回も遭遇していない。


「偶々魔物がいない……なんて事はないだろうむきゅ。マモンの罠か、それとも何かの意図か……少なくとも何かが絡んでいるのは確かむきゅ」

「まあ居ようが居まいが一緒だが」


 気にはなるものの、それ程普段とは変わらないとタカシ達はのんびり歩き続ける。




 すると思いの外、その疑問の原因は、すぐさま彼らの目の前に現れた。


「ん?誰か居る?」


 目の前には、背を向け立ち止まる三人の人。なにやらひそひそ話している。

 真ん中には赤いマントに金の冠を頭に乗せた背の低い少年。左には長身の女。緑色のポニーテールを垂らし、大胆に背中を開いた服、短いスカート、中々に美しい肢体を見せ付けるその女の手には美しい緑の宝石を乗せた杖が握られている。右には大剣を背負う細身の男。赤い長髪を垂らして、白い鎧を身につけている。鎧や服に覆われてはいるものの、その上からでも弱々しい体つきが分かる。正直、背中の大剣の似合わない男だ。


「流石はパイモン様!その圧倒的強さ!まさに『天才』の名に相応しい実力ですわ!」


 女が真ん中の少年にぴとっと寄り添う。


「しかも聡明なパイモン様!まさに天才!こりゃマモンも楽勝っすね!」


 細身の男が手もみしながら少年にすり寄る。




「なんだこいつら……マモンとか言ってるし……勇者か?」

「明らかに媚びてる……」

「勇者はこんなのしかいないんですか?」

「おいアリア。それじゃ俺まで変人みたいに聞こえるだろ」


 ひそひそと密談を始めるタカシ達。そんな中、怪訝な表情でむくちゃんが少年の背中を見つめる。


「いやお前ら……パイモンって…………」

「俺達は、背後を取った、ハズだった、しかしあいつは、気付いていたのだ。五七五七七、お前らの心の一句。(マル)」


 突如声を発したのは少年。


「え?なんて?」


 タカシ達は一瞬理解できなかった。その少年、パイモンはゆっくりと振り向き、その素顔を晒した。その瞬間、タカシ達は即座にその正体を理解する。


「我が名はパイモン。(マル)天より才を賜った……大魔王と成るべき魔王。(マル)今の趣味は……人間文化の探求だ。(マル)」


 パーマのかかった銀髪に、右は赤、左は青のオッドアイ。白っぽい肌の顔はまんま子供のようにあどけなく、何処か中性的な可愛らしいものだ。そしてその正体を示す、額に三本伸びる真っ直ぐな白銀の角。


「何だコイツ!また面倒臭そうなのだな!『マル』ってなんだ!?」

「何だ人間、知らんのか。(マル)」


 魔王パイモンは、フンと鼻で笑うとどや顔で胸を張る。


「句点だ。(マル)」

「句点は声に出して読まねーよ!馬鹿だこの魔王も!」


 瞬間、グイッとタカシに詰め寄る女。


「無礼な!パイモン様が馬鹿!?凡庸な人間にはパイモン様の天才的なセンスが分からないのかしら!?ま、無理もないですわね!だから凡庸なんですのよ!」

「お、おお~う……む、胸が……!」


 女の豊満な胸が押し当てられ、タカシ赤面!こういうイベントにはタカシは慣れていないのだ!


「……離れて」


 タカシに詰め寄る女に、ゼブブが何時の間にか取り出した刀を突き付ける。タカシはびくりと体を震わせ、ゼブブの表情を伺った。


「……あれ?ゼブブちゃんもしかして怒ってる?」

「…………怒ってない」


 明らかにムスッとした様子のゼブブ。刀を向けられても、全く動じない女を睨んでいる。


「…………タカシは緊張感が足りなさすぎ。……敵意を向けられてるのに……」


 もそもそと不満げに呟くゼブブだったが、急に眉をぴくりと動かし口を結ぶ。そして、ばっと身を引くと、細身の男を睨みつけた。


「お嬢さん、確かにうちのが因縁フッカケたのは悪かったっすけども……武器を向けるのは感心できないっすねぇ?」


 男は大剣を片手で握っていた。さっきまでは背中に背負っていたはずの大剣を。その構えのスピード、片手で身の丈程の大きさの大剣を握る腕力に、レイが、アリアが、武器を構える。

 すると女もふわりと飛び退き、その装飾眩しい杖を構えた。


「面白いですわ。高々凡庸な人間が……パイモン様とその配下たる私達に楯突くなんて!」

「……口ばっかり達者だね」

「……生意気な餓鬼ですこと!」


 両陣営の睨み合い。それを制したのは、両陣営のリーダーだった。


「お前達、野蛮な真似は、辞めたまえ。五七五、心の一句。(マル)」

「まあまあみんな落ち着けよ」


 パイモンとタカシが互いに顔を見合わせる。そのリーダー同士の様子を見て、全員が武器を引いた。

 暫くの間静かに睨み合い、やがてタカシが口を開く。


「悪かったな。喧嘩売って」

「此方こそ申し訳ない。(マル)長旅で疲れて部下も気が立っているようだ。(マル)…………此処は文化的に話を……」




 ミシィ!


 全員が気を緩めたその瞬間の事だった。

 タカシの拳がパイモンの顔面にめり込む!




「悪いな。魔王はぶっ飛ばす!」

「し、師匠ーーーッ!いきなり不意打ちなんて外道すぎますッ!」




 タカシの攻撃で、パイモンが勢いよく吹き飛ぶ!


 ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッ!


 地に足を着いたまま、地面を走るように後ろに吹き飛ぶパイモンは見事に地面に二本の線と土煙を残して直立不動で停止する!


「パ、パイモン様ァァァァ!」

「ご無事っすかァ!?」


 魔王パイモンの二人の部下が、激しく後退した主に駆け寄る。


「タカシ……流石にあれは……」

「お前は最近外道が過ぎるむきゅ」

「流石にあれは終わりましたね……」

『ひどーい』




 仲間からも非難湧くなか、タカシはじっとパイモンを見ていた。何故かその口元には笑みが浮かび始める。


 それに気付き、その視線を追う一同は目を疑った。


『…………むくちゃん。パイモンってどんな魔王なの?』

「……最近成り上がった魔王だと聞いてるむきゅ。詳しいことは知らないむきゅ」







「良いパンチだ(感心)。(マル)しかし、魔王パイモンは膝を着かなかった。(マル)魔王にパンチを打ち込んだ男は驚愕でただただ立ち尽くす。(マル)」




 魔王パイモンは膝を着かない。無表情でただ立ち続ける。

 パンチを受けた筈には傷一つなく、まるで応えた様子が見えなかった。




「タカシ……手加減した?」


 ゼブブの質問に、タカシは首を横に振る。

 アリアは俄かに信じがたい事実を、確認するかのように口にする。


「もしかして…………あの人、強いんですか?」

「馬鹿みたいだが……間違いないだろ」




 魔王パイモン。道すがら出会った冠マントのふざけた魔王。タカシ達は改めて、敵意を向けて構える。




「暴力では、意志では、魔王パイモンを動かすことは適わなかった。(マル)我が身を突き動かすもの、それは…………『感動』のみ。(マル)」


 面倒な言い回しと共に、パイモンが前にでる。それに続くように女がブン!と杖を振る。


「流石はパイモン様!私はそんなパイモン様の右腕……ロゼッタですわ!」


 続いて細身の男が大剣を構える。


「パイモン様に楯突く愚かさ、其の身に刻んでやるっす!俺はパイモン様が右腕、ゼットっす!」




「「我等、パイモン二柱魔人!そして!」」




「我が名はパイモン。(マル)『天才』の称号を持つ魔王。(マル)そして、芸術と感動に生きる最も優美で知的な文化的魔王。(マル)」




 マントを広げ、パイモンが立ち塞がる。

 魔王マモンに到る前の思わぬ接触。『天才』パイモンは思わぬ言葉で襲い来る!




「さあ来いよ、私を感動、させてみよ。(マル)」







「…………はぁ?」



 魔王パイモンが現れた!





強敵現る!?


通り道でエンカウントした謎の魔王、パイモン登場!


タカシのパンチが効かない程度の実力!


クロード「ふん……しかしその程度ではタカシのライバルを語る程ではないな!」

チョコカラス「旦那は一発で倒れたでしょうが」

タカシ「お前はポッと出のキャラの癖に後書きの度に一々出てくるつもりか!?」


パイモン篇は繋ぎのような章。長くないです。


次回、タカシ達がパイモンを感動させる!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ