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下位世界の『超』召喚獣  作者: 五月蓬
放浪の魔王クロード篇
27/55

秘密の魔王様?

引き続きむくちゃん回!





「俺はあいつが抜けたいなら構わないけどなぁ」


 素っ気なく呟いたのはタカシ。


「そんな……タカシさん本当にいいんですか?」

「う~ん……何だかんだであいつはこっちの都合でタダ働きさせてるようなものだしなぁ。そもそもこの旅自体が俺の都合だし……嫌々付き合わすのもなぁ……」


 タカシは難しい表情で唸る。それなりにむくちゃんの事を考えて、タカシも彼の考えを尊重する。


「……聞いちゃ……いけなかったのかなぁ」


 珍しく流れる重苦しい空気。目を潤ませて呟くゼブブにタカシはかける言葉も思いつかずに押し黙る。

 気まずい空気の中、レイが徐にぼんやりと浮かぶミリーに声を掛けた。


「ミリー。お前はどう思う?」

『え?』


 突然話を振られて、きょとんとするミリー。そんなミリーに全員が注目する。


「あいつをパーティーメンバーに選んだのはお前だ。そして一番親しく話してたのもお前だ。お前はむくの事、どう思うんだ?」


 ミリーとむくちゃんはよく話していた。そもそもむくちゃんがパーティーに加わったのも、彼女が『可愛い!』の一言での強引なチョイス故である。つまりはパーティーで一番彼と関わりが深いのがミリーなのだ。


 ミリーはう~んと首を捻り、言葉を紡ぐ。


『別にいいや。可愛くないし』

「お前は結構エグいな!」


 ミリーはさっぱりとした態度でさらりと言う。


『実際、むくちゃんってあんまりパーティーでの役割もないし……思い入れのある出来事もないし……ゼブブちゃんは良い奴って言うけど、結構ゲスだよ?アレ』


 ちなみにゼブブはむくちゃんの追い剥ぎ行為を知りません。


『感じ悪いし、向こうが嫌ならいいんじゃない?私は知ーらない!』



 ミリーはぷいっとそっぽを向いて、ふわりと飛んでいく。


「おい、どこ行くんだ?」

『散歩!』


 ふわりと飛び去るミリーを、苦笑いと共に見送り、レイは軽く溜め息を吐く。


「師匠。出発はむくの奴がやる後処理をある程度見届けてからでもいいですかね?」

「あ?別にいいけど……何でだ?」


 レイの突然の申し出にタカシは首を傾げる。


「まあ……あいつとも長い付き合いなんで…………いや、一応不安ですし、どういう風にあいつが問題を解決するかくらい知っときたいですよね?」

「…………ま、焦る旅でもないしいいかな?」


 タカシは何かを察したようにニヤリと笑う。そして、しょんぼりと俯くゼブブの手を取る。


「まだまだ観光し足りねぇ!滞在期間、遊び尽くそうぜゼブブちゃん!」

「わ!……ちょっと……でも、むくちゃんのこと……」

「ゼブブちゃん、実はパンフレットに凄いお店が載ってたんですよ~!ほら、『ジャンボエクストリームグレートゴールデンパフェ』!一緒に行きませんか?」


 アリアがパンフレットを広げてゼブブに見せ付ける。するとタカシの引っ張りを拒んだゼブブはぐすりと涙を拭って一言。


「…………いくー」

「だったらこんな穴蔵からはオサラバだ!うおおおお!」

「わ!タカシ引っ張らないで……」


 地下工場を駆けていくタカシとゼブブを見て、アリアは隣に立つレイの顔を、にんまりと笑いながら覗き込む。


「な、なんだよ?」

「いや~、いいですね~。気心知れた長年の仲、って」

「……やめてくれ。そんなもんでもない」


 レイは照れ臭そうにそっぽを向く。その表情を珍しく意地悪な笑みでからかうようなアリア。よいしょと重々しい杖を持ち上げ、う~んと唸る。


「まあむくちゃんとは私もギルドでやんちゃした腐れ縁ですしね~!…………にしても羨ましいな~。言葉がなくても分かり合える関係、私もそんなのが欲しいな~……」


 どこか遠くを見つめるようなアリアの目に、レイが一瞬違和感を抱く。


「……アリアはそんな関係を持ってないのか?」


 レイの質問にアリアは笑顔で答える。


「ありますよ~!嫌だな~レイさん、それじゃあ私が一人ぼっちみたいじゃないですか~!」


 ひど~い、と笑い転げるアリア。


 気のせいか……?


 一瞬レイが抱いた妙な感覚……レイがそれに思考を巡らせる暇はなかった。


「あ、おいてかれちゃいますよ~!レイさん急いで!」

「あ、痛たたたたたたたたた!手強く握り過ぎ!」


 アリアがレイの手を引き走り出す。

 細い指先には似合わない力の籠もったその手。レイはその痛みと温もりから意識を疑問から逸らしてしまった。










   ----




「ボス、本当によろしかったんですか?」

「何がだ」


 工場の一角、何やらさらさらと地面に何かを書き連ねるゼペットが片手間に頭に乗ったむくちゃんに尋ねる。


「あの青年……魔力こそ感じませんでしたが迫力は上位の魔王を軽く上回ってましたよね?しかも、全員魔王を全然怖がっていない……あれならボスがいても……」

「お前は俺を連れ戻したいのか、それとも追い出したいのか、どっちなんだ?」


 呆れ呟くむくちゃんにゼペットは返す。


「ボスに幸せになって貰いたいんですよ」


 さらにむくちゃんは呆れかえる。


「お前、俺の部下の癖に随分とヌルい事を……」

「ボスも十分ヌルいですよ。全く……恐ろしい魔王なららしくして欲しいですよ」

「『元』、だ」

「はいはい。分かりました分かりました」


 適当に笑いながらゼペットは汚れた手をぱんぱんと払う。


「……ま、でも何が問題なんですか?見たところあのバアルゼブブ様もいらっしゃったようですし……彼等に魔王を恐れる雰囲気は……」

「馬鹿を言え」


 むくちゃんはゼペットの言葉をピシャリと切り捨てる。


「あいつらは…………本当の『恐怖』を知らない。本当の『絶望』を知らない。本当の『圧倒的な力』を知らない。だから恐れない。だから魔王を軽く見る。…………そんな奴らはごまんと見てきた。そして俺の力を見たときの表情も……な」

「……失礼を」


 ゼペットが目を伏せる。それはむくちゃんの『本当の力』を知るが故か。


「別に構わない。ただ、お前のように恐怖に身を任せることに快感を感じるような変態は、世間にはそう居ない事を知れ。…………まあ感謝はしているが」


 少し言い過ぎたとむくちゃんの気遣い。それをくすりと笑って受け流すと、ゼペットは地面の模様を足でなぞる。


「では始めましょう。『おもちゃの兵隊』」


 ゼペットの額からメキメキと樹木のような一本角がせり出す。そして瞳を金色に光らせるゼペットの足から膨大な魔力が地面の魔法陣に流れ込む。


 ボウン!


 爆音、そして召喚。現れたのは、無数の人影。


 それは大量の人形だった。


『おお、凄い……』


 そんな光景を前にするむくちゃんの背後から感嘆の声。


「……ミリーか。お前は此処で何をしている?」

「え?ボス?どなたかいらっしゃるんで……おわっ!?幽霊!?」


 まじまじとゼペットの召喚術を眺めていたのはミリー。


『べ、別に散歩してたら凄い召喚術が見れたから……私だって召喚術師の端くれだよ!』

「いや……答え……まあいい。去れ。邪魔だ」

『断る!』

「何故!?」


 ミリーがどや顔で一言。


『誰がお前の言うことなど聞くものかッ!』

「……嫌がらせかッ!」

「おやおやまあまあ……」


 クックとゼペットが笑いをこぼす。そしてそのまま意地悪く口を歪めて、頭のむくちゃんを放り投げ片手で人形の軍隊に号令をかけた。


「ちょっと邪魔ですボス。ちゃっちゃか作業進めるんで、何処か行ってて貰えます?例えば……其処の仲良しな幽霊さんとお話でもしてる、とか?」

『「誰が仲良しかッ!こんな奴とッ!」』


 それまた見事なシンクロだった。


「ククッ!はいはい邪魔邪魔!地上にでも上がって喧嘩してて下さいな!……まだ邪魔するつもりでしたら………………お前ら蝋人形にしてやろうか?」

『「は……はい……どいてます」』


 二人はてっきりゼペットが面白半分でからかい、冗談を言っているのかと思っていたが(実際それは正しくもあったが)、意外と最後は目がマジだったので、本気で邪魔なんだ、と軽くビビった。


 こうして取り敢えず二人は地上に上がる事にしたのである。







   ----




「なんで付いて来る?」

『なんで前を歩く?』


 まさに売り言葉に買い言葉。埒のあかない会話に疲れたむくちゃんは、あちこちが崩落したお菓子の城の一室、応接間に潜り込み、体を降ろす。

 ミリーも後に続く。


「何故お前まで入る?」

『休みたいからだよ!何か文句ある!?』

「何故キレる……」


 むくちゃんは反撃する余力なく、溜め息を吐いた。


 むくちゃんが黙ると漂う沈黙。ちらちらとむくちゃんの様子を伺うミリー。数分間の沈黙は何時間にも感じられ、余計に疲れたむくちゃんは、諦めミリーが求めている本題を自ら切り出した。


「お前は俺が居なくなってせいぜいするだろ?」

『うん』

「ちょっ……!!」


 即答。若干むくちゃんが焦る。てっきり引き止めに来たかと思っていた。

 そうなるとちょっとカチンとくるむくちゃん。


「お前は本当に悪霊だな……普通引き止めるだろそこは」

『……引き止めて欲しいの?』


 意外と真面目な声色で返すミリーにむくちゃんは一瞬どきりとする。


「何を馬鹿な……俺はお前らとはいけない。お前らには分からんだろうが……」

『なら話してよ』


 ミリーが即座に繋ぐ言葉はむくちゃんの反応を徐々に遅らせる。


『気に食わないの!事情があるみたいに振る舞っておいて!話さないで引っ張るとか!そういう所が可愛くない!むしろ気持ち悪い!』

「き、きもっ……!?お前にどうして其処まで言われないと……」

『気に食わないからだよ!この腐れ大福!』

「う、うるさいこの……悪霊!」


 最早新しい悪口を思い付かないむくちゃん。フーッフーッと毛を逆立て威嚇するミリーを見て、根負けするように息を吐いた。





「分かったよ……話そう。ただし、お前は恐怖する。…………後悔するな。これが俺の最後の嫌がらせだ」

『格好つけんな』


 ミリーの茶々を軽くスルーし、むくちゃんは語る。





語られるむくちゃんの秘密!


むくちゃん「……というわけなんだ」

ミリー『あ、ごめん。ちょっと寝てた』

むくちゃん「コラァッ!」


……とはならない……筈。

結構外道なミリーは実はツンデレ?いやデレてはないですかw


フラグを立てつつ次回へ!


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