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下位世界の『超』召喚獣  作者: 五月蓬
お菓子の魔王パンプディング篇
24/55

ボスは何時間でも待ってくれる

お待たせ回?




「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」


 ギュルギュル回転しながらパンプディングが真っ先に取った行動は『逃走』。正確には『誘導』。姑息な魔王パンプディングは、この場で戦う事は不利だと判断する。


(今の天井破壊で部下が殆ど持ってかれたヨー……まあ、どちらにせよ、召喚獣が参戦するなら『アレ』を使うしかないネー……!)


 パンプディングの切り札、『最強のケーキ』。

 それが隠された武器工場にパンプディングは飛ぶ。




 対するタカシ達はすぐには飛び付かない。あくまで彼らは冷静だった。


「これでよし……と」


 ゼブブが盾にされた子供を降ろし、横たえる。そしてタカシの方を向き、潤んだ瞳で頭を下げた。


「ありがとう……あなたが止めてくれなかったら、私はこの子を刺していた」

「え?いや、俺はえーっと……」


 言い辛い……タカシは困惑した。


 ゼブブに嫌われたと思い、何とか仲直りしようと後を追ったら迷子になり、悲しみと混乱のあまりにヤケクソ気味に床を叩いたら城がぶっ壊れて、たまたまあそこに落ちてきた……とは言えない。よくよく考えたら、悪事さえ暴かなければ、パンプディングに怒られても仕方ない事をしてる気がする。


 タカシは目を泳がせながら、言う。


「と、当然だよ……俺はゼブブちゃんがどこに居ても助けにいくからさ」

「タカシ……」


 タカシが言った適当なことを真に受けたように、ゼブブは頬を朱に染めた。その反応を見て、タカシは恐る恐る尋ねる。


「……もう怒ってない?」

「え?私、最初から怒ってないよ」


 きょとんとゼブブが返す。


「え?だって、捜しに行くって時についてくっていったら『いい』って……」

「手間かけさせちゃ悪いかなって……私一人で十分だと思ったし……」


 ゼブブは次に目を伏せる。


「勝手してごめんなさい…………私一人じゃ駄目だった。……タカシの言うこと、聞いてれば良かった」


 しょぼんと落ち込むゼブブ。そのうるうると目を潤ませる姿を見て、抱き締めたくなる衝動を抑えたタカシはふんと鼻息荒く胸を張る。


「メソメソすんな!あいつ、ムカつくんだろ?……ありえんレベルでメタメタにしてやろうぞ!」


 変にフォローせずに、そうとだけ言ってタカシはゼブブの頭をクシャクシャと撫でた。


「……うん!ボコボコにする!」


 目を拭い、ぐっと拳を握るゼブブ。その小さな肩に手をかけて、アリアが微笑む。


「なんかよく分からないんで説明してください」

「…………アリア。そこは空気を読んで意気込みを……」


 笑顔で頭に「?」を浮かべるアリア。このままだと面倒臭そうなので、後でと言ったが取り敢えず説明を先にする事にした。










   ----




 そびえるは最強のケーキ。その頂上でパンプディングは笑う。


「サァ……何処からでも掛かって来いヨォォォォォッ!バカ共ォッ!」




 しーん……




   ----




「かくかくしかじか……」

「なんですかそれ酷~い!」

「まさに最悪……怪しいと思ったが、やはり……」


 何だか理解の遅いアリアがやたらと聞き返すので、30分くらい費やした。


「じゃあまずは捕まっている人を助けた方が……私、鎖くらいなら千切れますよ!」


 怪力アリアが腕を曲げて膨らまない力こぶを自慢する。


「いや……多分心身状態的に解放しても動かせないむきゅ。此処は先に根元を絶ってから確実に救出すべきむきゅ」

「あ、むくちゃん居たんですか」


 ちょっと潰れ気味のむくちゃん。


「私を庇って伸し餅みたいに……ごめんねむくちゃん……」

「謝らなくてもいいから伸し餅言うなむきゅ」

『そっちのが中身に似合って不細工でいいと思う』

「お前はどれだけ俺を恨んでるんだむきゅ……この悪霊」

『今悪霊って!今悪霊って言った!最低だよこのカビ饅頭!』

「カビ饅頭!?」


 何やらまたまた喧嘩を始めた悪霊とカビ饅頭を微笑ましそうに眺めながら、アリアはしみじみ呟く。


「仲良しですね~」

「言ってる場合か!」







   ----




「…………」

「パンプディング様……あいつら来ませんね」

「…………」


 傍らに浮かぶ飴製の鳥魔物が気不味そうにその顔色をうかがう。


 カボチャは無表情だった。







   ----




 悪霊とカビ饅頭を取り敢えず無視して、レイは話を切り出す。


「パンプディングと戦う上で一つ気になる点があるんです」

「気になる点?」


 アホの子二人以外が耳を傾ける。


「まず初めてあの魔王を見た時、あのケーキの体は本体じゃないと思ったんです。あれだけデカい体じゃ俺達がくぐるくらいの扉からじゃ移動出来ませんし」

「確かにそうですね。流石に魔王といえどずっとあそこに籠もりきりな筈はないですし」


 ケーキの体はいささか移動には大きすぎる。しかもお菓子を湧かせたという行動も、お菓子を操る力を匂わせ、ケーキの体はただの操り人形である可能性を導く。


「ならば本体は何か?」

「私、カボチャを潰したけれど……倒せなかった」


 ゼブブの経験談。それを交えつつ、レイは自分の持つ情報を提示する。


「俺は魔王の部屋でずっとあいつを見張っていたけれど、カボチャはまだあった。しかし、パンプディングは部屋から気配を消し、ゼブブと交戦した……」

「カボチャは本体じゃない……?」


 ならば本体はどこに?


「まさかドッペルゲンガーみたいに本体は隠れてんのか!?面倒臭え!」

「可能性はありますが……あれが分身のようなものならば、部屋に残る俺やアリアを放っておいて、ゼブブの前にだけ現れた意味がないです。全てのところに分身を配置すればいいのだから」

「一体しか出せないとか?」

「制約やらを考えたらキリがありませんが……一つ、推測を言っていいですかね?」




 レイの予想、それは……


「パンプディングの正体は……カボチャランプを照らす『炎』……」


 話を聞く全員が目を丸くする。


「その証拠が……これ」


 レイはほぼ確信していた。その手に持ち上げたのは、崩れた天井の瓦礫から出てきた、細長い線だった。








   ----




「パンプディング様……様子見に行きましょうか?」


 手下が気不味そうに尋ねる。


「……そ、そうだネー!もしかしたら、速く飛びすぎてついてこれなくて、迷子になっているかもネー!よし、見てこいヨー!」


 僅かに元気を取り戻したパンプディング。


 既に1時間待機中である。







   ----




「成る程……城中に張り巡らせた導線を伝わって、コソコソ移動していたというわけか!」


 燃えつつも焼け落ちない導線。何やら特殊な金属を利用しているようで、レイがつけた火が伝う。

 線は瓦礫中に無数に張り巡らされていた。


「パンプディングはランプの火……だからカボチャを倒しても意味がない……あり得る?」


 むむ、とゼブブが口を尖らせる。


「言われてみたら……中身の魔力は同じでも、カボチャの魔力は色が違ったような……」

「え?その魔力の色ってカボチャとかにもあるんですか?」


 アリアが変なところに食らいつく。


「うん……なんにでも魔力は宿るから……」

「そう言えば私の魔力の色ってどんな感じなんですか?」

「アリア……何故話を横道に逸らす?後にしろって」


 レイに叱られ、むうと口を結ぶアリア。


「……取り敢えず、パンプディングの正体を見抜く、そして仮定が当たっていた場合の為のその攻略法を考えて……」

「レイ、少し待て。少し話は変わるけどいいか?」


 タカシが険しい表情で口を開き、レイが言葉を止める。


「なんですか?師匠……」




 タカシはキリッ!と目を光らせ、少し変わった話を切り出す。


「……飯食いにいかね?」

「180度違う!?」


 タカシは溜め息混じりに腹をさする。

「だって腹減ったんだも~ん!」

「私も賛成で~す!実はパンフレットに美味しそうなオムライスの店が!」

「アリアは何故積極的に話を逸らしに行く!?それに師匠!流石に空気を読んで下さいよ!」

「どうせ作戦会議するんだし食いながらでいいべ?」

「……私もお菓子食べ損ねたからお腹空いたかも」

「ボスはいくらでも待っててくれるもんなんだよ!」

「えええええええええ……?」


 レイは若干困った顔をしたが、キッと表情を厳しく光らせ立ち上がる!







   ----







「待たせたな!」

「待たされたヨッ!3時間以上なッ!遅えヨッ!その手にぶら下げた紙袋はなんだヨッ!」


 パンプディングの前に遂に辿り着いたタカシ達の手には紙袋。


「ごめん!ちょっと飯食ってついでにお土産見てきた!」

「ふざけんなッ!」


 ちょっとご飯食べにいったら、お土産屋に目移りしちゃった♪てへっ♪


「お前ら緊張感ってモンが……」

「おらあああッ!」

「グハァァァッ!?」




 タカシの攻撃!


 パンプディングのカボチャヘッドがひしゃげる!


「お前は鬼かァ!出会い頭に顔面パンチするかヨ!?」

「何甘い事言ってんだ?」


 タカシはニヤリと笑う。


「俺らはお前を倒しにきたんだぜ?」





 パンプディングはそこから只ならぬ空気を感じ取り、ケタケタと笑う。


「……どうやら無駄に待たせた訳ではなさそうだネー?」

「あ、ごめん。2時間近くは無駄に使ったわ」

「ジョークを楽しむ余裕があるみたいだが……直ぐに余裕も消え失せる。ボクの本気を見せてやろう……」




 巨大ケーキがモコモコと動き出す!


「パンプディング特製……火薬ケーキ!」


 ジャキン、とケーキから突き出す無数の銃器!カボチャヘッドの目鼻口から灯りが噴き出す!


「蜂の巣にしてやるヨォォォォォッ!」


 武器てんこ盛りケーキを前に、タカシ達は焦り一つ見せない。


「ケーキにそんなもの詰め込んで……許せない……」


 怒るゼブブに同調して、アリアも声を上げる。


「お菓子をそんな風にするなんて……そんなのお菓子に対する愚弄です!」




(お前が言うな!)


 思いつつ口には出さないタカシ。


「さ~て、打ち合わせ通りいきますかね!」


 タカシの号令にパーティーの勢いある「おー!」という掛け声。







 ようやくパンプディングとの最終決戦が始まる!





前回パンプディング戦が決着といったな。




あ れ は 嘘 だ



 再びゴメンナサイ!(>_<)

まだまだ引っ張るパンプディング戦!大して重要でもないのに!


あれですね。きっと私達はタカシ達に待たされてるんですよ!……申し訳ない。


ボスは律儀に待ってくれるもの。例え、ボス戦前に何時間もレベル上げをしても!魔法がなければパサパサだった……


魔王はともかく、結構楽しいお菓子の国。地下深くにしか悪いモノは存在しないのです。




次回こそ決着!なんやかんやで初めてのチーム戦!そして無駄にしつこいパンプディング篇ようやく完結!



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