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下位世界の『超』召喚獣  作者: 五月蓬
お菓子の魔王パンプディング篇
20/55

魔王パンプディング

今回は短めです。




「ヨウコソ!お菓子の国ヘ!」

「我等ガ王様!パンプディング様がお待ちデス!」


 お菓子の城にてタカシ達を迎え入れたのは、飴で出来たウサギとマシュマロで出来たパンダ。手のひらサイズのお菓子魔物はふわふわと浮かびながら、タカシ達の前に現れた。


『か、可愛いー!むくちゃんと取り替えてくれないか!?』

「ミリー、何気にお前は酷い奴むきゅ。ペットには最後まで責任を持って付き合うのが飼い主の責任むきゅ」

『お前のようなペットがいるか!』

「最初可愛いと言って選んだのはお前むきゅ!」

『騙されたの!猫の皮を被ったうどんにな!』

「うどん!?お前の頭の中身が訳分からんむきゅ!」

『ムキー!生意気ー!可愛くなーい!』


 ミリーがむくちゃんに掴みかかる!


「ちょっ……ちょっと待つむきゅ!」

『待たん!』

「ち、違う!前!前!……むきゅ!」

『……前?』


 ミリーが前を見る。




 誰も居ない……




『置いてかれたぁぁぁぁぁぁっ!』

「……どうするむきゅ?」

 城は広い。迷子になったら一大事である。


「……ここは一旦城の外に引き返して入り口で待つのが……」

『勘で行くぞー!』

「ちょっ……!」


 むくちゃんの提案を全面的に無視してミリーが行く!


「迷子になるぞ!……むきゅ!」

『大丈夫!私に任せろー!』

「やめて!」


 グイグイ進むアホの子ミリー!

 放っておく訳にもいかず、むくちゃんは仕方なく後に続く。




 勿論ミリーが進むのは明後日の方向である。










   ----




 チョコレートの道を歩きながら、タカシはむむむと呟く。


「…………お菓子の城って衛生上よろしくないよな」

「なんて夢の無いことを言うのデス!」


 何故かウサギに怒られた。


「魔法で衛生面は調整してますので。最近五月蝿いんですよそういうの。お菓子の家に憧れる時代は終わったんですよ……現実に砕かれて、ね」

「……なんかすんません」


 パンダにすごく現実的な話をされた。それはそれでアレである。

 そろそろミリーが『可愛くない!』と騒ぎ出す頃だろうとレイが思い、後ろを振り返る。

 そして気付く。


「……師匠。ミリーとむくが居ないんですけど」

「いいよ別に」


 即答である。


「あいつらあんまりいても変わらないし」

「……ですね。多分遊んでるんでしょう」


 ミリーとむくちゃんに対する風当たりが強い気がするのは気のせいである。


「さてサテ、前方ニハビスケットの扉が見えて参りまシタ!中にてパンプディング様がお待ちデス!初見の方は腰を抜かさぬヨウご注意を!」


 目の前にはビスケットの扉が。ウサギとパンダが扉の前でぴょんぴょん跳ねると、ビスケットの扉がゆっくりと開き、魔王の部屋の全貌をさらけ出した。




「カムヒアマイフレ~ンズ!待ちわびたヨー!キミときちんとお話できる今日という日をネー!ミスゼブブ!」

「……相変わらず美味しそう」

「え?まさか、コレが……?」

「魔王……パンプディング?」


 お菓子で彩られた子供部屋をイメージさせるオモチャの転がる広大な空間、その中央にはウェディングケーキを思わせる、3メートル近い巨大ケーキ。白い生クリームにはキャンディやチョコレート、ゼリービーンズにマシュマロ、鮮やかな様々なお菓子が埋め込まれ、まるでカラフルな衣服を纏っているよう。

 そしてその天辺にはでんと構える目鼻に口をくり貫いたオレンジのカボチャ、ジャックオーランタン。目鼻口の穴からは灯りが漏れ出している。

 そして最後にカボチャの頭に乗っかったカラメル滴るプディングの冠。


 メルヘンチックなお菓子盛り合わせは、顔に当たるカボチャ部分をグルグルと回転させながら笑い声を上げた。


「お初ですネー!勇者に召喚獣、そして麗しき白魔術師のレディー!いかにも!ボクがお菓子の国の主、魔王パンプディングだヨー!以後ヨロー!」

「こ、こんなの魔王じゃない……ただのお菓子じゃねーか!」

「でもこのお菓子が……非生物系魔王、パンプディング」

「オイオイお菓子が魔王じゃオカシイかナー?お菓子だけニー!ギャハハハ!」


 その異質の魔王を前に、タカシとレイは唖然とし、アリアは何故か目を輝かせ、ゼブブは涎をじゅるりと啜った。


「何はともあれウェルカムマイフレ~ンズ!ササ、積もる話は座ってからだヨー!」




 魔王の歓迎ムード……本来なら違和感を感じるべきこの状況を、しかしタカシ達は経験済みとあってすんなり受け入れた。




   ----




「ササ!座りなヨー!」


 ぐるりとパンプディングが首を回す。すると地面からせり出す飴の椅子。


「飴……座って大丈夫なのか?」

「ダイジョーブだヨー!飴と言っても魔法の飴!椅子様の飴!ベタベタしないし後でスタッフが美味しく戴くヨー!」

「それはそれで嫌だな……」


 所々夢のない微妙な魔王パンプディングに言われるがままに、タカシ達は腰を降ろす。


「あ……柔らかい」

「本当だ!綿飴みたいですね~!」


 見た目はカチカチの飴だが、ゼブブとアリアの椅子はふんわりと沈み込む。ふかふかな綿飴の椅子。


「……固いけど。まあ俺は固いほうが楽だからいいか」


 レイは固い飴の椅子。しかし満更でもない様子。


「ほう!好みに合わせて感触が違うのか!どれ……」


 タカシが最後にウキウキしながら腰を降ろす。







 ぬちゃああああ…………


「…………」


 嫌な感触。タカシは椅子についた手を見た。

 糸を引く飴がベッタリ纏わりついている。




「水飴じゃねーか!」

「ギャハハハ!引っ掛かったヨー!」

「こいつぶっ殺す!」

「怒っちゃやーヨー!ちょっとしたイタズラだヨー!寛大な心で許してチョー!ギャハハハ!」

「こいつうぜー!」

「ここはお菓子沢山イタズラし放題の夢の国!イタズラはご愛嬌だヨー!」


 パンプディングがゲラゲラ笑う。タカシはもうベッタベタである。


「…………プッ」

「あはははタカシさん!あははは!」


 女性陣に笑われた。


 タカシ赤面!


 肉体的にはドMで頑強なタカシも、精神的には打たれ弱いのだ!


「……とまぁ、お遊びは此処までだヨー。キミ達の目的は分かってるヨー……」


 急にシリアスな雰囲気を漂わせるパンプディング。


「イヤ待て俺ベッタベタ!話とかしてる場合じゃねーよ!」

「……ああ、忘れてたヨー。ホレ」


 ボウン!とタカシの椅子が消える。


「あいてー!」


 そのままタカシは転げ落ちる。


「なにすんだー!」

「ちょいと水飴の魔法を解いたんだヨー。ホレ、ベタベタは取れたよネー?」

「ん?……あ、本当だ」

「じゃ、早速お利口なお話に移ろうかナー?」




 パンプディングは首を回して視線をタカシに合わせる。







「コウサーン!ボクの負けでいいから命だけはお助けヲー!」

「……は?」




 その降参宣言は、ゼブブの時よりも、ずっと軽く、酷く投げやりなものだった。


 甘ったるいお菓子の魔王の言葉には、なんの未練も迷いもなかった。





パンプディング登場!


ミリーとむくちゃんだけ別行動。何気に二人は仲良しなのです。


パンプディングの思惑とは?



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