職業自宅警備員
まだまだ導入部!
パンツ一丁シャツ一丁、卓袱台を前にラーメンを待つ男。
姿を顕した最強の召喚獣は勇者達とベルペスを交互に眺める。
「あんたら何やってんの?それにここどこよ?城?」
勇者唖然。ベルペス唖然。誰がこんな召喚獣を期待しただろうか。
「何か……ミリーは最後の最後にやってくれたな」
「やめろ内藤」
「最後までドジかましてくれましたね」
「ドリーもやめろ」
「おいおい。何だその残念なものを見るような目は?まあ、確かに今は残念だ。だがこれは休憩スタイルでな……」
何か言い訳を始める青年に余計がっかり。
「ああ。ミリーはドジだった」
「やめろ」
「召喚術師になって初めて召喚したのが制御不可能な鬼とかだったりな。山羊の角と鬼の角とを間違えたとか言って……」
「……」
レイも否定を止める。
「どうすんだこれ……」
ベルペスさえもリアクションに困るこの状況。取り敢えず空気を読んで、ベルペスが尋ねる。
「貴様、何者だ?」
「斎藤タカシ、二十歳だ」
「職業は?」
「……あんたは面接官か何かなのか?随分でかくて、モンスターみたいな……」
はっと気付くタカシ。
「モ、モンスター!?」
「……何だ?魔物に驚くのか?」
「こええ!マジか!まさか俺、異世界に召喚されたとか!?やべぇ!どんな漫画でラノベだよ!しかもムサい男ばっかし!ここはハーレムだろ常考!」
「……五月蠅いなこいつ」
ベルペスはあからさまに嫌な顔をする。
「何そのウザい奴を見るような顔?あ、ジョブね!俺は自宅警備員!我が家の平和を守る戦士!」
其処まで聞いて、ようやくベルペスは邪悪な笑みを取り戻す。
「クク……やはり戦士か……!さしずめ、異世界の手練れを召喚したというところか……面白い!」
勇者一行にも僅かに光が戻る。
「ミリー……これがお前が残した希望なのか……?」
「いけるぜ!でも手ぶらで防具もつけていないが大丈夫か?」
「防具?俺はいつもパンイチだが?」
「パンイチ……?」
ざわざわと空気が蠢く。ベルペスは髑髏をあしらった杖を突き上げ雄叫びを上げる。
「さあ、異世界の戦士よ!その力を見せてみろ!」
「は?」
惚けた声を上げるタカシ。
「来い!」
「え?来いって……え?戦えってか?ははは、冗談きついぜ?」
「どうした?魔法でくるのか?それとも剣でくるのか?」
「冗談!剣と魔法てwゲームかってのw」
「ゲーム……?」
ベルペスの怪訝な表情。そして浮かび上がった疑問を投げかける。
「まさか、剣も魔法も使えんのか?」
「出来るかんなもん!」
「じゃあ貴様の武器は……」
タカシはにやりと笑みを浮かべる。
「漢の武器はスデゴロ一本!あ、股間に立派なマグナムもあったっけか?なは!」
「……成る程」
ベルペスは何か納得したように頷いた。
「それよりカップ麺出来てんじゃね?おいそこの人。今何時よ?」
「え?く、九時十分ですが……」
「げ!時間まるで変わってるじゃねーか!やべぇいついける?」
ベルペスは推測する。
「貴様からは魔力を感じない。さては魔法などない……下位世界から来たな?」
「は?まあ魔法なんて夢の話だが……」
タカシは凍りつく。
徐々に上がる室温。掲げられた杖の先には小さな太陽。表面に炎の奔流を巻き起こしながら太陽は徐々に大きくなる。
「ちょちょちょ……ちょい待ち!もしかしてそれが……魔法っすか?」
「ご名答」
太陽はぎょろりと黒い瞳を開いてタカシを見据える。まるでターゲットを決めたかのように。
「悪く思うな人間」
「ストップ!そんなものぶつけられたら……」
「ストップか……それは無理な話だ」
「何故なら今は私のターンだからだ!」
ベルペスの最上級魔法がタカシに襲い掛かる。
「魔神の業火を受けよ!プロミネンス!」
ジュッ……
タカシが焼け焦げる音がした。
「さあ、騎士よ。お前のターンだ」
冷めた表情でベルペスは杖で地面をこつりと叩く。
「これが貴様等のラストターンだ。召還術師にすぐに会わせてやろう」
この日、一つのパーティーが解散する。
まだまだ導入部……?
タカシオワタ\(^o^)/