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下位世界の『超』召喚獣  作者: 五月蓬
お菓子の魔王パンプディング篇
19/55

お菓子の国の、オカシな魔王

お菓子の魔王パンプディング編スタート!ゼブブを仲間に加えて、一行の冒険はスタートします!




 パンプディング

 パンプディング

 夢の王

 パンプディング

 パンプディング

 飴の王

 お菓子をやるぞ

 イタズラするぞ

 夢の国はこっちだぞ




   ----




「パンプディングってあのパンプディングですよね?」


 言い出したのはアリア。一同は今、ゼブブの案内で魔王パンプディングのお菓子の国を目指している。


「……あのっていうのが『お菓子の王様パンプディング』の事を言うのなら……そうだよ」


 ゼブブが答える。一人話を理解できないのはタカシ。


「なんだ?そのお菓子の王様って?」

「ああ、師匠は別の世界から来たから知りませんか?童謡とか童話とか……そういった感じのものです」

「パンプディングはお菓子の王様。住んでいるのは夢の国。お菓子沢山、イタズラし放題の夢の国……ちっちゃい頃よく聞きましたよ~」


 アリアが懐かしむように目を閉じる。それは何故か浮かない表情に見えた。ゼブブがその顔をちらりと伺いながら、口を開く。


「パンプディングは童謡で謡われる通りに昔から知られる最古の魔王の一人。それに加えて数少ない『非生物系』の魔王でもあるの」

「非生物系?それで魔王なのか?」


 レイが驚いた様子で尋ねる。


 この世界には複数の魔王がいる。しかしその大半は『人型』に区分されるという。

 というのも、魔族の中でも特に高い知性と魔力を持つのが人型ということもあり、獣型や非生物系の魔物は知性が低く魔力も低いのが通常のケースらしい。


「そう。非生物系にして最古の魔王……さらには人間にも広く、親しく知られるパンプディングは魔王の中でも異質の存在とされているの……」

「ゼブブちゃんは会ったことがあるんですか~?」


 アリアの問い掛けにゼブブはすぐさま答える。


「うん。……たまにベリアル……あ、現最大の勢力を持つ魔王だけれど、ベリアルが魔王全体に関わる連絡事項がある時に召集をかけるんだけれど……その会合で何度か会った」

「おお、魔王裏事情」

『で、どんな魔王なの?』


 既に事情を説明し、その存在が認識されたミリーの問いにもゼブブは答える。


「……人間寄りの思考の持ち主、って感じ。多分、あなた達の言葉でいう『善人』……だと思う。あと子供好きらしい」

「やっぱり童謡の通りなんですかね?だとしたら、魔王も悪い人ばかりじゃないんでしょうか?ゼブブちゃんみたいに!」

「……私は『元』魔王。負けた魔王は魔王じゃないの」


 ムスッと不満げにアリアに抗議するゼブブ。地味に頬を膨らませるのが子供っぽい。


「……あ~!もうゼブブちゃん可愛いな~!」

『うん可愛い!抱き締めたくなっちゃう!』

「や、やめて……!」


 アリアとミリーに絡み付かれてもがくゼブブ。いつの間にやら仲良しな三人を見つめて、残る男三人が話す。


「いい光景だ……花畑だよ全く。これだけでこの世界に来たかいがあったってもんだぜ……」

「ミリー……もうお前に興味ないみたいだな。もう触ってるとこ見ないぞ?」

「あの幽霊にこの前『むくちゃん可愛くないから嫌い』って言われたむきゅ」

「ああ可愛くないしな」

「ああ可愛くないしな」

「むきゅきゅ~……悲しいむきゅ~」

「「可愛くない」」


 何だかんだで仲はいい……筈である。




「……そろそろかも」


 絡みつく怪力女と生き霊を何とか振り解き、ゼブブは足を止める。


「あれ?なにもないぞ……?」


 レイが辺りを見渡す。しかし、国どころか目立つ建物の一つもない。


「お菓子の国の入り口は……子供のようにピュアな心の持ち主にしか見えないの。……あ、あった」

「流石ゼブブちゃん!ピュアだから早速見つけた!それに引き換えレイ……w」

「し、師匠……そ、そういう師匠こそみえるんですか?」

「み、見えるけど?」


 レイがじっとりとタカシを睨む。するとタカシは目を逸らし、「は~、腰が痛え」とか関係ない事を呟きだす。


(わ……分かりやすい……!)


 レイはある意味感心した。


「……本当に入り口が?みんなは見えるか?」


 レイが少し疑わしげにゼブブの立つ前を凝視する。


「も、勿論見えっ……見えますよ~!」

『見えないわけないよー(棒)』

「お前ら……」


 あからさまなアリアとミリー。

 その表情を横目で一瞥し、ゼブブは呟く。


「……嘘だけど」


 沈黙。


 まさに裸の王様状態である。


「タカシさん嘘吐いてるじゃないですか~!」

『タカシ君全然ピュアじゃなーい!』

「な!?二人ともずるいぞ!二人だって乗っかっただろうが!」

「じゃ早速……」

「『「そこは構ってゼブブちゃん!」』」


 三人のコントじみたやりとりを軽くスルーして、ゼブブが手を前にかざす。

 その時レイはゼブブの三人のあしらい方を見て感心していた。よし、こうやればいいのか、と。


「覚えてる地図的には……この辺り。でも見当たらない。それは多分結界で国が隠されているから……」


 タカシ達ははっとして、即座に魔法を発動させる。


 真理眼!


 そして見えた光景に、全員唖然とする。


「……いやぁ、ゼブブちゃんが居てくれて助かったわ。俺達だけじゃ見逃したな」

「これが……お菓子の国……」

「……じゃ、行こ」


 ゼブブがぐいと手を引くと、まるで壁紙が剥がれ落ちるように結界が捲れる。人一人分程の穴が開いた結界をくぐり、タカシ達は『お菓子の国』に足を踏み入れる。


《ヨウコソ!夢ノ国ヘ!》


 広がる夜空には眩い星、彼方此方に建つカラフルな建物。観覧車、ジェットコースター……遊園地?

 バンバンと花火が打ちあがる賑やかな世界の中心には、チョコレートや飴、ビスケットなどなど、色とりどりなお菓子の城が建つ。


 人間の子供、さらには大人、加えて魔族までもが楽しそうに笑う異質の世界……


 此処がパンプディングの支配する夢の世界、『お菓子の国』……







   ----




 まるでただのテーマパーク。永遠の夜を演出する『夜の結界』に包まれたお菓子の国。


「『お菓子の国では夜更かしし放題!』……だそうです」


 アリアがそこらで貰ったパンフレットを広げながら歩く。


「あっちはお菓子工場で……あっちは遊園地!凄いですね~色々と!まずはどこに行きます?」

「……まずはパンプディングに顔見せに行かないと。タカシがいること分かったら面倒だから」

「あれ?俺、何か問題あるの?」


 ゼブブがああ、と思い出したように、後ろ向きで歩きながらタカシを指差す。


「言い忘れてたけど……タカシ、魔王に顔と目的知られてるよ?多分、魔王によっては対策をうってくるかも」

「うわぁ……マジすか。面倒なのは御免だなあ。もしかしたらパンプディングも?」

「大丈夫。一応顔はきくから……」


 そう言ってゼブブは自身の顔に指を向けて、にこりと微笑む。


「……まあ、ある程度の魔王……バアルの魔王なら大体話が通るから……面倒事は少しなら避けられるよ」

「……流石は魔王」

「『元』魔王。今は違うもん」


 何故かそこは譲れないといった様子で、ゼブブは口を尖らせた。そしてくるりと前を向くと、すたすたとスピードを上げて歩いていく。


「あれ?ゼブブちゃん怒った?」

「お菓子一杯ではしゃいでるんじゃないですか?可愛いなあ」

「あんまり子供扱いするなよアリア。一応二十歳らしいぞ」

「え゛!?年上じゃないですか!」


 とてもそうは見えない後ろ姿。それを見失わないようにタカシ達は歩調を早める。


 その様子を見下ろすように、無数のコウモリが空を漂っていることにも気付かずに……







   ----




「パンプディング様パンプディング様!来ました来ました『堕天使』でっす!」

「しかも一緒にあのバアルゼブブが!」


 騒がしく喚くのは、笑顔の仮面。ふわふわと浮かぶ仮面は、巨大なケーキの周りをぐるぐる回る。


「え?ゼブブちゃん?何だやられたって聞いたから、無事だったか心配だったんだヨー!」


 ケーキの天辺がキラリと光る。そこに赤く光るは丸き双眼。


「良いネー良いネー!敗れて魔王じゃないのなら、交流にも何の問題もないヨー!お前達!最高のお菓子を用意するヨー!」


 仮面が「は!」と勇ましく返事をし、ケタケタと笑いながら飛び去っていこうとする。

 するとパンプディングは思い出したように、仮面を呼び止める。


「あ、直ぐに城まで案内しろヨー?」







「……間違っても『工場』だけは見せるなヨー?……『夢』が、壊れちゃうからネー!」


 そう言って、パンプディングはケタケタと笑う。




 その陽気で不気味な笑い声は、お菓子の城だけに響き渡った。





パンプディングの正体は次回!


意外と便利な真理眼!


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