愛の形は人それぞれ?
黒塗りの城、『影の館』。魔王ドッペルゲンガーの潜む場所。
中は一寸先も見えぬ暗闇。タカシ達は手に入れた真理眼によって、辛うじて進むことができる。
「どんだけ暗いんだよ……」
「お化けが出そうで怖いです~……」
『やめてよアリアちゃん!お化けなんて!怖いよ!』
「お前だってお化けみたいなもんだろう」
『違うよ!私は強いて言うなら精霊みたいなものだよ!』
「じゃあ脱げよ」
『精霊イコール露出狂みたいなのはやめてよ!あれはとうふさんだけだよ!』
とうふさん涙目。
そんな下らない会話を眺める魔王ドッペルゲンガー。
何故か、ちょっと何この人達、みたいな引きつった顔。
(……なんだこいつ……怖っ!)
※ドッペルゲンガーにはミリーの声が聞こえてません
(え?女の子に向かって「お前だってお化けみたいなもんだろ」って……どゆこと?お化けみたいに酷い顔だな、ってこと?酷いな!)
※ドッペルゲンガーはミリーの存在を知りません
(……で、脱げよって何!?え?そういう関係?……やだなにこの外道……女の敵!)
ドッペルゲンガー、ドン引き!
「ねえ……突然脱げはないでしょう?酷すぎますよ」
「な、なんだレイ……彼氏だからってキレるなよ」
(彼氏!?この冴えない奴、彼氏の前でその彼女に向けて脱げよだの言ってたの!?)
「え、ええ……キレますよ……そりゃ。俺の大切な女なんですから」
そう言って、レイとかいう男に化けた私はアリアという女を抱き寄せた。
バレては不味い。折角潜り込んだのだ。
霧の泉には私の影を潜ませている。
普通の冒険者ならば、霧で塞がれた視界外からのバックアタックで御陀仏の筈だった。
しかし最近の来訪者はきっちり真理眼を身につけてくる……トゥルフの奴がノルマの為に広告だして宣伝してるらしい。
あのとうふ野郎、高校時代の漫研の仲間のくせに、私を売りやがった!
あいつのせいで、最近は不意打ちができやしない!
しかし英霊高校歴代屈指のエリート、魔王学園卒でないにも関わらず、魔王職に就いた数少ない天才の私は考えた!
それが『恐怖!ドッペルゲンガー作戦』だ!
①襲う
②怖い魔王の演技
③ビビらせたら勝利!逃げるものは追わない
④駄目なら攻撃!
⑤隙を見て一人誘拐
⑥そいつに化ける
⑦不意打ちで一人ずつ消す←今ここ
⑧大☆勝☆利
まさに完璧。なんという作戦。仲間に刺されるなど思うまい!
影と姿を操る私の力あってこその作戦である。
隙はない筈だった。
唯一の失敗、それはこいつらが、あまりにも複雑な人間関係を持っていた事だろう……
「え?おまっ…………アリアちゃんにも手を出して……?」
「え?」
きょとんと抱き寄せられるアリア。よく状況が読めないレイに化けたドッペルゲンガー。目を潤ませ、わなわなと震えるタカシ。あわわと慌てるミリー(ドッペルゲンガーには見えてない)。
タカシは号泣した。
「この二股野郎ぉぉぉぉぉぉッ!」
ドッペルゲンガーはびっくりした!
(え!?二股!?ちょっ……え?彼氏って……この女のじゃなく?……でも他に女は……居るのはこの冴えない男と愛玩魔物だけ……)
ドッペルゲンガーははっとした。
(彼氏って……この冴えない男の彼氏ということか!?)
※違います
(馬鹿な……こいつら、男の恋人だったとでもいうのか!?興奮す……じゃない!)
アッ―――!
ドッペルゲンガー、大きな勘違い!
(さっきは……彼氏の目の前で、女の裸を見たがったことに対して私がキレたと勘違いしたのか!くそ!やっちゃった!ここで不仲になったら……不意打ちできない!)
「レ、レイさん……離して……」
顔を赤くして、アリアが抱き付くレイ(ドッペルゲンガー)を突き飛ばす。
よろりとよろめいたレイ(ドッペルゲンガー)は慌ててタカシに駆け寄り……
抱き付いた。
「冗談だよ…………俺が愛してるのは…………」
「君だけさ」
レイ(ドッペルゲンガー)の愛の囁き!
(どうだ!ナイスフォロー!)
※勘違いです
沈黙。
そして、タカシのターン!
「き、き、気持ち悪いんだよ……この変態がぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
タカシの攻撃!
「ぐふぅ!?」
レイ(ドッペルゲンガー)は吹っ飛んだ!
青ざめた顔のタカシ。アリアは対照的に、顔を赤くして飛び上がる!
「レイさんの…………不潔っ!!」
アリアの攻撃!
「うごはッ!?」
レイ(ドッペルゲンガー)にダメージ!
地面でのたうち回るレイの上にはミリーが涙目で浮かぶ……
『レイ……いつからそんな風になっちゃったの……?』
※レイ(ドッペルゲンガー)には聞こえてません
『レイの…………バカチンケダモノ狼男っ!!』
ミリーの叫びと共に、ふわふわと館の置物が浮かび上がる……
ミリーのポルターガイスト!
どんがらがっしゃ~ん!
「あばばばばッ!?」
大量の置物がレイ(ドッペルゲンガー)に降り注ぐ!
レイ(ドッペルゲンガー)に大ダメージ!
「骨はちゃんと拾ってやるむきゅ」
むくちゃんは大量に積み重なった置物に埋もれたレイ(ドッペルゲンガー)に呟いた。
「何故……分かった……?」
地の底から湧き上がるような声。
「この声は……!」
大量の置物の隙間から、影が溢れ出す。
分散した影は収束し、人の形を作り出す!
「私が仲間に化けていると!」
「ドッペルゲンガー!?」
ドッペルゲンガーが姿を顕した!
「そう……私だ」
黒い影が地面に降り立つ。
それを見たタカシ達は……
「レ、レイはそんなやつじゃないって信じてたよー(棒)」
「ですよね~(棒)」
『私は最初からわかってた(棒)』
「おのれ…………何を見抜かれた……?これが……愛の力だとでもいうのか?」
※大体あなたの自爆です
「「『そう、これが愛の力だ(棒)』」」
冷や汗だらだらで誤魔化す一同。
「……下らん。ならば、砕いてやろう」
「私の幻影で、貴様等の愛とやらを!」
黒い影がぎょろりと目を見開く!
「私だ」
「私こそが」
「幻惑の魔王」
「ドッペルゲンガーだ!!」
タカシ達が気を取り直して身構える!
魔王ドッペルゲンガーが現れた!
BLタグがついてないですからBLにはなりません!
ドッペルゲンガーさん、盛大に爆死!しかし次回から本気出す。
ドッペルゲンガーさんは策を練りすぎて空回りするタイプ。
それにしても、ちゃっかり攫われちゃってる勇者さん……ある意味ヒロインですね。
でもレイがメインヒロインというわけではないので悪しからず……w
次回はようやく初の魔王との対決!