魔王ドッペルゲンガー
霧深き霧の泉、その濃霧の中を歩けるのは、新たな力、真理眼のお陰であろう。
「凄いな。霧が全然邪魔じゃないぞ。あってよかった真理眼、だな」
霧が消える、と言うよりは、霧は見えるが視界の妨げにならないといった不思議な感覚。一歩踏み出すのも一苦労な霧の結界を、一同は難なく進んでいく。
「キシャーッ!」
「おっと!」
黒キャットが現れた!
黒キャットを倒した!
飛び出してきた黒い魔物をぱしりと払い、気にせず進む。
「さっきから出てくる黒いモンスターは何なんだ?あいつらはこっちが見えてるのか?」
「あれは魔王ドッペルゲンガーの配下ですから~。ドッペルゲンガーが張ったこの霧の泉の霧の結界の影響は受けないんですよ~」
「アリアちゃんは物知りだなぁ~」
「アリアはどうしてそんなに魔王に詳しいんだ?俺はバアルベリトのことすらよく知らなかったのに」
「……はい?今喋ったの私じゃありませんよ?」
足を止めて顔を見合わせる一同。
タカシ、レイ、アリア、むくちゃん、ミリー、アリア……
「……おい。アリアちゃん、なんか増えてへん?」
「はは……そんな馬鹿な……あれ?」
「むきゅきゅー?」
『ぶ、分身の術!?』
「あれ?あれ?あれ~……?私がもう一人???ど、どちらさまですか?」
アリアが二人……異常な光景。
あわあわともうひとりのアリアと顔を見合わせアリアが尋ねると、もうひとりのアリアは首を傾げて笑う。
「私ですか?嫌ですね~、忘れちゃいました?私は……」
「私だ」
???のバックアタック!
もう一人のアリアが、手にする杖でタカシに殴りかかる。
「いてっ!」
不意打ちにタカシは無防備にダメージを受ける。
「誰だ!?」
剣を構えてもう一人のアリアを睨み付けるレイ。
アリアはキリッとした表情で答える。
「私だ」
「だから誰だよ!」
レイの声に反応するかのように、もう一人のアリアの顔から黒い何かが吹き出す!
「私だ」
「私が、ドッペルゲンガー。そう、魔王だ」
黒い影が人の姿を形作る!
「魔王ドッペルゲンガー……お前だったのか!」
「そう、私だ。ドッペルゲンガーだ」
「何だこいつ!」
黒い影の顔に口だけが浮かび、不気味に笑う。
「そう、アウトドア派の……私だ。館に籠もらず、部下に頼らず、私の領地に踏み入る者に対応する……私だ」
「何だこいつ面倒臭ぇ!」
「魔王が直接、いきなり出てきた……!?」
「何を驚く?」
「先程から……会っているではないか」
「そう……私に」
黒い影が指を鳴らす。すると周囲から突如、黒い影が湧き出す。
黒キャットが現れた!
黒タイガーが現れた!
黒オーガが現れた!
現れた!現れた!現れた!現れた!現れた!現れた!現れた!現れた!現れた!
数え切れない程の黒、黒、黒、黒……
タカシ達を黒い魔物が取り囲む!
「囲まれた!?」
「関係ねぇ!なぎ払ってやる!」
タカシが腕を振りかぶり、戦闘体制に入る!
「急くな」
しかしドッペルゲンガーの制止が入り、動きを止める。
「自己紹介がまだだ……そう、私のな」
「「「「「「「私だ」」」」」」」
「!?」
黒い魔物が口を揃えて放つ言葉。
それに思わず仰け反るタカシ達。
「な、何だこいつら……怖ッ!!」
「この黒い魔物は何だ!?」
「いや怖い!どどどどうしましょ~……!」
流石に焦りを隠せない一同。その様子を楽しむように、ドッペルゲンガーは口を歪めて笑った。
「私だ。全て私だ。部下などいない。私だ。全て私。私。私。私。私……」
私、私、私、私、私、私、私、私、私、私、私、私、私、私、私……
口を揃えて黒い魔物が言葉を連ねる。
身の毛もよだつ光景。今まで余裕で歩んできたタカシも身震いした。
「全部……お前?つまりそれって……」
「そう、全て……私だ」
黒い魔物が一斉にタカシ達に襲い掛かる!
私だ、私だ、私だ、私だ、私だ、私だ、私だ。
「気持ち悪ぃぃ!」
タカシが拳を振り抜く!
ゴウッ!
一薙ぎで三体、吹き飛んだ三体が他を巻き込む、巻き込む、巻き込む……一撃で魔物は根こそぎ吹っ飛ぶ!
「いやあああ!」
アリアの杖の衝撃波が残る魔物を吹き飛ばす!
馬鹿力二人の攻撃で、襲い掛かる黒い魔物は一掃される!
しかし、倒れる影の中にドッペルゲンガーの姿はない。
「館にて待つ……私だ」
霧の泉にドッペルゲンガーの声が響く。
「逃げたのか?クソッ!殴るだけ殴って……!しかも気持ち悪いぞあいつ!」
「……姿を変え、無数の体を持つ魔王……という事でしょうか?思った以上に厄介ですね……」
「だ、大丈夫でしょうか……?あんな魔王……本当に倒せるんでしょうか?」
「だ、大丈夫だって……アリアちゃん!俺がいるんだぜ?」
タカシの強がり。
しかしドッペルゲンガーに対する不安は消えない。
「とにかく進もう。話はそれからだ」
気を取り直してタカシは進み、メンバーも後に続く。
不安を抱える一同……その中で、ミリーがぼそりと呟いた。
『どうして……ドッペルゲンガーは私達の前にわざわざ出てきて、わざわざ自分の力を見せたのかな?』
メンバーはその声に気付かない。
ただただ歩き続けたタカシ達は、歪んだ黒い結界に囲まれた館に辿り着く……
魔王ドッペルゲンガー登場!
今までとは明らかに雰囲気の違う魔王です!でも、実力的にはベリトさんもフェゴールさんも対等以上なんですよ?彼等は運が悪かったのだ……
次回、ドッペルゲンガーとの対決!
館でタカシ達を待ち受けるものとは???