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【改稿版第1部第1話~:ep.101~】『元・食品開発研究員ですが、異世界の食材を「科学」で極上ディナーに変えたら、王国中から美食家が押し寄せてきました』  作者: チョコ大福
【旧版】第1部(辺境の村:ライネ村【食糧難の村】の改革編)

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第16話:パサパサして芯が残る特殊な硬質穀物を、「アミロースとアミロペクチンの比率コントロール」でふっくらモチモチのごちそうに変身させる

「この荒地で育つ雑穀は、どう炊いてもボソボソして喉につかえる。まるで乾いた砂を噛んでるみたいだ……」

冬の備蓄として村人に配られた見慣れない硬質な雑穀は、いくら水を増やして炊いても芯が残り、お世辞にも美味しいとは言えない代物だった。

ただの水分量ではごまかせない穀物のパサつきの正体に、元・食品開発研究員のエドワードが、デンプンの分子構造の科学で鮮やかに切り込む。

寒さが一段と厳しくなった昼下がり、調理場でレオンは大きな木樽に入った灰褐色の雑穀をすくい上げ、頭を抱えていた。

「師匠、これを見てください。寒冷な土地でも育つから今年はこれを大量に収穫したんですけど、普通に鍋で煮ても、水を吸わせても、炊き上がりがパサパサで硬いんです。噛むとボロボロ崩れて、とてもじゃないが毎日の主食にはキツい……」

そこに、大きなリュックサックを背負った旅人の少女――薬草や種子の流通に詳しい商人見習いのレイラが、トントンと戸を叩いて入ってきた。

「あら、その雑穀に手こずってるのね。それ、西の荒れ地で採れる『アイアン・ミレット』よ。耐寒性は抜群なんだけど、村の連中も『どう調理しても砂をかじってるみたいだ』って泣き寝入りしてる厄介者よ。あなたたちに直せるわけがないわ」

レイラは腕を組み、冷ややかな視線を向けた。エドワードは穏やかな笑みを崩さず、その雑穀を一粒手のひらに取り、爪で割ってみてから眼鏡のブリッジを押し上げた。

「ご忠告ありがとうございます、レイラさん。ですが、これは炊き方の問題ではありません。この雑穀が持つデンプンの性質、すなわち『アミロースとアミロペクチンの比率』に原因があります。直鎖状のアミロースが多い品種の穀物は、加熱しても水分を抱え込みにくく、冷めるとすぐにデンプン同士が結びついて硬くなってしまうんです」

1. アミロースとアミロペクチンの分子構造

エドワードは調理台の板に小さな木の実を並べ、デンプンの分子構造をわかりやすく説明し始めた。

「デンプンには、一本の鎖のようにまっすぐ繋がった『アミロース』と、枝分かれした網目状の『アミロペクチン』の2種類があります。モチモチした食感を生むのは枝分かれの多いアミロペクチンですが、この硬質雑穀はアミロースの割合が異常に高い。だから、普通に炊くだけでは水分が内部に行き渡らず、バラバラのパサついた食感になってしまうんです」

レイラは「アミロース……? 分子の鎖?」と目を丸くし、レオンも納得したようにうなずいた。

「分子の形がまっすぐすぎて、水分を抱え込むポケットがないってことか……。じゃあ、この硬い雑穀をモチモチにするなんて無理なんじゃないですか?」

「いいえ、アミロースが多いなら、加熱時の水分吸着スピードと、別のデンプン質による補完ブレンドで構造をコントロールすればいい」

2. 科学的な吸水コントロールと、デンプン補完の魔法

エドワードは硬質雑穀を細かく挽いて粉状にするものと、丸ごとのまま水に長時間浸すものとに仕分けた。

「アミロースの多い穀物は、ただ煮るだけでは芯まで熱が通りません。あらかじめ微粉末にして表面積を増やし、水分を急速に吸着させやすい状態を作る。さらに、粘りの強い別のイモ類由来のデンプン質を微量に混ぜ合わせることで、アミロースの隙間をアミロペクチンで埋める架け橋にするのです」

エドワードが下処理をした雑穀の粉と粒を絶妙な比率で合わせ、独自の火加減と蒸らしの工程で調理していくと、鍋の中からは先ほどまでのパサついた気配が嘘のような、ふっくらとした甘い香りが立ち込めてきた。

その様子を側で見ていたレイラは、香ばしい匂いに思わずゴクリと喉を鳴らした。

3. ふっくらモチモチの食感と、村人たちの歓声

「お待たせいたしました。『アミロースとアミロペクチンを制御した、雑穀のふっくらモチモチ平焼きパン』です」

エドワードが焼き上げた温かい平焼きパンを村人たちに配ると、村の子供たちが恐る恐る口に運んだ。

そして、味見をしたレイラも一口かじり、驚愕に目を見開いた。

「……っ! うそ、あんなにボソボソだったアイアン・ミレットが……もっちもちで、噛むほどに甘みが広がる……!」

村長であるガルドも一口食べて、満面の笑みを浮かべた。

「砂を噛むようだったあの雑穀が、こんなに香ばしくて柔らかいごちそうになるなんて……! これなら冬の間も子供たちのお腹を満たせるぞ!」

レイラは自分が仕入れては売れ残らせていた雑穀が見事に生まれ変わった奇跡を目の当たりにし、エドワードに向かって深く頭を下げた。

「すごいわ……ただの思い込みで『ハズレの作物』って決めつけていた自分を恥じるわね。科学の力って、本当に魔法みたいだわ」

レオンもまた、デンプンの分子構造というミクロな比率をコントロールした今回の料理の妙を噛みしめながら、熱々の平焼きパンを美味しそうに頬張った。

冷たい冬の風が吹き抜ける辺境の村で、科学の知恵がもたらす温かなごちそうは、新たな出会いをも巻き込んで人々の日常をさらに明るく照らし出していくのだった。

そして、人との出会いを通して、エドワードの料理への技術は確かな足跡を残していく。

今回は新キャラクター・商人見習いのレイラを迎え、「硬質雑穀のパサつきとアミロース・アミロペクチンの比率コントロール」をテーマにお届けしました。

ただ煮るだけではどうしようもなかった硬い穀物を、デンプンの分子構造と吸水・ブレンドの科学でふっくらモチモチの絶品へと変身させるエピソードです。

次回は第17話となります。第1部フィナーレへ向けてさらに盛り上がるストーリーを、どうぞお楽しみに!

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