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『元・食品開発研究員ですが、異世界の食材を「科学」で極上ディナーに変えたら、王国中から美食家が押し寄せてきました』  作者: チョコ大福
第1部(辺境の村:ライネ村編)

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第1話:硬くて臭い魔獣肉は、「科学(ロジック)」の【ジューシー生姜焼き】で極上の美味しさに変わる

ご覧いただきありがとうございます!

元・食品開発研究員の主人公が、異世界の食材と「科学的な理屈ロジック」を使って、パサパサの肉やまずい料理を次々と絶品グルメに変えていくお話です。

「お肉を柔らかくするコツ」や「旨味の相乗効果」など、実際の料理でも少し役に立つかもしれない食品科学の知識をこっそり混ぜ込んでいます。

果たして主人公は、食糧難に喘ぐ辺境の村を、そしていつかは王国をどう変えていくのか――。

お腹をすかせながら、のんびり楽しんでいただければ幸いです!

それでは、第1話どうぞ。

「おい、エドワード! またお前、こんなゴミみたいな肉を拾ってきたのかよ!」

ライネ村という辺境の村の片隅。

粗末な木箱に腰掛けながら、村の狩人であるガルドが呆れたような声を上げた。彼の目の前で、白衣を脱ぎ捨てた元・食品メーカー研究員のエドワードは、満足げにうなずいていた。

エドワードが手元に持っていたのは、昨日の狩りで仕留められたばかりの「ブラッド・ボア(魔獣の猪)」の肉だった。

だが、それは一般的な食用肉ではない。魔獣特有の強靭な筋肉繊維を持ち、鉄板のように硬く、おまけに野生の強烈な臭み(獣臭)が鼻をつくため、村では「噛み切れない」「飲み込めない、まずい保存食」として、いつも二束三文で放置されるか、犬の餌にされるような代物だった。

「ゴミなんかじゃありませんよ、ガルド。立派な食材です」

エドワードは眼鏡のブリッジを押し上げながら、穏やかだが自信に満ちた笑みを浮かべた。

「村の皆さんは、『魔獣肉は硬くて臭いものだ』と思い込んでいらっしゃる。ですが、それは間違いです。食材が美味しくないのは、素材のせいではありません。私たちが『科学的なロジック』を知らないだけなのです」

「はぁ? 科学? 何だそりゃ。硬い肉が柔らかくなったり、臭みが消えたりするのかよ?」

「ええ、証明してみせましょう」

エドワードは手際よくナイフを構えた。

ここから始まるのは、前世で培った食品科学の知識をフル活用した、辺境の村の「食の革命」だった。

① 保水性と「筋繊維の切断」の理論

「まず、魔獣肉がなぜ硬いのか。それは、筋肉繊維が幾重にも束ねられ、コラーゲンという頑丈なタンパク質でガチガチに結ばれているからです。しかも、水分の保持力が低いので、普通に焼くと中の水分がすべて逃げ出して、ゴムのようにパサパサになってしまう」

エドワードは魔獣肉をまな板に載せ、繊維の走る方向を正確に見極めながら、包丁の刃を細かく入れていく。

「ですから、まずは物理的に『筋繊維を断ち切る』こと。そして、お砂糖の性質を利用します」

「砂糖? 肉に甘いもんをかけるのか?」

「はい。砂糖には、保水性を高めてタンパク質の結びつきを柔らかく保つ素晴らしい保水効果があるんです。すりおろした現地の果実(酸味と糖分)と砂糖、そして少量の塩を合わせた特製の漬けダレに、肉を漬け込みます」

エドワードが肉をタレに浸すと、肉の表面からじわじわと成分が染み込んでいくのが分かった。

② メイラード反応で「香ばしさの魔法」をかける

「そして、仕上げの焼き方ですね。ただ火を通せばいいというわけではありません。これを見てください」

エドワードは熱した鉄板に、タレに漬け込んだ肉をスライドさせた。

『ジュウウウウッ……!!』

一瞬にして、脳の芯まで揺さぶられるような、強烈で香ばしい匂いが辺りに立ち込めた。

ただの野性味あふれる獣臭は完全に消え去り、醤油と生姜(に近い薬味)が焦げたような、圧倒的な食欲をそそる香りが調理場を包み込む。

「うまっ……!? なんだこの匂いは……!?」

ガルドが思わず生唾を飲み込んで立ち上がった。

「これが『メイラード反応』です。糖とアミノ酸が加熱によって結びつき、何百種類もの香ばしい香り成分と、あの食欲をそそる美しいきつね色を作り出す。科学的な仕組みを理解していれば、どんなに野性的な肉でも、最高の一皿に化けるのですよ」

③ 絶品! 異世界初の生姜焼きの完成

エドワードは手早く肉を皿に盛り付け、最後に特製のタレをひと回しした。

そこにあったのは、かつての硬くて臭い魔獣肉の面影など微塵もない、艶やかに輝く【極上の生姜焼き】だった。

「お待たせいたしました。熱いうちに、どうぞお召し上がりください」

ガルドは震える手でフォークを取り、黄金色に輝く肉の塊を口へと運んだ。

「…………っ!!!?」

ガルドの目が見開かれ、言葉を失った。

『柔らかい……!』

噛み締めた瞬間、筋繊維がほどけるようにスッと歯が通り、中からじゅわっと濃厚でジューシーな旨味が溢れ出す。果実の酸味が肉の脂をすっきりとさせ、生姜の香りが鼻腔を心地よく抜けいく。あのゴムのように硬かった魔獣肉が、嘘のようにとろける旨さに変わっていた。

「う……うまい……! うまっ……!! なんだこれ、本当にあの魔獣肉か!? 嘘だろ、こんなに柔らかくて、とんでもなく美味い肉なんて、王都の貴族だってみたことねえぞ……!」

ガルドは夢中で肉を頬張り、あっという間に皿を空にしてしまった。

「ふふ、お気に召していただけたようで何よりです」

エドワードは眼鏡を押し上げながら、満足そうに微笑んだ。

食糧難に喘ぎ、硬い保存食に絶望していた辺境の村。

だが、食品科学という名のチートさえあれば、どんな食材だって極上のディナーに生まれ変わる。

エドワードによる異世界グルメ革命は、こうして静かに、しかし確実に幕を開けたのだった。

お読みいただきありがとうございました!

記念すべき第1話、いかがでしたでしょうか。

「ただの硬くて臭い魔獣肉も、タンパク質と水分の理屈(科学)を知っていれば、最高の生姜焼きになる」というのが今回のテーマでした。

(※ちなみに作中で使った「塩・砂糖による保水」や「酵素による軟化」「メイラード反応」は、現実の私たちの自炊でもそのまま使える実用的なテクニックです)

次回は、硬くて噛み切れない保存用の干し肉を使った【絶品ポトフ(またはシチュー)】の回を予定しています。コトコト煮込むことで旨味が爆発する仕組みをお届けします!

「おもしろかった」「お腹が減った」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク登録】や【評価(☆☆☆☆☆)】をよろしくお願いいたします! 皆様の応援が執筆の大きなエネルギーになります。

それでは、また次話でお会いしましょう!

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