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僕の彼女  作者: 時雨
1/2

夜景デート編

 午後五時半。外はすでに真っ暗な中僕の乗った列車は眩しいホームへと進入する。

 僕自身台場には何度か行ってはいるが夜日が落ちた後に行くのは初めてだ。

 ホームドアの前でピタリと止まりドアが開いた。

 階段を使ってゆっくりと降りていくと同時にコンコース階に着いたエレベーターから彩花ちゃんの姿を捉えた。同じ編成の別の号車に乗っていたのだろう。

「あ。」

 思わず小さく声が出てしまった。

 ブルーのロングスカートにベージュのノーカラーコートを着こなしている僕の彼女の彩花ちゃん。

 彩花ちゃんは僕を見ると足早に駆け寄ってきて「よっ!」と言いなから右肩にソフトタッチな肩パンをしてきた。

「久しぶり。…と言っても毎日SNSでやり取りしてるから久しぶりて感じまでではないか。」

「まあね。でも会うのは一ヶ月ぶり?お疲れ様です。」

 そう言って頭をペコリと下げられてしまった。

「しかし、あんなに暑かったのに急に寒くなりましたよね。それにあっという間に暗くなってしまって。一年は早いです。」

 そう彩花ちゃんが話ながら僕らは改札を出る。

 そういえば九月でも当たり前の用にクーラー付けていたっけ?今は春と秋がどこかに行ってしまったような気がする。

「私都民でありながらもお台場に関してはあまり詳しくないんですが。何があるか分かりますか?」

「都民じゃない僕に言われても…このあたりだとそこのデックスと、ダイバーシティと…ガ○ダム?あとフ○テレビ」

「意外と詳しいんですね。」

 いや、そんなわけない。もっとあるはずだ。というかゆり○もめでもだいたい同じ案内してるはずだか。同じ列車に乗ってたがお主は聞いてないのか?

 雑談しながら海に向かうため一度建物内へ入る。

 そして道なりに進んで…

 道なりに進んで……

 進んで………

「ところで私達はどこに向かってるんですか。」

「分からない。…ごめん。迷子になったかも。」

 我々は一体どこに向かっているのか。一フロアをうろうろしながら一周してしまった。

 どこかに地図…フロアマップはないのか…。

 テンパりつつある僕に横から袖を軽く引っ張られた。

「そこに出口っぼいの見つけました。」

 彩花ちゃんが指差した方向には仄かな光が窓越しに伝わる自動ドアが設置されていた。

 渡りに船を得た僕は海が見えることを願いながらその自動ドアから出るとレインボーブリッジを背景にした綺麗な夜景が眼下に現れた。

 寒く空気が澄んでいるためか東京の街並みがとても綺麗に輝いていた。函館はよく100万ドルの夜景と言われているがここは何万ドルの夜景になるのだろうか。

 建物沿いに作られたウッドデッキの道。そういえば周り全部木でできているな。

「心なしか道が柔らかく感じます。」

「柔らかい?」

「はい。舗装されたアスファルトの道ってデコボコしているじゃないですか。なのでそう感じただけで…そう感じませんか?」

 僕が鈍感なせいなのか。柔らかいとまでは思わないが歩きやすさは一般的によくある歩道よりかは歩きやすいのは確かだった。管理がしっかり行き届いている証拠だろう。

 ライトに照らされたウッドデッキの道を進んでいくと一際賑わっている所を見つけた。

 どう見ても『観光客』な人たちがカメラを向けてる先には白く照らされたレインボーブリッジ。そして奥には東京タワーとビル群が光り輝いていた。

 僕達もここで自撮りの記念写真を撮ろうとなったのだが彩花ちゃんが少し進んだところで立ち止まった。

「どうした?」と聞くと「もう少し空いている所で撮りませんか?他人が写っちゃいますし、消しゴムマジックもないので…」と提案してきた。

 そういえば人込み苦手なタイプだっけ…。行こうとしていたお店が行列だったりしてると「変えようか。」というくらいだし。

 その提案で僕達は少しだけ戻って高架下が交差点の橋の上でツーショットの自撮りをした。

「後でこの写真僕にもください。」と言うと彩花ちゃんは二つ返事で「いいよ」と言ってくれた。

 優しいパートナーで僕はなんて恵まれているのだろうと改めて思う瞬間だった。

「ちょっといいですか。」

 感慨に浸っていると彩花ちゃんは少し申し訳なさそうに聞いてきた。

「そこにビーチがあるじゃないですか。そこで少しゆっくりしたいのと、あと…少しお腹が空きました。」と少し照れくさそうに話した。

 そういえば今日僕も朝ごはんのパンしか食べていない。腹が減ったといえば減った。

「ちょっとわがまま言ってもいいですか?」

「はい。何でしょうか?」

 もうちょっと軽くていいのだが思わず敬語になってしまった。

「あまりしっかりとしたのは食べる気分ではなくて。小腹を満たす程度で済ませたいんです。

 そうなるとレストラン街などは全て除外されることになる。となると地上や駅の連絡橋の先にあったアイス…で満たせるものなのか?

 ただ二択なのは確定なので少し迷った結果


 とりあえず降りてみることにした。


 降りて横断歩道を渡った先にコンビニがあったが『コンビニ…うーん…ここまで来て軽食食べにコンビニは違う気がする。』と思い最終手段として取っておくとして…とその斜め奥にキッチンカーが一台ドンと構えているではないか。

 この瞬間コンビニ案は一瞬にして破綻した。

 彩花ちゃんもこれには賛成してくれたのでここで選ぶことにした。

 キッチンカーはトルコ料理屋さん。中には小太りな外国人の人が暇そうに座っていた。

 メニューはケバブ料理が数種類とよく遊ばれるトルコアイス。味は六種類。

 寒い中アイスを食べるのは少し気が引けるのでケバブ料理が食べたいが、写真を見る限り下に白米が入っているので腹は満たせそうな気がした。

 小腹満たしはできなさそうと思い今晩の晩御飯はこれでいいかな。と思っていたところに『おつまみケバブ』という名前に目が止まった。写真を見る限り肉と野菜だけ。小腹満たしには十分だろう。

「おじさん。この『おつまみケバブ』ていうのください。」

「私もそれください。」

「2つね。かしこまりましたー。」

 流暢な日本語。もうここ長いのかな?

 てきぱきとした動きで野菜を炒め、肉をそぎ落としてあっという間に「お待たせしましたー」と二食分箸と一緒に袋に入れてくれた。

 …さて、ご希望のビーチだけど…横断歩道渡って海につながる細い道を通れば行けるかな。

 横断歩道を渡って反対側へ行き、近くの海につながっているであろう細い道を進む。

 すぐに道が開けてその瞬間絶景を拝むことができた。


 意外とこのビーチ…広い。


 周りには犬の散歩で来てる者。

 僕らみたいなカップル。

 友達(もしくは親子)で来てる者と様々である。

 夜間でかつシーズンオフだからか人もまばらだ。

 少し先の方では新婚さんだろうか。ウエディング姿の人が写真を撮られていて、カメラマンの近くには新郎さんとみられる人もいた。

 僕たちは砂浜とコンクリートの間にできている段差に腰かけ、いい香り漂う容器と箸を彩花ちゃんに手渡した。

 僕自身も袋から取り出し、中央に掛けられた輪ゴムを取り外した瞬間湯気とキラキラとしたお肉が五感をくすぐってきた。

 ザクっと思いっきり箸を突っ込んで下に敷かれているキャベツと一緒に食べてみる。

 たれ自体そんなに使われてないのに肉にたれがしみ込んでて…でも肉のうま味が残ってて…それに何より…

 キャベツうまっ!(語彙力損失)

 お隣の方はキャベツとお肉を交互に食べてじっくりじっくり無言で食べていた。

 冬の透き通った東京臨海部の夜景。冬ということもあってかさらに綺麗に写ってそれを彩花ちゃんと一緒に見れるということは最高の幸せだと思う。

 綺麗な夜景を見ながらたわいのない話をしていたら容器の中のケバブがすべて胃袋に収められてしまっていた。

 二人とも食べ終わってしまったあと彩花ちゃんから「写真撮ってくれませんか?この綺麗な夜景をバックにポートレート撮ってほしいです。」とお願いされた。

 ならばお望みどおりにと思い僕はスマホのカメラを起動した。

「いい写真お願いしますね。」

「勿論。」

 とはいえどもカメラのホワイトバランスとかは完全にオートである。

 彩花ちゃんは本当にポーズがうまい。シャッターが切れたのを感じ取ったらすぐに次のポーズを出してくる。

 そして尊い…!

 十枚ほどだろ撮ったうか。タッタッタッと小走りしてきて「一緒に写ろう!」と言って自分のスマホを取り出し、インカメで『カシャリ』と一枚ツーショットを撮った。

 相変わらず僕の笑顔は下手くそだ。若干引きつってる。

「後で写真交換しましょ。」と笑顔を見せる彩花ちゃん。その後申し訳なさそうに口を開いた。

「それで…このままずっと一緒にいたいのは山々なんですけど…」

 そう言って自らの腕時計を指さした。

 時刻はあっという間に午後九時を回ろうとしていた。明日が仕事であることを考えるとリミットタイムを過ぎていた。

「悲しいけど帰りましょうか。新橋まで一緒に帰りましょう。」

 彩花ちゃんは無言で小さく頷いた。


 車内は偶然にも全面展望の二席が空いていたので僕たちはそこに座った。

「今日はほぼ僕のわがままだったけど、付き合ってくれてありがとう。」

 彩花ちゃんは人が変わったかのように無言だった。

「もし、嫌でなかったらなんだけど今度また一緒に…」

 その瞬間次の駅に止まって小さな男の子が僕の隣に座って興味津々に前を見つめていた。

 そんな無実で純粋な男の子に私は突如として現実を突きつけられた。

 そう。僕は…


 元々彼女なんていなかった……。



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