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ハズレ職業【フリーター】を授かった少年アルト、王都で騙されて多額の借金を背負う。しかし、修復スキルでガラクタを綺麗にして売りさばいて最下層の泥底から成り上がる!  作者: 月曜日の憂鬱
ファビアン編

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初めての・・・

 「アルトさんは、すごいですね」


 ルーナは、アルトの話をすべて聞き終えると、花の綻ぶような笑顔を見せた。


 「私と同じ『ハズレ職業』なのに、腐ることなく、職業の特性を最大限に引き出して、あの泥底で大活躍しているんですね。本当に尊敬します」


 ルーナに真っ直ぐな瞳で褒められ、アルトは顔を真っ赤にして首を振った。


 「そ、そんなことないよ。僕1人では何もできなかったんだ。僕の力を最大限に引き出してくれたのは……」


 アルトはそこで言葉に詰まった。その名前を口にするには、今の彼はあまりにも大きな十字架を背負いすぎていたからだ。しかし、彼は意を決して続きを口にした。


 「今の僕があるのは、トビーのおかげなんだ」


 アルトは夜空を見上げ、亡き相棒の顔を思い浮かべた。

 

 「確かに、トビーは僕を騙し続けた悪い奴だよ。でも、僕が泥底で上手くやっていけるのも、こうしてルーナさんを救うことができたのも……全部、トビーが僕に道を作ってくれたおかげなんだ。僕はトビーにはとても感謝しているよ。……でも、僕はそんなトビーを……」


 再び言葉が詰まる。喉の奥が熱くなり、視界が歪んだ。


 「うっ……ぐすっ……」


 堪えきれない涙が溢れ出し、アルトの頬を伝う。アルトが苦悶の表情で震えていると、ふわりと温かい空気が彼を包み込んだ。ルーナが、アルトをギュッと抱きしめたのだ。


 「あ……」


 アルトは、ルーナの柔らかくて暖かい温もりと、甘い香りに包まれ、凍り付いていた心がじんわりと溶かされていくのを感じた。


 「アルトさん」


 ルーナは優しく名前を呼んだ。その声に励まされ、アルトは自分の中に渦巻く最大の罪を告白した。


 「僕が……トビーを見捨てたから、トビーは殺されたんだ」


 アルトの声は嗚咽で途切れ途切れになった。


 「あの時、僕が『トビーが必要だ』と言っていれば……トビーは死なずに済んだはずだ。僕が……僕がトビーを殺したんだ!」


 アルトは叫ぶように言った。自分は卑怯で、恩人を死に追いやった醜い人間なのだと、ルーナに告白した。これで彼女に軽蔑されても仕方がないとすら思っていた。しかし、ルーナはアルトを離そうとはしなかった。それどころか、さらに強く、壊れ物を守るようにアルトを抱きしめた。


 「アルトさんのせいではありません」


 ルーナの声は、慈愛に満ちていた。


 「アルトさんが何を言っても、トビーさんは殺されていたと思います。アルトさんは利用されただけです。だから、自分を責めないで……」


 裏社会とは非情なものである。トビーの死は組織の決定事項であり、アルト1人の言葉で覆せるものではないだろう。


 ルーナの確信に満ちた言葉と、背中を優しく撫でる手のひらの温もりに、アルトの呼吸は次第に落ち着きを取り戻していった。罪悪感が消えることはないが、その重みを彼女が一緒に支えてくれた気がした。アルトは涙を拭い、恐る恐るルーナの顔を見た。


「ありがとう、ルーナさん。……こんな醜い僕だけど、次も会ってくれますか?」


 不安げに揺れるアルトの瞳。ルーナは、その瞳を愛おしそうに見つめ返し、微笑んだ。


 「もちろんです。アルトさんは、とても素敵です」


 そう言うと、ルーナはゆっくりと長い睫毛を伏せて目を閉じた。そして、期待するように少し顎を上げ、桜色の唇をそっと(つぐ)んだ。その仕草の意味に気づいた瞬間、アルトの心臓が早鐘を打った。


 (こ、これは……キスをしてもいいってこと……?)


 アルトは緊張で喉がカラカラになり、唾をごくりと飲み込んだ。夜の公園、ライトアップされた噴水の音、そして目の前で待ってくれている愛しい人。アルトは、自分の気持ちに素直になることを決めた。彼は震える手でルーナの肩に触れ、ゆっくりと顔を近づけた。近づくにつれ、彼女の吐息がかかる距離になる。世界から音が消え、ただ2人の鼓動だけが響いているようだった。アルトは、ルーナの柔らかな唇に、自分の唇を重ねた。触れた瞬間、電流が走ったような衝撃と、蕩けるような甘い感覚が全身を駆け巡った。それは、不器用で、初々しく、けれど何よりも純粋な口づけだった。


 噴水の水明かりが2人のシルエットを幻想的に照らし出し、まるで祝福するかのように輝いていた。


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