表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレ職業【フリーター】を授かった少年アルト、王都で騙されて多額の借金を背負う。しかし、修復スキルでガラクタを綺麗にして売りさばいて最下層の泥底から成り上がる!  作者: 月曜日の憂鬱
トビー編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/63

遺言

 突如として姿を現したアルトの姿を見た瞬間、トビーは張り詰めていた精神の糸が断ち切れたかのように、大声で笑い出した。


 「ハッハッハッハッハッハッハッ!!」


 それは、滑稽で、哀れで、そしてどこか狂気に満ちた笑いだった。トビーが全身全霊で作り上げた千秋楽が、最も信頼していた協力者(駒)の登場によって崩壊したことへの、絶望と諦念の笑いだ。その声は会場の隅々に響き渡る。


 トビーは約3分間、笑い続けた後、猟奇的な視線をアルトへと向けた。


 「アルト……」


 トビーはアルトを飲み込むように言葉を発する。


 「おまえの力を最大限に引き出すことができるのは俺だ。それはお前が一番よくわかっているだろ」


 トビーは、最後の話術を繰り出す。


 「アルト、その男に言ってやれ! 『僕はトビーが必要だ』と! それが、お前が泥底から抜け出して、故郷の母を助けるための唯一の手段だ」


 トビーの呼びかけに、アルトは顔全体を涙と憎悪で歪ませた。アルトの瞳には、友情を裏切られた痛みと、再び道具として利用されそうになった怒りが燃えていた。


 「もう、お前なんか信じない! 絶対に信じないぞ!」


 アルトは喉が張り裂けんばかりに叫んだ。


 「お前の足りない脳ミソでよく考えろ!」


 トビーは声量を上げ、力説する。


 「お前には何度も言ったはずだ。この王都で生き残るには知識と仲間が必要だと。お前の隣にいる男は、恐怖で相手を服従させる冷酷な独裁者だ。お前の【仲間】ではないぞ。お前には俺が必要なはずだ。冷静になって考えろ。お前にとって必要な人物は誰なのか!」


 トビーの言葉は論理的だった。ヴァレリウスを恐怖の独裁者と断じ、自らの利用価値とアルトの利益を結びつける。しかし、既にトビーの言葉は、アルトの心には届かない。アルトは泣き崩れそうになりながら、憎悪を込めて吐き捨てるように叫んだ。


 「だまれ!お前よりかは……マシだ!」


 その言葉を最後に、アルトは嗚咽を漏らしながら、来た時と同じように影の中へ逃げるように立ち去った。アルトの決別を目撃したヴァレリウスは、トビーに向けられていた最後の関心を断ち切った。トビーの表情は、相変わらず冷徹なままだ。


 「エドワード。お前が持つ才能は非常に利用価値が高い。それは認める」


 ヴァレリウスは静かに、しかし有無を言わせぬ決断を告げる。


 「だが、お前はワシの野望の行く末に危険要因となる可能性がある。ワシの邪魔をする可能性がある者は、排除する」


 ヴァレリウスは、トビーの背後に立つシュペーアーに、冷たい目で命じた。


 「シュペーアー、コイツの頭を斬り落とせ。そして、裏切者の証として、泥底の1番目立つところへ晒しあげろ」


 シュペーアーは、微かに恭しく一礼し、静かに答えた。


 「御意」


 トビーは死を宣告されたにもかかわらず、その場に跪いたまま、背筋を伸ばした。彼の顔から恐怖は消え、最後に残ったのは、燃えるような執念だけだった。


 「俺は負けていないぞ! ヴァレリウス!」


 トビーは、最期の力を振り絞って叫んだ。


 「俺は、必ずお前を王都の闇の王から引きずり落として、家族の汚名を晴らしてやる!」


 トビーがその言葉を言い終えるのを待って、シュペーアーは無言で愛用の剣を抜いた。


 「エドワード様、みごとな最後です」


 シュペーアーは、トビーの才覚を認める者としての、最後の慈悲を込めた一言を捧げた後、一閃。剣は、最後まで堂々とした態度を崩さなかったトビーの頭を、瞬時に胴体から斬り落とした。シュペーアーは、流れ出る血には目もくれず、落ちたトビーの頭を大事に拾い上げ、用意された布の袋の中に静かにしまった。


トビー編が終了しました。ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。よろしければ★での評価をして下さると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ