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第9話 村の防衛設備をアップグレード

 ゴブリンが来る。


 慌てふためく人々は、村を捨てて領都に逃げなければならないのかと不安げな表情を見せていた。


 彼ら彼女らのほとんどは自然の中でこそ役立つスキルを持っている。街に出ればそれらのスキルは全く無意味なスキルに成り果ててしまうのだ。


 『狩人』は言わずもがな、『家庭菜園』だって、土地が無ければ意味がない。


 その事が分かっているからか、人々の動きはすこぶる鈍かった。

 そのうち、どうせ街に出ても生きていけないのだから、それなら村で死ぬという人も現れ始めていた。


 うちの両親はその点、決断が早かった方だ。


 ゴブリンナイトが罠にかかったその日の夜には、子供のことを考えて開拓村から母の実家がある別の村へと移住しようという話が出たのだから。


「この村はもう時期ゴブリンの大群に襲われて無くなる。だから、俺たち家族は母さんの実家のある村に移住する」


「そんな……でも、そこで狩人の仕事はあるの?」


 兄ちゃんの問いに黙ってしまう父さん。

 母さんの実家は『大農家』のご先祖様が土地を開拓し、農地にしてしまった。だからモンスターはそもそも数が少ないし、出たとしても昔からその土地に住んでいる狩人が対処してしまうので、新しい狩人は必要とされない。


「マルス、お前には辛いことになってしまう。すまない」


「いや、父さんのせいじゃないし、生き残るためだから仕方ないよ……」


「あなた……」


 皆お通夜ムードだな。


 正直、俺はこの村の外を見てみたい気もしている。だけど、前世で故郷の家を失って二度と帰れなくなった経験から、こんなボロ屋でも離れがたいのが本音だ。


 それに、いつかはこの家をリフォームして快適に過ごすと決めているしな。


「ねえ、ゴブリンが村を襲うとして、襲われるまであとどれくらい時間あるの?」


 俺がそう尋ねると、父さんが少し考えてから返してくれる。


「あくまで父さんの感覚での話だが、あと1、2週間と言ったところだろうと思う」


 となると、残り1〜2週間か……オババの力を借りれば、なんとか間に合うかもしれない。


 俺がいま頭の中で考えているのは、村を囲む柵の建て直しと、濠ほりについて。


 ゴブリンは力はあるけど身長は低いし、知能もそこまで高くはない。

 無理やりに登れない高さがあれば柵も十分に機能するだろう。


 それでも仲間を踏み台にして柵をよじ登ってくることも考えられる。だから柵の周りに濠ほりを作って高さの水増しをしたい。

 昔の日本の城でも、高い石垣と城を囲う濠ほりが防衛力を上げていた。頭の弱いモンスター、しかも飢餓状態の相手ならかなり有効だろう。


「父さん、俺やっぱり村を離れたくない」


「カイララ、我儘を言うな。父さんも母さんもその気持ちは同じなんだ。だけど、それよりも何よりもお前たちの命が大切だから、村を離れると言っているんだぞ」


「でも俺の『設計図』なら村を守れるかもしれないんだ!」


 俺の言葉を聞いて、父さんと母さんが困った顔をする。分かるよ、子供の我儘と言えない説得力が『スキル』というものには秘められているもんな。


 『設計図』のスキルを持っている俺がそう言うなら、本当にその可能性はあるのだと2人は分かってしまったのだ。


 この説得が成功するかどうかが、俺たち家族と村の運命の分かれ道になる。


 俺はじっと父さんの目を見つめながら待つ。


 しばらく静寂がその場を支配し、数分後、父さんは静かに口を開いた。


「どんな方法で村を守るのか、説明してみなさい」


 よし来た。


 俺は早速考えていた事を話し始めた。柵の強化と濠ほりについて。

 そしてとっておきのある秘策についても。


「……なるほど、カイララの考えはよく分かった。だが、柵を作り直すといってもその材料はどうする? それに、そこまで大掛かりな事をするには時間が足りないんじゃないか?」


「材料についてはオババの家の裏手に木材がたくさん積んであるからそれを使う。足りなかったら木こりの人に採ってきてもらう必要が出てくるかもしれないけど、多分その場合でも少し補充するだけで足りるはずだよ。あとは時間についてだけど、こっちも大丈夫。俺のスキルで指示を出した人は作業効率が段違いになって、数日かかる作業が1日で終わるんだ」


「そうは言ってもこの作業は規模が違うぞ。お前のスキルでは、まだそこまで大規模なものは作ったことがないんだろう?」


「ないよ。それに、今の俺のスキルレベルじゃ指示出しできるのは5人まで」


「それじゃあ……」


「だけど、俺のスキルレベルはあと1上がればで40になるんだ。そうすれば指示出しできる人数は増えるし作業スピードもさらに上がる。今までのレベルアップの傾向からして、間違いないよ」


「なるほど……それで、レベル40に上がる試練はなんなんだ?」


「『設計図』のスキルレベル40の試練は『中規模以上の設備製造を開始すること』。つまり、スキルレベルは村の防衛設備を作り始めた瞬間に40に上がる」


 それを聞いた父さんは、黙って椅子から立ち上がり、俺の手を取って家の外へ出た。夜の静けさの中、星空の下をまっすぐに歩く。


 父さんが俺を連れて行ったのはとある人の家。この村の村長の家だった。




 ◆◇◆




 翌日、村から去る事を決めた人々を見送ったあと、俺たちはさっそく防衛設備のアップグレードを開始した。


 その途端に、俺の『設計図』のスキルレベルが上がる。

 その結果、指示出しできる人数が10人に増えた。これで作業はさらに効率化され、かつスピーディになるだろう。


 まずは柵を建て直していく。

 古い柵を抜いたら、4メートルはある丸太の先端を尖らせるように加工して、地面にしっかり固定されるように深く差し込む。

 差し込んだらオババに固定化の魔法をかけてもらい、さらに強度を上げた。この作業は父さんも含めた大人の狩人の皆さんの力を借りた。この村では一番体力のある人たちだ。


 それと同時に、残りの人たちには穴掘りの仕事をしてもらう。


 穴は先端を鉄に変えたスコップで掘り、50センチぐらい掘ったら移動をくり返して村を一周させる。


 どうも穴掘りに関してはマリーちゃんや母さんのように『家庭菜園』のスキルを持っている人たちの力が大きいようで、思っていたよりもハイペースで作業が進んでいる。

 特にマリーちゃんは一心不乱に穴を掘り続け、1人でかなりの範囲を掘り返していた。


 菜園ではないが、ただ土を掘ることでもスキルレベルが上がるようで、『家庭菜園』のスキルを持っている方々は、作業をすればするほど穴を掘るのが上手くなっていく。これなら思ったより早く作業完了になりそうだ。


 その日、朝から晩まで作業を行った結果、村を囲っていた柵は全て建て直しを完了することが出来た。濠ほりのほうも、もう少しで作業が終わりそうなところまで来ている。


 ここまでうまくいくとは、俺も正直驚いている。早くても3日は掛かると思っていたのに、スキルの効果というのは凄いものだ。


 スキルと言えば、この作業のあいだに『設計図』のスキルレベルがどんどん上がっていって、既に45まで来ている。明日以降の作業によっては明後日にはレベル50になるかもしれない。


「明日はとっておきの準備と、余った時間で出来るだけの武器を作るか。あと、物見塔も欲しいな」


 まだまだやる事はある。実際のところゴブリンの群れの規模が未知数だから、準備はし過ぎるほどしておいて損はないはずだ。


 ゴブリンどころかゴブリンキングを倒すぐらいの気持ちで、準備を進めよう。

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