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第62話 王都炎上と地獄の兆し

 王都が燃えている。


 その知らせは管制塔にいた者たち全員を激震させた。


 そもそも、俺たちは王都が敵に落とされることなど考えてもいなかったからだ。


 王都はこの国で最も進んだ技術に溢れる未来都市であり、最強最高の魔法が生きる魔法都市でもある。


 王都の魔法障壁はそれこそ他の都市とは比較にならないほどに固く、絶対防御としてその名を冠していた。


 絶対に破られない虹の魔石の膨大な魔力から作られた魔法障壁。


 それがまさか破られるなんて……!


「至急詳細な状況を確認するんだ! 王都からの連絡は!」


「ありません! 魔法文字転送も、伝書鳥も来ていません!」


「ちっ、ならば戦闘機での高高度からの偵察を行え! せめて王城の状況だけでも調べろ!」


 いつの間にか兵士たちが忙しく動いている。辺境伯様は血相を変えて怒鳴るようにその兵士たちに指示を出していて、いつもの静かで厳格な雰囲気は消し飛んでいる。


 俺たちはその場で立ち尽くすことしか出来なかった。


 この状況で特殊な立場とは言え兵士でもない一般人に出来ることなど何も無かった。


「カイララ」


「ガッケノ、俺たちに何かやれることはないか?」


「今のところは無いな。だが王都の状況が分かればその後の動き方も見えてくるはず。今は互いに大人しく待とう」


 その後、待機していたF-14戦闘機2機も偵察に向かい、多方向からの王都の現状が徐々に見えてくる。


 最初から飛んでいた1機は無線での口頭報告を行い、残りの2機はカメラとビデオカメラによって撮影し持ち帰った。


 そして、俺たちはそれらの情報から衝撃の事実を知ることとなる。


「な、なんだと!? 魔法障壁は壊されていない!?」


「で、でもこの写真にも映像にも住民たちが襲われている場面が映っているぞ。どういうことなんだ?」


 魔法障壁が破壊されていないのに、街中には明らかに襲っている者と襲われて逃げている住人たちがいる。


 知らないうちに敵が王都に侵入していたのか?


 だけど、あの王都の入場システムがそんな不審な者たちを見逃すとは思えない。それに敵は魔族、王都にはそもそも魔族は入れないようになっているはずだ。


 まさか敵に協力している人間がいるということはないだろうな。


 ……いや待て。そうだ、なんで忘れてた。そう言えばあの魔導人形は帝国が作った物だという話だったじゃないか。


 ダンジョンを消した獣人たちが魔導人形を戦力として使っていたのを考えると、魔族と帝国が繋がっている可能性は大いにある。


 ならば帝国の人間に変装させて潜り込ませたということもあり得るんじゃないか? 

 そうしてまず帝国の少数精鋭が中に入り、障壁を解除して魔族を招き入れる算段かも知れない。


「辺境伯様、この王都を襲撃している者たちは帝国の人間ということは考えられないでしょうか」


「魔導人形の件からそう考えたのか。確かに魔導人形は帝国で作られた物だ、仮に奴らが協力関係にあったとしても帝国の人間が障壁の中に入るということはまずありえない」


「なぜです? 同じ人間なら移住者と偽れば王都に入れるのでは……?」


「このアストラル帝国と隣国であるヴァルカン帝国は以前戦争をしていたという話はしたな。それ以来、帝国からの移住者は絶対に王都には入れないようになっている。移住はできても王都以外にしか住めないのだ」


「で、では帝国からの移住者は絶対に王都に入れないのですね」


「ああ、帝国からの移住者が5世代にわたり王国領で暮らして来たという記録があれば別だが、それに該当する者が出るのはまだかなり先の話だ」


 だとするとやっぱり敵に人間がいるというのは考えづらいか。


 しかし、だとしたらどうやって敵は障壁の中に入って王都を襲っているんだ?


「ふーん、こりゃあ盲点だったねぇ」


「なにか分かったの? オババ」


「ああ、この映像の敵兵士の動きをよく見てみな。個々に見るんじゃなくて、全体を見るんだよ」


 そう言われてその場の全員が映像を注視する。そして、1つずつ確認していくと、3人目を見た所で違和感が出て来た。


 動き自体には特におかしい部分は無い。遠目からでもただの人間の兵士だ。だが、全体で見て行くと、この兵士たちの動きはどこか完璧に重なるような部分が所々に見られたのだ。


 腕を振り上げる角度、歩く際の足の上げ方、武器を使う時の指さしの仕草。


 どこかその動きは、気持ちが悪かった。


「こいつらは魔導人形だ」


「魔導人形? しかし、我々が目撃したものとはずいぶん違うが」


「この日のために用意した新型なんだろうね。でなければ魔導人形が障壁を突破するなどありえない。より人間らしい動きをする、高性能な魔導人形に王国の住人の魂を入れる。それによって奴らはほとんど抵抗もなく障壁を突破したんだろう」


 な、なるほど! ということは、男爵領の領都はその実験のためにああなっていたのか!


 王国は広い、街や村から人が少し消えたところで誰も気づきはしないんだ。男爵領の領都でも最終的に住人の幾らかは見つからなかった。敵に殺されたか逃げたのだと俺たちは判断していたが、結局その人たちも魔族に連れ去られていたんだろう。

 

 少しずつ集めた王国の人間は派手な出来事に隠されて連れ去られた。そして、新型の魔導人形は1人の魂で複数を動かせるように改良されている。そう考えればあの数の魔導人形が同じ動きをするのにも合点がいく。


「父上、今後の対応はどうされるのです。軍を動かすにしても各所の守りのこともあります。あまり動かせませんよ」


「分かっている。だが動かさないわけにはいかん。王都の危機は国の危機なのだからな。それと伯爵領の領都と男爵領の貿易都市にも連絡して、住人たちを辺境伯領に避難させる。そのためにも軍の派遣は必要だ」


 とは言っても、動かせる兵士の数にも限りがある。俺が魔導人形を動かしたとしても、戦闘用ではなく作業用に改造してしまったから戦力にはならないし……


 伯爵領には伯爵領軍もいるし、貿易都市にも一応衛兵がいる。


 貿易都市の方は男爵領での魔族の動きをいち早く察知するために残っていた少数のみなので、辺境伯領に避難させるのはまだ楽だ。だけど、伯爵領は領都に数万人単位の人々が残っている。一筋縄ではいかない。


 どうしたものか。そう考えこんでいると、外からコンクリートの壁越しにガッケノを呼ぶ声が聞こえた。


「ガッケノ! ここにおるのだろう! 緊急事態だ、早く出てこい!」


 この声、ドラゴンのリクセンか?


 皆で外に出ればそこにいたのはやっぱりリクセンだった。ただ、相当に焦っているようで、ガッケノの姿が見えた所で飛びつかんばかりに翼を動かして近寄って来る。


「やはりおったか! 一大事だ、モンスターの群れが南の禿山を越えて向かって来ておる! それに加え、海側からもかなりの大群が近づいているのが見えた。このままではお前たちの住む土地はモンスターに飲み込まれてしまうぞ!」


「な、なんだと!?」


「敵の数はどれ程だ。アタシたちで相手できる数だと思うか?」


「む? なんだ、お前たちもおったのか。いや、我の見たところでは無理だ。我らが手を貸したとしても禿山の方を抑えるのがやっとで海まで手が回らん。おまけに男爵領とか言っておった山向こうからも徐々にモンスターが来ておる。あちらも相当の数だぞ」


 クソッ! もう男爵領のモンスターが来てるのか。予想よりも足止めの効果が薄い。


 全員がこの事態に押し黙る。


 そんな中、俺はガッケノの視線を感じていた。


 近づき、他には聞こえないような小声で会話する。


「カイララ、もう選択肢は無い」


「ああ、あれを使うしかないな。ただ、上手く行くかどうかは分からないぞ」


「それでもやるしかないんだ。無理なら切り捨てる冷酷さが今は必要だ。だが、私は信じているぞ。お前の力ならやれるとな」


「……はっ、そこまで言われたんじゃ、期待を裏切るわけにはいかないよな」


 やってやるさ。


 今がこの『製造スキップ』の使い時だ。

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