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第57話 魔導列車とスキルレベル100

 「魔族が村の近くにあるダンジョンを闇魔法で消してしまってから3か月。あれから俺たちはそれぞれのやるべきことを全力でこなしてきた。


 ガッケノは獣人たちとの話し合いの結果、獣人のうちの一人とダンゴ、それから騎士長の三人で魔族領へと向かい、極秘のルートで少しずつ獣人たちを開拓村へと連れて来るように指示を出した。


 その結果、3か月で一部の獣人を除き、ほとんどの獣人を開拓村へ連れてくることができた。


 これは獣人族以外の魔族が獣人に対してそこまで関心がなく、住処すら知らないという事実があったから叶った事だ。


 獣人族は魔法タイプではなく物理攻撃タイプが多い。そのため、食料を多く消費してしまうことから疎まれていたのだとか。


 だから獣人たちが開拓村へとやって来てガッケノが最初にやったのは、彼らに十分なご飯を食べさせることだった。


 魔族の国に残っている獣人たちは、自ら志願して向こうの動向を探ってくれている。獣人たちはもう完全に人間側についたと考えて良いだろう。何せ子供たちもうちの村で元気に過ごしているんだからな。


 一方、それ以外の俺たちはというと、魔導列車の製造と線路を辺境伯領中に張り巡らせていた。


 と言っても、魔導列車を走らせるためにはまず列車本体、砂利、線路、踏切の遮断機など、用意しなければならないものが多い。


 そのためまずはそれらを量産するための工場を建設するのと、大量の材料の調達が必要だった。これに1か月半を要し、その後ようやく製造に入る。


 工場ではロボットの代わりに魔導人形に各種必要な物を製造させ、手作業で起こる微妙な製造物の歪みをできるだけ減らした。


 出来上がった物を使用して、まずは村から辺境伯領の領都に向けて線路を敷いていく。


 今の俺の設計図スキルレベル90では指示出しできる人数が500人と少ないため、俺が指揮するのは魔導列車製造組とし、線路の方は一度だけ優秀な50人にスキルで指示出しをして行程を覚えてもらい、そこからはその50人に他の人員を教育する形で作業してもらうこととした。


 その結果、3か月経過時点での完成率は50パーセント程度に留まっている。


 魔導列車については俺が指揮したこともあってスキルの能力である超高速製造と疲労軽減が作用して完成しているが、いかんせん線路の方がまだ村から領都まで届いていない。


 ここから線路の方も俺が指揮したとして、それでどれだけ時間を短縮できるかは分からないが、正直現状では伯爵領の方まで手は回らないだろう。


「そう思ってたんだけどね……ヤバいわ、スキルレベル100」


 魔導列車製造によって設計図のスキルレベルが100に到達したんだけど、その能力が今までとは比較にならないぐらい凄かったんだよね。


 設計図スキルレベル100の能力の内容は次の通りだ

 

 ・指示出しできる人数が3000人に増加

 ・スキル進化可能

 ・製造必要素材半減

 ・製造スキップ(1回のみ、製造規模制限なし)


 まずスキル進化可能については当たり前なのでいいとして、指示出し人数3000人に増加と製造必要素材半減、そして何より製造スキップはヤバすぎる。


 指示出し人数はレベル90時点で500人なら次は1000人かなと思っていたら、その3倍になっているし、製造必要素材半減は材料の採取に必要な時間を半減できるということになるからぶっ壊れている。


 製造スキップは以前、レベル80のときに使ったが、そのときは製造できる規模に制限があった。それでも一発で高速道路を作ってしまったのを考えると、規模制限なしで使用できるというのは、想像を絶する凄さだ。


「ま、まあ、この製造スキップに関してはよく考えないといけないな。下手なところで使ってしまうと、後々後悔しそうだ」


 とりあえず一旦製造スキップのことは置いておくとして、他の二つ、指示出し人数3000人と製造必要素材半減は線路制作においてかなりの力を発揮してくれるだろう。


 俺はスキルレベルが100になったことと、製造スキップについてをガッケノに報告するために城へ向かった。


 ガッケノは案の定、スキル進化について許可はしてくれなかったが、製造スキップを使うタイミングについては俺に任せると言ってくれた。


 正直、製造スキップを使うタイミングで一々ガッケノに許可を取るのは面倒だったし、場合によっては間に合わないということも起こるかもしれないので助かった。


「それより、私としては製造スキップ以外の二つについての方が気になっている。この二つの能力で、今後の行程をどれぐらい短縮出来そうなのだ?」


「そうだな……元々、指示出し人数500人の状態で作業した場合、ギリギリ辺境伯領全土に魔導列車を走らせることができるようにはなっただろう。でも、500人のうち半分は武器工場の方で武器の製造をしてもらう必要もあったから、指示出ししていない人たちの働きによっては間に合わないということもあったかもな」


 レベル100で指示出し人数が1000人になると踏んでいたから、一応そこの問題は解決できるだろうとは思っていたが、今回の指示出し人数3000人と必要材料半減があればかなり余裕ができるのは間違いない。


「つまり、元々予定していた人数を差し引けば、かなり余裕で辺境伯領内のことについては完了できる。おそらく500人を武器製造に回して、2500人フルで働かせることができるなら、1か月かからないぐらいの日数で辺境伯領内は終わりになると思う」


「そうか、ならば伯爵領の方にも手を付けたとして、あちらはどれほど予定している物を造れる?」


「あっちはまずキマイラが邪魔して来るだろうしな。トンネル工事に線路も引くとなれば、魔導列車を伯爵領領都まで開通させるのが精いっぱいだと思う。距離が短いと言っても、兵士たちは防衛体制に入る期間が必要だしな」


「高速道路は無理か」


「無理だな。高速道路まで造るなら時間が足りない。線路か高速道路かどっちかならいけると思うけどな」


「わかった。私の方は父と伯爵様、それから獣人族の代表と騎士団長を交えて話し合いを行い、現在は防衛拠点の洗い出しを行っている。過去の戦争で使われていたものを補修するために人員をそちらに優先できずすまない」


「いや、そっちも重要だろ。むしろこっちに可能な限り人をよこしてくれてるんだから、感謝しかないって」


「そういってもらえると助かる。ではカイララ、引き続きよろしく頼む」


「ああ。そっちも頑張れよ」


 俺たちは着々と戦争の準備を続けている。


 戦争。俺には前世の記憶があるが、戦争は大昔のことであまり実感がわかない。


 だけど、確実に敵はやって来る。俺たちの土地を奪うために。


 その時になってなにも出来なかったとなれば、オババや父さん達を失ったと思ったあの日以上の憎悪が俺の中に生まれるだろう。


「あんなのはもうごめんだ」


 俺はこの世界に来て戦争がしたかったわけじゃない。

 出来れば平和に暮らしたいし、何もせずに生きていければ最高だと思っている。

 でも、それを状況が許してくれないというのなら、やるしかない。


「俺は戦う」


 魔導列車製造工場に戻って、俺はこの工場で働いてくれていた兵士たちを集めた。列車は既に上り下り合わせて5両編成で10本用意した。十分だ。


 俺は集めた兵士たちの中で製造のリーダーを担っていた10人に前に出てもらい、彼らに向かってこう言った。


「俺のスキル設計図のレベルが100になりました。これに伴い、指示出し人数が3000人に増加しましたので、これよりリーダーの皆さんに俺の権限を一部付与します。その後、リーダーの内5名の方々はこちらに残り、後の5名は線路の製造の方に向かってください。線路製造の方に向かう方々には2495名分の指示出し権限を与えますので、よろしくお願いします」


 俺の話を聞いて少しざわつく兵士たち。そんな中、リーダーの一人が手を挙げた。


「話は分かりましたが、この工場の残りのメンバーは何をするのでしょうか?」


「こちらに残るリーダー5名と490名は俺と共にこれより防衛のための武器、兵器製造を開始します」


「ほ、本当に戦争が始まるのですね。カイララ様はまだ10歳、いえもう11歳でしたか。11歳は働ける歳とはいえ、まだ子供と言っていい年齢です。その……大丈夫ですか?」


 そう聞いて来たのはリーダーの中で唯一の女性兵士だった。戦争が起きるということが確実となってきた今、俺のような子供が武器開発をしている現状を心配してくれているのだろう。


「ええ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。俺は村が好きですし、辺境伯領も大切に思っています。ですから最後までやれることはやり切りますよ。それに実際に敵の前に立つのは兵士である皆さんだ。俺は皆さんが無事に帰ってこられるように出来るだけのことをしたい」


 皆が俺に注目し、俺の言葉に耳を傾ける。いつの間にか俺以外の人の声は無くなっていた。


「でも、俺のスキルがいくら凄くても一人では何も守れません。ですから、これからあと1か月半、国民を守るため、皆さんの命を守るために俺に力を貸してください」


 そう言って俺はその場で兵士の皆に深々と頭を下げる。


 すると、段々と兵士達から歓声が上がっていった。


 皆俺がこれまで指示を出して色々と物を作らせてきた人たちだ。彼らだってこんな子供に指図されたくないと思ったことはあっただろう。


 普段の態度も、どちらかと言えば偉そうに見えていたかもしれない。


 だけど、その子供が今、国を守るため、自分たちを守るために力を貸してくれと頭を下げている。


 それが彼には嬉しかったのだろうと思う。


 これでいい。俺には指示は出せるが、彼らの気持ちまで指示で変える事はできない。


 これから俺たちが造るのは、人の命を救うためのものであり、敵の命を奪うものだ。場合によってはそれが人に向けられることだってあり得るかもしれない。


 そして、その最大限の兵器はきっとこれになるだろう。


 歓喜に沸く兵士たちを余所に、俺は一人ディスプレイ型設計図の画面を見ている。


 そこに映っているのは最早懐かしくもあるあの兵器。


 F-14戦闘機だった。

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