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第56話 準備期間

 獣人たちは自分たちの国が滅びかけているのだと語った。


 何故滅びかけているのか、その理由は閻魔イナゴというモンスターが原因らしい。


 つまり、蝗害こうがいというやつだ。


「俺たちの国、マカランは数年前までは、それは豊かな自然に囲まれた国だったんだ。作物も余るほどに収穫出来ていたし、人間との争いも小さな小競り合い程度ならあったけど、死人が出たりするようなことはなかった。だけど、数年前のある日、突然やつらが現れた。閻魔イナゴだ」


 閻魔イナゴというモンスターは、モンスターを操る力を持っている魔族にもどうしよう出来ない程に急速に増殖し、あっという間にマカランの作物を食い荒らした。


 そして、気が付くとどこかに消えて、翌年の収穫期になると再び姿を現したのだという。


「幸いなことにマカランの首都にはかなりの量の食料が備蓄されていた。そのおかげで数年は何とかなる。だけど、閻魔イナゴが発生するようになって途切れない今、俺たちの国は緩やかに滅ぼうとしているのと同じだった」


「だから私たち人間の土地を奪おうとしているのですか?」


「そうだ。俺たちの国は閻魔イナゴに襲われていても、山一つ挟んだお前たちの国には被害は無い。ならば奪ってしまおうという単純な考えさ」


「だけどそれなら人間側に協力要請したらいいじゃないか。食料を買わせてくれとか、支援してくれとか」


「そんなこと出来るわけがない。なにせ俺たち魔族と人間とは長いあいだ争って来たんだからな。50年前にも一度、人間と魔族とで大きな戦争があった。もちろんそれ以前にはもっと数多く争いが起こっている。俺たち魔族と人間とは決して相容れない。そう決まっている」


 50年前に魔族と人間との間で戦争があったのか。それが俺たちの国との戦争かどうかは分からないけど、その前にも何度も人間と戦争しているなら、人間全体を敵視しているのも納得だ。


 だけど、前回の戦争が50年前と言うし、最近は小さな小競り合いしかしていなかったのなら、世代的には今なら何とか人と魔族が手を取り合うこともできそうな気がするけどな。


 50年前の戦争のことを覚えている人間なんてそうそう残ってないだろうし。記録があっても実際に体験していなければ、よっぽど偏った教育をしない限り敵だという実感はわかないだろうし。


「これでハッキリしましたね。魔族は俺達に戦争を仕掛ける気だ」


「そうだな。それが分かれば私から辺境伯様に連絡を入れておこう。あとは魔族がいつごろ攻めてくる気なのかということだが、吐いてもらうぞ魔族ども」


「騎士長、そこまで威圧的にしなくても彼らは喋るさ」


 ガッケノは獣人たちの方を向いて不敵に笑いながらそう語りかける。その姿は流石土地を預かる立場という感じだ。ガッケノ自身に戦闘力があるわけじゃないが、立場と雰囲気で自然と気圧されるものがある。


 俺がそう思っているぐらいだから、直接目を向けられている獣人たちは相当なようで、相手は子供だというのに身をすくませている。


 だが、ガッケノの問いかけに応じて口を開いた獣人たちのリーダーの男も、一筋縄ではいかない。


「ひ、一つだけ条件がある。今回の任務で、俺たちは上位魔族の奴らに見捨てられた。魔族の中でも獣人の扱いは悪いほうだ。そ、そこでお前たちに頼みがある。俺たち獣人をお前たちの住処で受け入れてもらえないだろうか!」


「何を馬鹿なことを。ガッケノ様、このような戯言を聞く必要はありません。必要な事を喋らせる方法なら他にもあります。私にお任せください」


「ふむ……カイララはどう思う?」


「え、俺かよ。うーん、そうだなぁ……」


 ぶっちゃけ今の時点では、ダンゴと一緒に住んでたこともあるし、こいつらが見捨てられたことも知ってるから、獣人族に悪い気はしてないんだよな。 


 魔族に対しての恨みもオババたちが生きていたことで薄まっているし、これからの領地改造には力のある人員は多い方が良い。


「俺としては受けいれても良いと思うけど、獣人の数がどれぐらいいるかにもよるんじゃないか? それにどうやって魔族の国からこっちに来るのかって問題もあるし」


「カイララ、お前俺たちが生きていたから魔族を許そうとしてんじゃないか? 一応言っとくが、こいつらが魔導人形で村を襲わせたってことは忘れるなよ」


「分かってる。でも、結果的に負傷者は出たけど死人は一人も出なかった。それにこれからどれだけ時間があるかもわからないんだ、一人でも作業できる人数が欲しいんだよ」


「分かってるならいいけどよ。すみません、ガッケノ様。話の途中で割り込んでしまって」


「いや、構わない。しかしそうか、カイララは受け入れるか……魔女様はどうです?」


「アタシはこのバカ弟子が受け入れるってんなら受け入れりゃいいと思うよ。結局、魔族と戦争となりゃこいつの力は必要だ。それが魔族を受け入れたいってんなら、受けいれたらいい。ただし、アタシの村で勝手をするような奴は消し炭になってもらうことになるがね」


 きまってんなぁオババ。

 オババの言動に獣人たちはビビりまくってる。この様子だとオババの実力はよく分かってるみたいだな。


 騎士長も眉を寄せて睨むように獣人たちを見ているし、これで裏切れるなら大したもんだよこいつら。


「では決まりだな。君たちの提案を受け入れよう。では、早速だが魔族が攻めてくる時期を教えてもらえるか?」


「わ、分かった。最初に言っておく、俺たち獣人は立場が弱いからこれは正確な情報と言う訳じゃない。ただ、魔族の間で広まっている情報と盗み聞いた話からの推測になる。魔族が人間界へと戦争を仕掛ける時期は、これより約5か月後だ」


「5か月か、半年も無いとはな。カイララ、この期間でどれだけやれる?」


 5か月しかない。戦争するなら最低でも3つの防衛拠点と後方支援施設が必要だ。しかもそれは辺境伯領内の話で伯爵領はまた別だ。色々と準備する物のことを考えると、時間が足りなすぎる。

 

 とは言え、もううちの村に敵が来ていることを考えると、全面戦争までにあと5か月猶予があるだけましか。


 いま村で用意できる人員は辺境伯様から借りている1500人と村人が300人ぐらい。辺境伯様に更に人員を借りれれば、合計で3000人ぐらいは動かせるかもしれない。


 ただ、それでも普段の生活もあるし、別の任務で外れる兵士も出てくるだろう。だから常に動かせる人間は2000人から2500人と見ておいた方がいい。


 足りないな、どう考えても。


 俺のスキル『設計図』はあと少しでスキルレベル100に到達する。その際に取得できた能力によって、やれることが変わってきそうだ。指示出しできる人数は当然増えるとして、他にどんな能力が手に入るのか……あまりそれに期待しすぎるのも良くないか。


 あとは回収した魔導人形を修理してどこまで人員を増やせるか。そして、獣人がどれだけ移住できるかになってくる。


「俺はこれから大量の武器、兵器と高速道路以上の移動手段を造るつもりだ。さらに伯爵領の方で鉱物採掘もする予定だから、そうだな……最低でも辺境伯領全体に武器を行き渡らせるのと、移動手段の一つである魔導列車の製造はやれると思う。あとは俺のスキルレベル100と進化次第かな」


「そうか、スキル進化か。このタイミングで進化させるのは少し不安だな。もし全く違うスキルに変容してしまったら、そのスキルが設計図以上に使えるスキルになるかどうか……」


「ああ。でも、もしかしたら設計図はガッケノの領地経営スキルのように設計図2、設計図3と後ろに数字がついて行くタイプかもしれない。マリーちゃんを見ていて思った、進化したスキルというのは進化前とは明らかに性能が上がってるって。それこそ桁違いに。だったら試す価値はあるんじゃないか?」


「確かにカイララのスキルは特殊だ。可能性はあるかもしれない。進化させるかどうかは君に任せよう。だが、そのタイミングはこちらに任せてもらいたい」


 まあ、そりゃそうだよな。俺だってもうすぐ戦争が始まるっていうのに無理して進化させるのは怖い。


「ああ、ガッケノに任せるよ」


 こうして、俺たちは5か月後に起こるであろう魔族との戦争に向けて準備を開始することになった。


 俺はさっそく魔導人形のプログラム入力と再起動を開始、ガッケノは引き続き獣人たちとの話し合いを続ける。


 それぞれが、それぞれに出来ることを。懸命にやった。


 そうして3か月が過ぎたころ、俺はついにスキルレベル100に到達した。

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