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第51話 奇妙な街と古代兵器?

 発展した街がまるまる地下に存在していた。そこには、カイララが作り出した電波塔によく似た赤く巨大な鉄塔が建っており、車やバイクの姿もあった。


「何故ここに車やバイクがある? カイララが造ったもののはずだろう?」


「おそらく、カイララ以前の『設計図』スキルの持ち主が造ったのだろう。カイララが既にここを発見していて、ダンジョンで実験的に車やバイクを造っていたというとこはあり得ないからな」


「そうだろうか? あの子には不思議な雰囲気がある。予めこのダンジョンを発見していて、有効に使っていたという可能性はあるのではないか?」


「いや、それはないな。暇がない。第一、やつが行動する昼間はずっと誰かと一緒にいるんだ。あれだけ働いていて子供の体力で夜まで動けるわけがない。ダンペル、カイララが夜に家を抜け出すようなことが一度でもあったか?」


「ないな。そちらに住むようになってからは分からんが」


「うちでもそんなことはなかったよ。アタシは感が良いからね、抜け出せばすぐ分かる」


 カイララがこの場所に来ていないだろう事は、オババとダンペルの証言から明らかだ。だとすればこのビル群や車、バイク、その他の街のすべてが古代人が残したものということになる。


 オババは自分たちの先祖がこんな都市に暮らしていたというのに、今の自分たちの住む村の貧相具合に苦笑するしかなかった。


 時代が進むにつれて技術は進歩し、暮らしはどんどん豊かになっていく。それが当たり前だと思っていたのに、自分が生きた100年の中で最も進んだ都市はいにしえの古代人が造ったこの街だ。


 王都は魔法的な発展度合いで言えばこの星で一番だろう。だが、魔法を使える者ばかりではない事を考えると、目の前の街のようにただ技術だけで成っている都市の方が発展しているとオババにはそう思えた。


「それにしても、これだけ大きな街に人が一人もいないというのは不気味だね」


「車やバイクがさも今まで使われていたかのように道に放置されているのも奇妙でなりません。もしや敵が使って放置したのでしょうか?」


「分からないが、魔法の痕跡はない。ということはつまり、車やバイクの使い方を知っていたということだろう。ならば敵が使ったという可能性は低いとみていいだろう」


「とにかく、この広さです。敵がいるにしろどこかに隠れているでしょうし、あの車とバイクは有難く使わせてもらいましょう。私と小隊長はバイクを使用します。他の皆さんは車を使ってください」


 二階層に降りて街を見た衝撃が落ち着くと、オババはここまでの緊張感を思い出して敵の姿を探した。


 しかし、街の入り口にあたる階段付近には姿は見えず、それどころか誰かが居たという痕跡も見つからなかった。


 魔族というのは戦闘が得意なものが多い。そのため痕跡を消すぐらいは当たり前に出来ると考えて全員で街を見て周ることになる。


 騎士長が車を運転し、オババが助手席、後ろに軍医とダンペル。前方にバイクに乗った小隊長がつき、後方には同じくバイクに乗った小隊副長がつく。


「こんなに立派な街は初めて見ました。昔はここに何千人もの人が住んでいたのでしょうか……」


「どうだろうな。アタシには形だけ作っているだけのようにも見える。案外、自分たちが暮らしていた地上の街を残しておきたくてコピーしたなんてこともあるかもしれないよ」


 服屋、パン屋、飲食店、さらには理髪店や居酒屋、商業施設など、オババには知識のないものも多かったが、そのすべてに何処か固定化された真新しさを感じていた。


 もしこの街が古代人が住んでいた街のコピーだとしたら、そこには一体どのような意味があるのだろうか。


 今まで見つかったダンジョンはどれも何かしらの宝が隠されていた。


 例えばこの街を造った古代人が思い出を宝として考えていたとすれば、この街自体が彼らが後世まで残って欲しかったものということになる。


「古代人にもロマンチストがいたのかねぇ」


「ロマンチスト?」


「思い出の街を残しておきたいなんて、ロマンチスト以外おもいやしないだろう?」


「ああ、そういう……私はむしろこの街自体が迷宮に思えます。街は複雑に道が交差する意図しない人造の迷路です。車が入れる道もあれば、ああしてバイクしか入れない場合も、徒歩でしか入れない場合もある。それにビルという何層にもわたる巨大な建物が数えきれないほどあって、普通のダンジョンの迷宮よりよっぽど宝を隠しやすい」


「まあ、確かにな。もしこの街のどこかの建物に宝を隠しているとしたら、見つけるのには何十年もかかりそうだ」


 オババたちは途中、いくつかの建物に立ち寄って中を確認した。

 

 服屋には普通に服が並べてあり、パン屋には本物のパンが置かれていた。


 飲食店に入れば、今までそこに人がいたかのように湯気が立っているスープの器が目についた。


「やはり誰かいるのでは?」


「俺はもうむしろ誰かにいて欲しいよ」


 軍医とダンペルが二人でこのスープを見ながら顔を引きつらせている。

 

 オババも騎士も、この飲食店の店内の様子を見て周囲に人の気配がないか探ってみるが、やはり何も感じられなかった。


「王都のようにゴーレムが作っているのでは? 客もいないのに置かれているのはそうするように指示されていると考えれば納得できるし、ゴーレムだから人の気配が無いのも当然だ」


「だけどその場合、少なからずアタシはゴーレムの存在を感じるはずだよ。ゴーレムは魔力で動くからね、魔力に敏感な魔女なら分かるのさ」


「では、この食事は一体誰が……?」


 奇妙だ。


 急いで飲食店を後にして、魔族の捜索に戻る。


 車に乗り込んでしばらくは誰も何も言わなかったが、しばらくして騎士長が別の話題を出したことで飲食店での出来事は一旦忘れることができた。


「これだけ探しても奴らがいた痕跡は何も無かった」


「……無かったですね」


「ああ」


「そうだね」


「そこで考えたのだが、やはりあの赤い塔が気になる」


 街の中央に聳えるどの建物よりも背の高い赤い塔。


 形状からして恐らく役割は村や領都に造っている電波塔と同じだろうということが分かる。しかし、だとしたら何かしらの電波を発信しているということになるわけで。その発信している何かしらというのが気になってくる。


「ラジオがあれば何を発信しているか分かったんだがな」


「もしくは何も発信していないか」


 この車にはカーナビがついていた。しかし、そんなものを見たこともないうえに、GPSに該当する機能が地下空間ということで狂っているため、結局真っ暗な画面しか映っていなかったことで、車に乗っている誰もがラジオをつけることもテレビを見ることも出来なかった。


 一度車を停止してバイク組に目的地を赤い鉄塔にすることを説明して、オババたちは鉄塔へと向かう。


 そして、大通りを突き進み鉄塔に到着した時、その下にある物を見つけた。


「なんだこれは? これも車なのか?」


 それは長い砲身とキャタピラを携えた戦車。誰もそれが何かは知らなかったが、その異様な風体にただの車ではないということは気が付いていた。


 その戦車が二両、大きな扉を守護するように配置されている。


 この扉の先には一体何があるのか。そして、この扉に開いた大きな穴は何なのか。


 周囲を警戒しつつも慎重に中へと入っていくオババたち。


 下へ下へと続いて行く階段の先に見たのは。


 銃、戦車、戦艦、爆弾、そして……戦闘機。


 どれもこれも、地球に存在していた武器や兵器だった。

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