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第49話 開拓村への帰還

 ジャガ男爵領の領都は敵の手から解放された。


 というより、敵が勝手にいなくなったから放置されたという方が正しいかもしれない。


 俺たちは生命維持装置に入れられている人々を解放しながら、兵士数名に辺境伯様たちを呼んで来るように送り出し、その後は混乱する領民たちを領主のジャガ男爵と共に宥めた。


 そして数時間後、辺境伯様たちが男爵領領都へとたどり着いた頃には、1000人近い人たちがある程度回復し、すでに各々の家の状況確認に移っていた。


「そろそろ到着する頃だろう。私は東門へ辺境伯様を迎えに行ってくる。カイララ君はどうする?」


「俺はここに残ってます。どうせ迎えに行ったってまた戻って来ることになりますし、魔導人形をもう少し見ておきたいので」


「そうか。ではこの場は他の兵士たちに任せる。行きましょう男爵」


「あ、ああ、私の格好は大丈夫だろうか? 着替えをした方が良いのでは?」


「非常時ですから構いませんよ。それより待たせる方が問題です」


「そ、そうか。では行こう」


 そう言って護衛の兵士2人を含めた4人で東門へと向かって行った。

 残りの兵士は街の調査にも人員を割いている為20人ほどだ。この数じゃ街の住人全員を解放するには数日かかるな。まあ、後で辺境伯様たちが合流するからそうはならないけど。


 そんなことは置いておいて今は魔導人形だ。

 この魔導人形、ちょっといじれば魂を使うタイプからプログラムタイプに調整できそうなのだ。そうすればAIとはいかないまでも簡単な命令なら聞けるようになる。


 こいつらが使えるようになったら、村で工場を造ってこいつらに単純作業をやらせれば人件費がかなり浮く。やっぱり人件費ってバカにならないからな。工場は造りにくかったんだ。


「必要な素材が足りなくてコンピューターはまだ作れてないから、今回は魔法文字を刻む形式でやるしかない。あー、早く伯爵領に貰った山を調べたい! あそこに金とかレアメタルとかあったら最高なんだけどなぁ」


 金はこの世界でも貴重だ。庶民には絶対回ってこないし、手にするには自分で見つけるしかない。レアメタルに関しては、そもそもこの世界にそんな概念がなく、何に使うのかも分からない鉱石扱いだから、これも見つけるしかない。


 えぐいよなあ。


「レアメタルについての本とか作っても、そもそも地球で出版されてる本しか作れないからな。この世界で通用するかもわからないし、せめて代わりになるような素材でも見つかればいいんだけど」


 そんな事を考えているうちに、魔導人形のコアに魔法文字を書き終わった。


 これでまっすぐ歩くだけなら出来るはずだ。


「よーし、1号君。あそこにある目の前の木まで歩くんだ。GO!」


 そう合図するとぎこちなく歩き出す魔導人形。ちなみにこれは最初の女性とリンクしていた魔導人形だ。魂が抜けたからか女性的なフォルムではなくなっている。


 しばらく見守っていると、魔導人形は見事目的の木まで辿り着いて止まった。よしよし、これなら使えそうだぞ。


 我ながらよくやったな。魔法文字刻むのって結構繊細な作業だからね、コアに書き込むのは、大雑把な俺にはけっこうしんどかったよ。


 でもこうして実験が成功してみると、やっぱり達成感で脳汁が溢れ出して気持ちいい。もっと大型の魔導人形を自作して、デカいコアに書きこむようにすればこんなに気を遣わなくてよくなるし、村に帰ったらその辺りも研究してみよう。


 ……うん? 村? 何か村で何かあったような気がする。なんだったか、ぜんぜん思い出せない。


 でもまあ、忘れてるってことは大したことないんだろうな。


「それにしても、辺境伯様たち遅いな。もうとっくに城に来ててもいいはずなんだけど……」


「その件だが、どうも辺境伯様がこの街に入ろうとしないのだそうだ。何か嫌な予感がするとか」


「嫌な予感?」


 とにかく何がどうなっているのか分からないけど、俺も辺境伯様たちの所へ行った方がよさそうだ。


 魔導人形1号にその場に立っているように命令して、俺はゆっくりと東門へと向かう。門に到着すると、外の割と門から遠い場所にトラックとバイク、それから辺境伯様の車が見えた。


 なんだ? テントまで張ってあるな。もしかして本当に街の中に入らないつもりなのか?


 門で警備していた兵士の人に、辺境伯様たちの下へと送ってほしい旨を伝え、予備人員の人がバイクで俺を送ってくれる。


 そしてキャンプ地に着くと、俺は真っ先にマリーちゃんに抱きしめられた。


「痛たたたた! 力強いってマリーちゃん!?」


「カイララ大丈夫!? 怪我とかしてない?」


「こ、この通り怪我なんて1つも無いよ。健康そのもの、むしろ元気いっぱいさ!」


「良かったぁ」


「うごおおおおッ!? し、締まるぅ!」


 マリーちゃんの筋肉にやられる!?


 俺の意識が徐々に薄れて行こうとしてた時、後ろから救い主の声が聞こえて来た。


「マリーちゃん。すまないが、カイララ君と話したいことがあるから少し借り手も良いだろうか?」


「あ、は、伯爵様! ど、どうぞ!」


「ありがとう。カイララ君、あちらのテントで話そう。もちろん辺境伯様も一緒だ」


「あ、ありがとうございます。助かりました。行きましょう」


 まるで俺が来ることが分かっていたかのような反応だった。

 まあ、いま砂ぼこりあげて近づいて来るバイクがあれば俺が来たか、もしくは緊急の要件ぐらいしか無いから、予想はついてたってことかな。


 伯爵様に連れられて一番立派なテントに入ると、中には辺境伯様と男爵、それからカンナギさんが揃って神妙な顔をして座っていた。


 何かあったのだろうか?


「来たか。カイララ」


「来ました。それよりどうしたのですか、皆さん深刻そうな顔をして」


「ふむ、そうだな……では、今からカイララに一つ質問をする。それに答えてもらってから教えよう」


「はあ。何が何やらですが、わかりました」


 この感じ、カンナギさんと男爵様も同じように質問されたのかな? どうも嫌な感じがする。


 俺は何となく意識を引き締めて辺境伯様の質問に身構えた。


「では質問する。君の村、開拓村は今現在どのような状況にあると思う?」


「えっ……? どのようなもなにも、いつも通り皆それぞれ何事もなく働いてるんじゃないですかね?」


「違うな。君の村は今現在、黒装束の集団に襲われている」


「は? …………あっ!? そ、そうだ! 村が襲われて、それで助けに行かせてもらえなくて、何故か男爵領に来たんだ! な、なんでこんな大事なことを忘れて……」


「やはりか。カンナギと男爵も同じように何かしら記憶におかしな部分が見受けられたが、これで決まりだな。やはりあの街は全体に幻惑魔法が掛かっている。迂闊に中に入るのは危険だ」


 幻惑魔法? つまり、俺たちはどこかで認識を書き換えられてそれを当たり前に思い込んでいたと?


 そう言われてみれば、最初にカンナギさんが俺たちを待ちに招き入れた時から、当たり前に街中を動いていたカンナギさんの様子はどこかおかしかった気がする。


 それに、今のままであの街に敵はいないと思っていたのもヤバイ。


 もし敵が本当は街に潜んでいて、虎視眈々と俺たちを罠にはめる機会を狙っていたとしたら――と、鳥肌が。


 「はっ!? い、いやそんな事よりも今は村です! 村はどうなったんですか!?」


「それについては、さっきはああいったが情報がこちらに届いていなくてな、今現在どうなっているのかは分からないのだ。そこで、君たちはこれから村に帰って無線で状況を知らせてほしい」


「え、で、ですが良いのですか? 王様の預言は?」


「ああ。君は魔導人形が人の魂で動いているということを突き止め、眠った状態の住民たちへ魂を帰す方法も示した。ならば君の仕事はこれまでとしても問題ないだろう」


「ありがとうございます! それじゃあ早速失礼します!」


 そう言って俺はテントを飛び出した。


 そして、テントから俺を追って出て来たカンナギさんに捕まって、テントに戻された。


 何でだよ! と思ったのも束の間、魔導人形についてどうするのかという話が始まって、そりゃあ連れ戻されるわと納得。結局魔導人形については数体を俺が持ち帰り、その他のものは一旦すべてを辺境伯様が管理することになった。


 その後、俺はすぐにトラックに乗り込み、マリーちゃんとバネッサさんと一緒に山越えルートで辺境伯領へ。


 ただ、まともな道がなかったため整地しながら進むことになってしまい、結局村にたどり着いたのは翌朝のことだった。


 村にたどり着いて、俺が見たものは。


 壊滅して炎上する城……ではなく、燃え上がる魔導人形たちが無言で立ち尽くしている、まるで地獄のような光景だった。

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