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第48話 魔導人形の有効活用

 男爵領領都の人々が入れられていた装置は、設計図のスキルで調べたところ、生命維持装置だということが分かった。


 こんな大掛かりな装置を使用しているということは、この人たちは随分前から魔導人形に魂を移されていたか、もしくは今後それこそ数ヶ月から数年単位この状態で生かされ続けることになっていたかもしれない。


 生命維持装置の解除には意外と手間はかからなかった。装置に取り付けられている太いパイプ、これから木の魔石から取り出した生命エネルギーを注ぎ込み中の人々を生かしているということなので、そこに小さい穴を開けてコーラポーションを流し込むだけだ。


 コーラポーションは俺が作った特別性。飢餓状態を解消するために甘くしているという面もある。少し混ぜてやればあら不思議、生かさず殺さずで灰色の顔をしていた中の人はすぐに血色が良くなっていく。


 生命維持装置から出ても大丈夫なぐらいになったと判断したら、あとは装置の側面についている赤いボタンを押すだけ。そうすると正面のガラスっぽい部分が上に開き、満たされた液体と共に体が出てくる。


 近くに居た兵士が出てきた若い女性を抱き留め、少し離れた場所の地面に横たえた。


「それで、この女性を起こすには対応した魔導人形を壊せばいいんだったか?」


「そうなんですけど、この人がどの魔導人形と繋がっているかを調べるのが先ですね。適当に魔導人形を壊したら、この装置に入っている誰かが中で溺れて死ぬことになりますから」


「そうか。ではどうやってそれを見極める?」


「それは今から作ります。ちょうどここにガラスっぽいやつありますから、こいつを使って魔力線が見える眼鏡を作れば一発ですよ!」


 俺はカンナギさんにナイフを借りて、ガラスっぽいやつを切り取る。このナイフ、鋭すぎてこんなことも出来るんですよね。一体何でできているのやら。


 さて、眼鏡を作ろうと思ったのだけどフレームを作るのが面倒くさい。ということで、直接このレンズに魔法文字を刻みます。


 書きこむ文字は『魔線光ませんこう』。他意はない。


「よし、これでこのレンズを通せば魔力線が見えますよ。取り敢えずこの女の人の魔導人形を探してみましょう」


 レンズ越しに横たわっている女性を見れば、うっすらと体が青く光っているのが分かる。これが魔力でコーティングされた魂の糸だ。


 そして、こいつを辿ってずーっと歩いて行ってみれば、外の城門横に立っていたちょっと女性的なシルエットをした魔導人形に繋がっていた。


 やっぱり元の人間の性別に多少なりとも影響されてるらしいな。これから魂を抜いたらどうなるのか見ものだ。


「これか。では早速」


 そう言っていつの間にか抜いていた剣を振りかぶるカンナギさん。俺は慌ててカンナギさんの腰に抱き着いて止める。


「ま、待ってください! 壊さなくても魂取り出せますから! 壊したら魔導人形がもったいないですって!」


「魔導人形がもったいない? 何を言っているんだ君は。だが、壊さなくても魂を取り出せるのならそちらの方が良いか。どうやって魂を取り出すんだ?」


「このレンズで魔導人形を見てみてください。この頭の辺りに魔力線が繋がっているのが見えるでしょ? この部分に生活魔法の『吸引』を使ってみてください。っていっても『吸引』が分かりませんよね。ちょっとだけ手のひらに風が吸い寄せられるような感じがするあの使い道ないやつです」


「あれか。ではやってみるぞ……おおっ!? な、何かが出て来たぞ! にゅるっと!」


「それがたぶん魂です。それをぜんぶ魔導人形から抜き出したら、吸引を解除してみてください。そうすれば勝手に元の体に帰っていくと思いますから」


「わかった」


 レンズを見ながら魔導人形の頭に手を当てたカンナギさんが、徐々に徐々に後ろに後退していく。俺はレンズを持っていないので何も見えていないが、その手の先に魂が引っ付いているのだろう。


 そして、ある程度の場所まで後ずさったところで、カンナギさんの手が掴んでいたような状態からパーになり、飛んで行く何かを追うように体が向きを変えていく。


「魂戻って行きました?」


「ああ、後は彼女が目を覚ましたかどうかだな。行くぞ」


 城門から再び場内へ。


 兵士たちは女性を囲うように立っているだけで、他の人たちを装置から出していたりはしていなかった。一応コーラポーションは渡してたんだけどね。


「お前たち、どうした」


「副団長! 女性が目を覚ましました!」


「おお! そうか! やはり目を覚ましたか!」


 これで魔導人形を壊さずに簡単に魂を戻方法は確立された訳だ。


 その後、カンナギさんは男爵の魂を魔導人形から戻し、この街の惨状について説明を求めた。本来なら辺境伯領の騎士団副団長と言えど男爵という貴族を問い詰めるようなことはできないが、今は非常時だ。


 カンナギさんは目覚めたばかりで頭もハッキリしていない男爵を個室に入れ、数人で囲んだ状態で話を聞いていた。


 まるで尋問のように激詰めした結果、なんと男爵は、この事態に関与していなかったことが判明。しかも、この事態を起こした犯人についても何の情報も持っていなかった。


「そんなことあり得るんですかね? 領主なのに何も知らないなんて、もしかしてまだ何か隠しているんじゃないですか?」


「いや、それはないだろうな。私は職業柄それなりに尋問に慣れているが、あの様子は嘘を吐いている人間のそれではなかった」


「それじゃあ、こんな大掛かりなことをやった敵の正体についてはまた謎のままですか。なんかもどかしいですね」


 魔導人形については隣国であるヴァルカン帝国が発祥の物だ。だが、これまで辺境伯領や伯爵領に移住してきた人たちが話していた噂に出て来た黒装束の印象は、魔導人形とは合致しないし、どちらかと言えば魔族と言われた方がしっくりくる。街中にモンスターを放ったとかまんま魔族のやるような事だからな。


「チッ……気持ち悪いな」


 まだこの城を全部見て廻ったわけではないし、街全体なんて殆ど何も調べていないのと同じだ。それらを全てくまなく探せば何かしらの証拠は出てくるかもしれない。


 だけど、それで出て来た証拠が正しいものなのかどうかも俺たちには判断できないだろう。


 敵は帝国なのか、それとも魔族なのか。どうせなら敵がいてくれたら正体を暴くだけで済んだのに。


 ……あれ? 俺、今なんで敵がこの街にいないって確信してたんだ?


 そんな情報なかったよな。兵士の皆さんも隅々まで敵がいないか探し回ったわけじゃないし、いないと断定できるようなことは無いはずなのに。


 何かがおかしい。だけど、何がおかしいのか分からない。


「カイララ君、抜け殻になった魔導人形だけど、後で何かに使うのか? これから街の人々を起こそうと思っているんだ。邪魔だから要らないなら一旦街の外に捨てに行こうと思うんだが」


「えっ! ダメダメ! 駄目ですよ! あれは今後絶対に使う安い労働力になる予定なんですから! なるべく傷がついたりしないように慎重に扱って下さい!」


 あの魔導人形があれば、今まで働けなかった体に障害がある人だってまともに働けるようになるし、何よりAIをインストールすれば給料の要らない労働力になる。


 今後もっと辺境伯領を発展させていきたいし、伯爵領のキマイラも魔導人形で作業するなら危険もない。


 くふふ、これで次はもっと大規模な物を造れるぞ。


 そうだな、魔導列車なんていいかもしれないな!

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