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第45話 超電磁作戦

 魔導人形に襲われる貿易都市、街の外壁の上で軍と魔導人形の戦いを見守る中、辺境伯様の口から魔導人形についての衝撃の事実が発覚した。


 魔導人形は20年前の戦争で隣国である帝国が使っていた、死なない兵士だったのだ。


 俺は辺境伯領での平和な日々を思い返す。ただ物を作って生活を良くしていくだけの日々―― あの頃は良かった。


 ああ、早くあの日常に帰りたい。


 しかし、現実は残酷だ。俺はこの魔導人形と軍の戦いにおいて、犠牲者を出さず、かつ魔導人形を全て倒し切る作戦を考えなければならない。


 別に辺境伯様や伯爵様から作戦を考えるように言われたわけじゃない。俺が自分でそうすべきだと思ったから考えているだけだ。


「あのクソ人形ども、どうやったら逃がさずに壊せる……?」


 奴らはこの貿易都市の高い壁も登ってくる。それだけ機動性も高いし、そのまま捕縛は無理だろう。


 何か魔導人形に弱点とか無いの? 体は人形だから表面は固くて刃物もあんまり効かないし、魔法は効くみたいだけどスピードがあるから当てるのは難しそうだし。


 というか、あの動き、滑らか過ぎないか? こんなに軋んだ音を鳴らしてるくせに。どうなってんだ。


 うーん、あの魔導人形ってどんな素材でできてるんだろうか。 

 木か? それとも金属? 見た目はちょっとプラスチックっぽいんだけど、流石にそれはないよな。


 辺境伯様なら前にも見てるって話だし、何か知ってるかな?


「辺境伯様、戦争の頃に魔導人形を見たんですよね? 魔導人形って、どんな素材で作られてるかって分かりますか?」


「なぜそんな事を聞く? それがこの状況の打破に何か関係があるのか?」


「いや、それはまだ分からないです。でも何かヒントは見つかるかもしれません」


「ふむ……まあいいだろう。20年前の戦争で破壊された魔導人形は、全身をモンスターの硬質化した液体素材と魔石を合成錬金したもので作られていた。ただ関節だけは金属だったな」


「その金属ってどんな金属です? 鉄ですか?」


「鉄だ。純粋な鉄の球だった。何かでコーティングはされていたから、最初は分からなかったがな」


「へぇ……」


 鉄ねぇ。


 鉄だったら、やりようはありそうだな。


 俺の雷の魔法なら。


 


 解決策は浮かんだ。それは磁力を使うということだ。

 

 奴らの関節の構造が20年前と同じなら、強力な磁力で吸い寄せてしまえば一網打尽にできる。


 だが、強力な磁石など都合よくこの場にある訳がない。だから、まずはそれを発生させるためには装置を造る必要がある。


 言ってしまえば電磁石ってやつだ。必要なのは鉄芯と銅線、この2つならトラックで持ってきた材料の中にある。加工する必要はあるけど、どっちも鉱物だからマリーちゃんさえ居れば何とかなるはずだ。


「マリーちゃん、この鉄を1メートルぐらいの棒に加工してこっちの銅線を巻き付けて欲しいんだけど、マリーちゃんの土魔法でできる? 銅線は重ならないように、イメージはバネを縮めた時みたいな感じにしてほしい」


「うん。私の土魔法ならできると思う」


「よし。じゃあすぐ頼む。それができたら穴掘りもやってもらうから、そっちもよろしく!」


「穴掘り! 任せて!」


 これだよ。これがあるから土魔法はスゲーんだ。

 一般的に魔法使いは土魔法をあまり好まないらしい、それは他の魔法に比べて地味だから。でも俺は思うね、馬鹿じゃねえかって。どう考えても土魔法は最高だろうが。だって、土やら鉱物に関係していれば、こんなに簡単に加工できるんだからな。


 さて、マリーちゃんが準備している間、俺は兵士の方をどうにかしないとな。


「辺境伯様、ちょっと作戦を考えたんで兵士たちを下げてほしいんですけど、ここから指示って送れますか?」


「いや、できないな」


「そうですか。じゃあ直接指揮官の所に行くしかないですね」


「なに? 待て、もしやこの高さから飛び降りるつもりか?」


「そんな訳ないでしょ。飛び降りたら死にますよ。水を使って降ります。俺、水魔法は結構得意なので」


「しかし、下は戦場だぞ。迂闊に飛び込めば一瞬で死だ。わかっているのか?」


「もちろんです。大丈夫、心配しないでください。俺、攻撃魔法は苦手ですけど、逃げたり防いだりするのは得意なんですよ。では行ってきます!」


 俺は『ウォータースライダー』の魔法を使用して、一直線に指揮官のいる方へと降りて行く。指揮官は辺境伯領の騎士達のNo2、騎士団副団長のカンナギさんだ。


 長い銀髪を揺らめかせ、鋭い剣筋で敵を一刀両断する美女。そんな姿から『技巧剣の月姫』とかいうイタイ通り名をつけられている可哀そうな人。


 数回しか会ったことはないし、話したことは一度しかないけど、なんというかとても親近感の湧く人だった。


「カンナギさん!」


「カイララ君? 何でこんな所に来たんだ。ここは戦場だぞ」


「すみません、この状況を打開する作戦をお伝えしに来ました。俺しかこっちに来られる人間がいなかったので、すみません」


「そうか、ならば仕方がない。それで、辺境伯様の作戦を聞かせてくれるか?」


 あれ? しまったな、ちょっと言い方が悪くて勘違いさせてしまったみたいだ。

 辺境伯様の作戦じゃなくて、俺が考えた作戦なんだけど……まあ、俺が考えた作戦だなんて言ったら面倒なことになりそうだし、勘違いさせといてもいいか。


「はい。作戦は……」


 作戦はいたってシンプルだ。


 ・まずは足の速さに自信がある兵士、もしくは騎士が鎧を脱いだ状態で魔導人形たちを引きつける。


 ・次にマリーちゃんに掘ってもらった浅い円柱の穴に魔導人形たちを落とす。


 ・最後に穴の中央に設置しておいた電磁石に俺が電気を流して磁力を発生させる。


 これだけだ。


 ただこの時、魔導人形を確実に穴に落とすため奴らを引っ張って来た兵士達には一緒に穴に入ってもらう必要がある。


 加えて銅線はコーティングをしていない関係でショートしてしまう可能性があるので、その際は丸腰で魔導人形たちと対峙することになってしまう。

 

「なので、この作戦を実行する人は兵士、騎士の中でも実力のある人が望ましいです。また、電撃を使用するので剣の携帯はできません。穴の外に待機している人員に剣を持たせておくので、万が一の際にはそれらを投げてもらって使用してください」


「作戦は分かった。だが、今の話だと君も穴の中に一緒に入ることになるが、いいのか?」


「はい。覚悟は出来ています」


「ならば私から言う事は何もない。人選は私がしておくから君は準備を進めてくれ。共にこの作戦を成功させるぞ」





 ◆◇◆




 

 こうして、作戦は動き出した。


 負傷した兵士や魔法騎士を回収しつつ、所定の場所に向かって少しずつ魔導人形を誘導していく。


 あの後、俺は壁の上に戻ってマリーちゃんと電磁石の調整と実験を行い、動作を確認したところで穴を掘る場所に移動。マリーちゃんのスキルで簡単に深めのお椀のような穴を作ってもらうと、中央に電磁石を立て置き、少し離れた場所に電磁石から伸びた銅線の端を持った俺が待機する。


 しばらくして、穴の外から魔導人形が誘導されてきたと連絡が入った。


 そして、ついに魔導人形たちが穴の中に飛び込んで来た。


 最初に飛び込んできたのは10体。


 電磁石に電流を流す。すると、奴らの体は吸い寄せられるように電磁石に向かって行き、身動きひとつ取れなくなった。


「よし! 成功だ! 魔法騎士の皆さん、お願いします!」


 その合図で、魔法騎士達の風魔法『スパイラル・カッター』が魔導人形たちを襲う。


 風魔法を使用しているのは電磁石を破損させないため。風魔法は全魔法の中で最も繊細な魔法。特定の物を避けて目標物にのみ攻撃を命中させることは得意中の得意なのだ。


 オババは火力馬鹿だからできないだろうけど、魔法騎士の皆さんは違う。


 腕を壊され、足を壊され、ものの数秒で魔導人形たちは物言わぬガラクタとなり果てる。そのガラクタさえも風によって運ばれて今や屑の山の一部になった。


 魔導人形を誘導して来た精鋭たちが、穴から引き上げられて行く。


「さあ、次だ」


 そうして、20体目、30体目、順調に壊れて行く魔導人形たち。そして、ついに40体目のグループが塵となり、最後に残った5体が穴に飛び込んで来る。


 だが、物事はそううまくは運ばないものだ。


「まずい! ショートした!?」


 高熱により溶けた銅線、効力を失った電磁石。野放しになった魔導人形たちが、武器を持たない俺たちに容赦なく襲い掛かってくる。


 俺を守ろうと前に出る精鋭たち。


 俺はそんな彼らと魔導人形を見ながら、その場に立ち尽くしていた。

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