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第42話 神の預言者

 ファミレスで定食が回転していた。そんな衝撃の光景を無理やり飲み込み、焼き魚定食を手に取って席に着く。


 この定食が回っているという光景にツッコミを入れたところで、この世界じゃ回転寿司よりこっちの方が当たり前なのだ。驚いて大声を出そうものなら、店にいる人全員にイカレタ変な奴だと思われてしまうだろう。


 もしくはお上りさんに見られるか。


 それは何となく嫌だ。


 ドーム状のカバーに覆われた定食は、カバーに手をかけた瞬間、内部に蒸気が充満し、一瞬で温まったことがわかった。


 流石魔法、レンチンするより楽で便利だ。


 しかも、なんとカバーがついている間は腐らないように無菌状態に保たれているのだとか。こんなの地球じゃ再現できたとしても金が掛かり過ぎるだろう。少なくともファミレスで導入されるレベルじゃない。


 皆で席についてそれぞれに選んだ定食を食べる。焼き魚定食の魚は秋刀魚さんまっぽい見た目で味も似ていた。この魚が海で獲れるものなら、それを大量に輸入して安く提供しているということになる。


 それとも海の魚を上の2層のうちどっちかで養殖してたりするのだろうか? もしそうだとしたら、この王都はやろうと思えばこの街だけで完結させることができるのかもしれない。


「ふう、美味かった。マリーちゃんの焼き豚定食はどうだった?」


「すっごくおいしかった!」


「へえ、そんなにか。また来る機会があったら今度は焼き豚定食を食べてみよう」


 俺たちが食べ終わってゆっくりしていると、意外なことに子供の俺たちよりも食べるのが遅いのか、バネッサさんがまだフォークをカチャカチャと動かしていた。


 バネッサさんが食べているのは焼肉定食のようだ。


「バネッサさんが一番遅いなんて意外だなぁ」


 俺がそう言うと、横で食べていた兵士の一人、デカい髭オヤジことゴンザレスさんが小声で教えてくれる。


「騙されるな。ありゃ3つ目だぞ」


「えっ!?」


 よく見れば定食についていた札が3つバネッサさんの近くに置かれている。食べ終わった食器はトレイと一緒にテーブルに埋まっていって消えたので、俺たちの目の前にも札だけが残っている。


 そうか、バネッサさん定食3つ目だったのか。あの筋肉を維持するためにはそれだけ食べなきゃなんだな。


「あれ? でもゴンザレスさんは1つしか食べてないよね? 筋肉凄いのに」


「おめえ、あれが筋肉のために食ってると思ったのか? ちげーぞ、ただバネッサが大食いなだけだ」


「ああ、そうなのね…‥」


 ま、まあいいや。俺、いっぱい食べる女の人も好きだし。


「ところでゴンザレスさん。辺境伯様から何か連絡ありました?」


「いいや、今のところは来てねえな」


「そうですか。というか、どうやって連絡来るんですか? 向こうに行った兵士の人が探してるとかだったら、俺たちを見つけるの大変そうですけど」


「そんなことはしねえよ。ここは王都だぞ、ちょっとした連絡ぐらいぴゅーんと来るんだよ」


「……ぴゅーん、ですか」


「ぴゅーん、だ」


 飛んでくるってことかな? ドローンみたいなのが通達を持ってくるとか?


 ピコン! その時、ちょうど俺たちが座っていたテーブルで音が鳴ったかと思うと、目の前に青い半透明のパネルが表示された。


 そこには辺境伯様からのメッセージで、早急に王城に来ることと書かれていた。


「ほらな、ぴゅーんだっただろ?」


 どこが??



 

 とにかく、辺境伯様からの緊急の呼び出しだ。急いで城に向かわなくては。


 俺たちは急いで会計を済ませて、すぐに外に飛び出した。


 すると、辺境伯様が手配していたのか緊急用の空飛ぶ車が店の前に停まっており、俺たちは直通ルートで城まで送られることになった。


 城に到着したのはほんの数分後のことだ。あっという間に空中を移動した空飛ぶ車は、他の車を追い越し、まるでそこに何もないかのように障害物を避けて、かつ物凄いスピードで城まで送り届けてくれた。


 この車があればキマイラなんて簡単に振り切れただろう。


 城門の前には既に辺境伯様と伯爵様が騎士達と一緒に俺たちを待っていた。


「辺境伯様、緊急のお呼出ということで、やはり城で何かありましたか?」


「あったといえばあったが、城ではなく我が辺境伯領でだ」


「辺境伯領で? どういうことです?」


「開拓村の近くの森、あそこで我が兵士たちがダンジョンを探していたのは知っているな? そのダンジョンがついに見つかったのだ」


「ほ、本当ですか!? やっぱりダンジョンはあったんですね!」


「ああ。ただし、ここからが問題なのだが、そのダンジョンを見つけたのは我が兵士ではない。男爵領から来た黒装束の集団だったのだ」


「そ、その連中は!」


「まだ魔族かどうかは分からん。しかし、こちらと敵対するような行動をとっているのは間違いない。今、あの村の周辺では、我が兵士たちと黒装束たちが衝突している」


「なっ……!?」


 なんだと!? 村のすぐそばがまた戦場になってるってのか!?


 い、いや、落ち着け。村は大丈夫なはずだ。

 ゴブリンニートは最近スキル『ニート』から『自宅警備員』に進化していたし、村の範囲、テーマパークエリアまで含めてあいつの居住地判定に入っているから、その影響で敵が敷地内に入って来るのは簡単ではない。外からの魔法攻撃もほぼ100パーセント防げる。


 それに何と言ってもドラゴンのリクセンがいる。あいつがいれば大抵の敵は退けられるだろう。


「ふぅ……では、この緊急招集は急いで辺境伯領に戻るということなのですね?」


「いや、我々はこれより王都軍と共にジャガ男爵領へ向かう」


「な、何を言ってるんですか!? ご自分が治める辺境伯領の領民が危険にさらされているのですよ!? それなのに、なぜ領地に戻らず男爵領などに向かわれるのですか!?」


「それが王の命令だからだ」


「王の命令……? なぜです。王は辺境伯領で何が起こっているのか知らないわけではないのでしょう!?」


「もちろん存じておられる。そして、そのうえでこの命令を下された。ということは、そうすることが正しいということに他ならない。なぜなら、王のスキルは『神の予言者』、あの方の予言されたことは必ず現実となるのだから」


 か、神の預言者だって? 予言なんて馬鹿馬鹿しい! と、普段なら切って捨てるけど、スキルと言われると俺も無視できない。


 その神の預言者が男爵領に行けというなら、本当に行くべきなのだろう。だが、そう言われたとしても気持ちが向かない。


「なら、バネッサさん、もしくはどなたか兵士をお一人でもいい、その方と僕たちだけでも辺境伯領に帰ります」


「駄目だ。予言にはカイララも必ず同行するとあった。すまないが、君には絶対に一緒に来てもらわなければならん」


「……」


 クソッ! 何なんだよ予言って! ふざけんな!


「……仕方ありませんね。僕たちもついて行きます。ですが、本当に男爵領に行くことが正しいといえるのですか? 間違いなく?」


「男爵領に行くことが、今回の戦いを止める最善の道であり、そしていくつかの疑問を解くカギになると、私は確信している」


「わかりました。では、今すぐ出発するのですね?」


「ああ。皆にはすまないが、時間がない。仮眠は王都を出て男爵領に向かう途中の村でとることとする」


 こうして俺たちは寝る間もなく王都を出発した。王都を出る際に王都軍の兵士500名を伴って進んだため、魔導馬という馬の形をしたゴーレムに乗った兵士たちの移動速度が遅く、仮眠をとる予定の村に到着したのは深夜二時頃のことだった。

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