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第36話 王都への道

 噂を報告するために領主様を訪ねていくと、城はなにやら慌ただしかった。


 それでもガッケノの友人である俺の訪問ということで丁寧に案内してくれる。


 いつものメイドさんに連れて行ってもらって、謁見の間ではなく応接室に通されると、しばらくしてから領主様が入って来た。


「すまないな。少々建て込んでいてね」


「いえ、こちらこそいきなり来てしまってすみません。ちょっとお話したいことがありまして伺いました」


「話したい事か。ではまず、そちらの要件から伺おうか」


 俺は領主様に映画館で聞いた件について話した。

 あくまで噂に過ぎないが、たかが噂と言えど侮ってはいけない。侮った結果、後々ひどい目に遭うこともあり得る。


 領主様は俺の話を聞いて少しだけ眉間にしわを寄せたが、そこまで驚いている様子はなかった。むしろ、この件についてあらかじめ知っていたような雰囲気だった。


「もしかして、すでにご存じでしたか?」


「ああ、この件については街を巡回している何人かの兵士から聞いている。それに、王都からもな」


「王都から?」


 ということは国王様からということか。既に噂が国王様の耳にまで入っていたなら、俺がわざわざ伝えに来る必要はなかったかな。


 てか、それならこれってただの噂レベルの話じゃないんじゃないか? もしかして本当に魔族と男爵様が繋がってんじゃないだろうな?


 だとしたら隣にあるこの辺境伯領も無関係じゃすまない。どころか、むしろこっちに攻め込むために隣で準備しているなんて可能性まで出て来るぞ。


「詳しい話は王都に来て直接話すと言われたが、国王様はジャガ男爵が魔族と繋がっているかもしれないと考えているらしい」


「なるほど、では城のこの慌てようは突然の呼び出しによるものでしたか」


「そういうことだ。君の話は以上かな?」


「はい」


「では、次は私の頼みを聞いて欲しい。君には私と共に王都へ来てもらいたいのだ」


「へっ? ぼっ、僕がですか? ガッケノではなく?」


「そうだ。君に来て欲しいのだ」


 何で俺を一緒に連れて行こうとするんだ? ガッケノが行くなら勉強のために王都を見学させるためということでわかるが、俺が一緒に行ってもボケっと突っ立ってるだけで何の役にも立たないぞ。


 それに、俺は王都にさほど興味がないんだよなぁ。国の首都がどれだけ発展しているかとか気になる事もあるけど、正直今の領都は規模は負けても便利さでは絶対負けてないだろう。態々不便な王都に行くのはあんまり気が進まない。


「やはり君は王都に行くことに然程興味を示さなかったな。息子の言った通りだ」


「ガッケノがそう言ったんですか。まあ、正しいですが」


「ふふ、だから君を連れて行くことにしたのだ。君は王都を見ても憧れを抱くようなことはないだろうからな。むしろ燃えるタイプだろう」


「その言い方、まるで領都より王都の方が随分進んでいると言っているようですね。電気が普及してラジオも映画館もある領都よりも王都の方が上ですか?」


「それは自分の目で確かめるといい」


 俺がかなり手を加えてここまで発展させた領都が、王都に負けるだって? そんな馬鹿な。だとしたら、これまでの領都と王都の発展に差があり過ぎる。王都は富と技術を独占してやがったってことなのか?


 気にくわないな。


 俺が生まれた時から貧しい暮らしをしていたのは、王都の連中が技術を独占してやがったせいだってんなら。許せない。


 俺の楽々ハッピーライフを遠ざけやがって!


「それで、いつから行くんですか?」


「ふっ、この後すぐだ」


 そう言って領主様は笑った。こちらがどう反応するかなど最初から分かっていたらしい。


「では僕も準備を進めてきます。北門に行けばいいですか?」


「それで構わない。出来るだけ急いでくれ」


「わかりました」


 



 30分後、俺は素材をいっぱいに積み込んだトラックに乗って北門に来ていた。


 今回ばかりはダンゴを連れて行くことは出来ないので、小隊長のおっちゃんに預けて村に送ってもらうようにして、今一緒に居るのはマリーちゃんとバネッサさんだけだ。


 俺たちが到着した時、北門には既に多くの兵士が揃っていた。急ぎということもあって全員がバイクか車に乗っている。


「まだ領主様は来てないみたいだな」


「領主様はどんな車で来るのかな? それともバイク?」


「いや、バイクも特注のやつを送ってるけど、今回は流石に車だろう」


 そのまま兵士たちの後ろについて道の中央を開けて待っていると、しばらくして立派なリムジンがやって来た。


 これはバイクと同じく俺とガッケノで領主様に送った特注品だ。バイクはお兄さん2人と奥さんにも送ったが、このリムジンは1つだけ送った。


 聞いた話によると、時々兵士のバイクに囲まれて家族みんなで高速道路をドライブしているらしい。ドライブするならリムジンじゃなくて別の車が良かったかな?


「もう来ていたのか。早かったな」


「ええ、ちょっと素材を多く持ってきたかったので、これでも遅れたぐらいですよ」


「そうか。だが、そんなに持って来て何に使うのだ?」


「それは分かりません。でも、備えあれば憂いなしというでしょ? ……あれ? こっちじゃそう言う言葉はなかったですかね?」


「私は聞いたことがないな。だがニュアンスは伝わった。気に入ったよ、その言葉。さて、では全員揃ったところで王都へ向けて出発するとしようか」


 領主様を中心にバイクと軍用車が囲み、俺たちは最後尾を行く。


 いま走っているのは途中まで造っていた北の高速道路だ。

 高速道路計画は今はガッケノに任せっきりになっているし俺のスキルは使っていないので、これは技術を学んだ建設作業員たちが地道に造っている途中のものになる。


 それでも北の伯爵領までの道のりの半分は造られているので、かなり時間短縮になるだろう。


 高速道路が終わるところまで来たら、その後は下道を行くことになる。そこからは地面に石などが埋まっている事もあるので、俺たちが先頭に立って整地しながら進む予定だ。


 ただ、下道を行くとなるとモンスターや野盗が心配になってくる。

 それに、伯爵領に入ったら流石に勝手に道を整地する訳にはいかない。なにか策を考えておかないとな。




 ◆◇◆




 まいったな。


 俺たちは今、伯爵領の領主であるチリソー伯爵につかまっている。


 伯爵は辺境伯領の急速な発展を祝うのと同時に、辺境伯様にどうやってやったのかと問い詰めていた。


 俺たちの乗って来たバイクや車にも興味津々で、立場的に無下にも出来ないし無理に押し通るわけにもいかない。


「どうすんのかなぁ……うん?」


 辺境伯様と伯爵様を遠目に眺めていたら、急に2人がこっちを見た。


 なにか嫌な予感がする。


 うわ、こっちに来るよ。辺境伯様、伯爵領まで俺に発展させようだなんてしないでくれよ。俺は王都にもあんまり興味ないんだ。伯爵領なんてさらに興味ないんだからさ。


「カイララ君、少し良いかな」


「はい、かまいませんよ」


「こちらはチリソー伯爵、君に伯爵領発展に手を貸してもらいたいとおっしゃっている」


「初めまして。チリソー伯爵領の領主、チリソーだ。君が辺境伯領をあそこまで発展させたというのは本当なのかな? だとしたら是非我が領の発展に手を貸していただきたいのだが」


 うわー、いやだなぁ。もう帰りたいなぁ。


「初めまして。その通りですけど、辺境伯領もまだまだ発展の途中です。他に手を回す余裕を持てるようになるのはいつになるか……それでもよろしければ」


「そう突き放してやるな。伯爵はもし手伝ってもらえるなら、希少な鉱石が多く産出される鉱山の1つを貸し与えるとおっしゃっているのだぞ」


「えっ!? ほ、本当ですか!?」


「もちろんだ」


 ちょうど作りたい物に必要な材料が足りなかったんだ。

 あの禿山では取れない材料だったから、もしその山で採れるなら伯爵領の発展をちょっと手伝うぐらいはしてやっても良いかも。


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