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第35話 映画館と不穏な噂

 映画、それは人々の心を豊かにする映像の究極系。


 大画面と重厚なサウンド、視界に入るものすべてが物語となり、観客を別世界へと誘う。


 ……なんて、言ってみたりして。


 ということで、ラジオ局の次は映画館を造ろうと決めたので、現在領都の端に土地を買って映画館を建てている真っ最中だ。


 前にアニメの上映会をした時より広さは10倍以上になって、収容人数はなんと1100人!


 新しい映写機は電気のおかげで以前よりはっきりと映像を映し出せるし、照明や音量の調節もバッチリ行えるようになっている。


 さらに売店では新しく開発した伯爵領産のトウモロコシを使ったポップコーンと辺境伯領産の小麦で作ったチュロスも販売して、ドリンクにポーション・コーラまであれば、これで映画館としては完璧だ。


 従業員はまず村で教育した人間が行い、徐々に領都でも求人を出すことになっている。そのうち領都で雇った人だけで回せるようになると良いな。


 ラジオ局の完成から半年、ようやく映画館の完成も近い。


 俺が映画館の話を進め始めたのはおよそ4か月前、ラジオ局の件でマイクとスピーカーの性能を向上させたことで、映像の方も改善できないかと制作を続けていたものが、完成したことから始まった。


 当初の予定ではラジオ局の次はテレビ局を造ろうかと考えていたのだが、テレビはエンタメというより情報発信の側面が強い。そこで映像面において一番エンタメ性を発揮するものは何かと考えた時、頭に浮かんだのが映画だったわけだ。


 そこからはもう、怒涛の勢いで話が進んでいった。


 俺がガッケノに話を持って行き、そのあとすぐに領都に向かって土地を探していたぐらいだからな。


 なにせ映画館については領主様の許可を取る必要が無いからな。まあ、あとでガッケノから領主様に報告は上がるだろうけど。


 ただ問題だったのは建設に必要な人員の確保だった。俺の金もマイクとスピーカー改良時の技術チームを正式に雇うことになって余裕がなくなってきているし、村から人を連れて行くにも限度がある。


 テーマパークも宿泊施設も温泉もすべて稼働しているから従業員はかなりの人数が必要で、以前領都から連れて来た人たちも今や全員立派に働いている。つまり手が空いている人がほぼ存在していない状況だったのだ。


 そこでオババに何か解決策はないか相談したところ、マリーちゃんが土属性の魔法適性がある事が発覚。


 しかも、意外なことにマリーちゃんは魔法のセンスがあるらしく、俺よりもずっと早い時間で魔法を習得してのけた。


 土魔法の『ゴーレム』の魔法によって、コンクリート製の人形が数十体も使えるようになったことで、映画館の建設はかなり順調に進む。


 なにせゴーレムは自動で動いて自分の体を壁や床の一部にしてしまうことができたのだ。素材の状態を操れるほどのマリーちゃんの魔法センスには脱帽だった。


「マリーちゃんありがとう。マジで助かったわ」


「うん。私がんばった」


 映画館の外壁にはしっかりとキティーズ・ランドの宣伝広告を貼ったし、試験上映で流したキティーズのアニメもカラー化され、以前より見ごたえがあった。


 あとは流す映画をそろえて開館するだけだ。



 ◆◇◆


 

 失敗した!


 映画館を開館してしばらくの間は良かったのだが、カラーになったとはいえラインナップがキティーズのアニメだけだったからあっという間にお客さんに飽きられてしまったのだ。


 そのせいで映画館は最近連日ガラガラの状態。これは非常にまずい。


 早く改善しなくては。ここからはスピード勝負だ。


 まずアニメのバリエーションを増やす。そして次に、実写映画を撮影し大々的に宣伝する。実写映画なら新鮮だし、内容が多少テンプレ的でも問題ないだろう。


 急いで村に帰った俺は、アニメーション会社のビルに直行。

 前世の様々なアニメを参考にして、冒険ファンタジーものからロボットSF、恋愛、ホラー、それらのジャンルを小分けにして連続で放送する映画を作成。


 これによって観客を飽きさせないのと、上映後のアンケートで今後どういうアニメが見たいかを集計する。


 これらは『設計図』スキルレベル90の能力をフルに活用して、頑張った結果わずか半月で作り上げた。


 ちなみに『設計図』レベル90で獲得した能力は以下の通りだ。


 ・指示出しできる人数が500人に増加。

 ・製造スピード1.5倍

 ・疲労軽減


 疲労軽減効果と製造スピード1.5倍の効果でアニメ製作スタッフの皆さんはなんとか全員無事に映画製作を終えたが、ほとんどの人は疲労困憊で死んだように眠っている。今後は絶対にこんなことは無いようにしないといけない。


 次に実写映画の撮影だ。


 こちらに関しては先にジャンルごちゃまぜの短編アニメ映画が上映開始されたので、その上映期間中ぶん撮影時間に余裕がある。


 内容は、悪いドラゴンにさらわれたお姫様を、軍を率いた王子様が救い出すという、いかにもな王道ストーリーだ。


 王子様役は10歳になって身長が伸びてきた我らが村の代表、ガッケノ。

 そしてお姫様役は、なんと“わがまま”を発動したオババが務めることになった。


 10歳の王子様と見た目30歳のお姫様。オババがハーフエルフだから何とかギリギリで保っているが、正直ひどい絵面だよな。


 そんなこんなで、実写映画の方は2カ月で撮影終了。


 アニメ映画が落ち着きを取り戻したころに劇場での公開が始まり、これが領都で爆発的なヒットを記録した。


 これまで映像と言えばアニメでしかなかった中、全く新しい実写映画というものが登場したことが余程衝撃だったらしい。


 大量のお客さんが毎日客席を埋め尽くしているのは見ていてめちゃくちゃ気分が良かった。売り上げもかなりあったし、今後の資金もこれでしばらくは大丈夫そうだ。


 そんな風にホクホク顔で売店のチュロスを貪っていると、映画館を出て行くお客さんたちの何気ない会話が耳に入ってきた。


「いや~すごかったな! 俺はアニメより断然こっちだぜ!」


「俺も同感だ。アニメはちょっと子供っぽいって言うか、やっぱり真剣みがある方が大人としては面白いよな」


「それにしても映画の中で出てきた謎の黒服集団ってやつ。あれ、前に俺たちが住んでた男爵領で聞いたあの噂の黒ローブ集団みたいだったよな」


「ああ、あれか。確か黒いローブの集団が毎日のように男爵様のお屋敷に出入りしているとか、街中に急に現れてモンスターを逃がしたとか、確かそんなのだったよな?」


「そうそう。男爵様の客人だから街の連中は何も言えなかったらしいぞ、モンスターのせいで犠牲者も出たとかって話だったのによ」


「だけど俺たちが直接見たわけじゃないじゃないか。所詮はただの噂話だって」


「でも、俺もお前もあの噂が辺境伯領に移住した理由の1つではあるだろ?」


「まあなぁ。何か気味わるかったし」


 黒ローブの集団か。そんなのが街中に居たら明らかに怪しいけど、男爵様の客人と言われれば黙認せざるを得ないよな。隣は男爵領、つまり領主の客ってことだし。


 しかし、その集団どうも気になる。まさかとは思うが、魔族の集団だったりしないだろうな? 黒ローブで全身隠れてたなら外見では分からないだろうし、モンスターを街中で逃がしたというのも魔族っぽい。


 でもそうすると男爵様の客人って言うのは意味が分からないぞ。 

 なんで魔族が人間である男爵様の客人になれるんだよ。


「まあ、考え過ぎか……でも一応領主様に報告しとこ」

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